循環・廃棄物の豆知識
2021年7月号

ごみを焼却して残った灰はどこへ行く?

飯野 成憲

私たちの毎日の生活から出るごみは一般廃棄物と呼ばれ、そのうち約80%が焼却炉で燃やされ、日本全国で年間約430万トンの灰が発生しています。ごみの中にわずかに含まれる鉛やカドミウムといった重金属が焼却処理によって灰に濃縮されるため、その有害性の高さから灰の大半が最終処分場に埋め立てられています。

日本では埋め立てるための場所が限られていることなどから、埋め立てる量の削減が求められています。では、一般廃棄物を埋め立てる量はどのくらいなのでしょうか。一般廃棄物を埋め立てる量は、灰の発生量に加えて粗大ごみ等を破砕・選別した後に残った廃棄物の量と、焼却や選別をすることなく直接埋め立てるごみの量を合わせると令和元年度では約380万トンです1)(図1)。平成10年度からの推移をご覧いただくと、特に粗大ごみ等を破砕・選別した後に残る廃棄物と直接埋め立てるごみの重量は年々減少していることが分かると思います。現在、埋め立てるごみで最も割合が多いのは焼却によって発生する灰で、全体の約80%を占めています。このため埋め立てる量を更に削減するには灰の資源化を進めることが効果的です。

灰を埋め立てる量と資源化する量を図21)に示します。平成10年度の時点ではほとんどが埋め立てられていましたが、焼却後に残る鉄やアルミといった金属類の回収は当時から行われてきました。一方で、鉛やカドミウム等といった重金属はほとんど資源化されていません。平成9年度には当時の厚生省から溶融処理を推進するように自治体向けに通知されています。溶融処理では焼却よりもより高温で処理して溶融スラグ(図3)を生成することで、灰の体積を半分程度に下げることができるため埋め立てるための場所を長く使用することにも役立ちます。また、焼却で発生した灰を埋め立てるのではなく、セメントの原料として利用する技術が実用化され、徐々に資源化する量が増えてきました。

こうした取組によって、灰の発生量に対する灰を資源化する量の割合は令和元年度に30%を超えました。今後も灰の資源化を進めていく必要がありますが、灰になる前のごみを減らす、ものを長く大切に使う、分別して資源にできるものは資源にするといった1人1人の取組が大切です。

図1 一般廃棄物を埋め立てるの最終処分量の推移 図1 一般廃棄物を埋め立てるの最終処分量の推移1)
図2 焼却残渣の最終処分量・資源化量の推移 図2 焼却残渣の最終処分量・資源化量の推移1)
図3 溶融スラグ 図3 溶融スラグ
<参考文献>
  • (1) 環境省:一般廃棄物処理実態調査
  • (2) 厚生省:ごみ処理の広域化計画について(1997)
  • (3) 肴倉宏史:都市ごみ焼却残渣の資源化の現状と課題,廃棄物資源循環学会誌,Vol. 29 (2018)
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