近況
2022年9月号

引越し先のごみ集積所について考えよう

萩原 葉子

引越し先にごみ集積所はありますか?

令和2年以降、コロナ禍でテレワークの普及など働き方が多様化し、在宅勤務に適した住まいへの引越しを検討された方もいらっしゃったかと思います。通常、住まいを決める際は、立地や周囲の環境、コスト、間取り、設備などいろいろなことを考えます。しかし、入居後にごみ(家庭系一般廃棄物)をどこに出したらよいかを事前に詳しく検討することはあまり多くないのではないでしょうか。国立環境研究所資源循環領域ではそれぞれの地域の特性に応じたごみ出しや集積所のあり方に関する研究が実施されています。今回は最近筆者が当事者として関わった戸建て分譲地のごみ集積所の設置についての体験を紹介し、設置までのプロセスを考えてみたいと思います。

ごみ集積所を設置してもいいですか?

アパート、マンションなどの集合住宅では住人専用のごみ集積所設置が一般的ですが、戸建て住宅の場合には近隣の既存の集積所を利用する場合や宅地開発業者が集積所を新設する場合など様々です。筆者は昨年家を新築することになったのですが、転入予定の分譲地にはごみ集積所の新設は計画されていませんでした。しかし、複数の戸建て住宅が次々と新築されているにもかかわらず近隣の既存の集積所のスペースが既に満杯に近かったため、何らかの対策が必要になっていることを後日知りました。そこで関係者(近隣の方々や自治会、自治体、住宅メーカー等)に相談し検討したうえで、この分譲地への転入世帯が共同で利用する小型のごみ集積所の一つを筆者の住宅の横にも新設することになりました。

設置の最初のプロセスとして、関係者にまず

  • 悪臭、飛散、害虫・カラスなどによる被害を防ぐために密閉性の高いタイプの集積所を選定すること
  • 維持管理を適切に行うことで周辺の環境に悪影響を及ぼさないようにすること
  • ごみ収集車の停車中であっても他の車両の通行は妨げられないこと

などを説明し、承諾をいただきました。

誰がどうやって使うの?

次に、今後利用する転入者に利用方法と維持管理について説明して協力をお願いする必要がありました。ただ、この分譲地では住宅が建築途中であったため、新規転入者にどのように連絡をとればよいかわかりませんでした。そのため建築予定地に頻繁に足を運び、現場を見に来ていた転入予定の家族に個別に挨拶・説明をし、最終的には利用予定の全世帯に賛同をいただくことができました。同時に、ごみ集積所の選定について最終検討も行い、容量、サイズ、材質、価格、掃除のしやすさ、色・デザインなどを考慮して筆者の場合はボックス型のものにしました。

ようやくごみ集積所の設置が完了

近隣住民、自治会、住宅メーカー、利用予定者の方々の賛同をいただいたところで、最後は自治体に対して「ごみ集積所設置に関する協議書」を提出しました。協議書には、関係者へのそれまでの説明の経緯と、理解が得られたことを記載し、設置場所への広域案内図、敷地内配置図、ごみ集積所の仕様を添付しました。自治体から協議完了の通知があった後、設置場所の工事が完了する頃に合わせて製品を注文しました。設置後にその旨を自治体に報告して収集開始日が決められ、筆者を含む利用者の転入とほぼ同時期にごみの回収が始まりました。

図1 ごみ集積所設置に関わった関係者 図1 ごみ集積所設置に関わった関係者

結論:早めに相談できていて良かった!

集積所設置までのプロセスを振り返ってみると、事前に関係者(図1)と協議することが重要で、非常に時間もかかる(このケースでは協議自体にかかった期間は約1ヶ月)ということを実感しました。このように、自治会のごみ集積所の収容スペースが不足していたり既存の集積所まで遠かったりする場合は、それぞれの自治体が定める条件(利用人数の下限、道路幅員、ごみ集積所のタイプ等)を満たせば複数の利用世帯が共同で新規に集積所を設置できる場合もありますので、まず自治会や自治体に相談してみてはいかがでしょうか。近々新しい住まいに移る計画がある方は、ごみ集積所のことも事前に確認されることをおすすめします。

*本記事の内容は筆者の見解であり、国立環境研究所もしくは資源循環領域の立場、意見を代表するものではありません。

<引用・参考資料>
  1. 鈴木薫 (2020) ごみの収集方式, 国環研ニュース2020年度 39巻4号
    https://www.nies.go.jp/kanko/news/39/39-4/39-4-04.html
  2. 鈴木薫 (2022) 増える自治会未加入者、ごみ集積所の管理はどうする? 環環2022年3月号
    https://www-cycle.nies.go.jp/magazine/mame/202203.html
<もっと専門的に知りたい人は>
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