循環・廃棄物の豆知識
2022年1月号

取扱おうとする物を見極める(廃棄物の区分とその見分け方)

大久保 伸

廃棄物等の区分

循環資源や廃棄物の研究、議論を行う場合には、廃プラスチックを対象にしようとか、食品廃棄物を調べようかと、物を切り口に見ていくことがあると思います。この場合、取扱おうとしている物が法律などの制度的に何に該当するのかを、事前に明らかにしておくことが重要です。なぜなら、廃棄物の種類に応じて、廃棄物処理法に基づく取扱いのルールや、関係する主体(例えば行政や事業者、住民等)が異なるからです。これまでの環環の記事では、廃棄物の見分け方ついて、廃棄物に該当する物の見分け方を(コレは廃棄物?~廃棄物該当性の考え方~)で解説しました。さらに、廃棄物は、産業廃棄物と一般廃棄物に分かれますので、この記事では、その区分と見分け方について解説します。

産業廃棄物と一般廃棄物

廃棄物処理法では、まず、産業廃棄物以外の廃棄物を「一般廃棄物」と定義しています。次に、産業廃棄物を「事業活動に伴って生じた廃棄物のうち、燃え殻、汚泥、廃油、廃酸、廃アルカリ、廃プラスチック類その他政令で定める廃棄物」としています。そこで、政令(国会が制定した法律を実行するために内閣が決めたルール)で定める廃棄物も含め、表1に整理してみました。このように、1~19と産業廃棄物を処分するために処理したものを加えた20種類が産業廃棄物となります。ここで、表の縦にあらゆる事業活動と、特定の事業活動という2つの区分があります。あらゆる事業活動(工場や建設現場、飲食店など種類を問わないという意味です)に区分されている1~12までは、事業活動に伴って排出される廃棄物は、すべて産業廃棄物となります。一方で、13~19は、特定の事業活動に該当した場合のみ、産業廃棄物とされています。例えば、建設業の工事に伴って排出される紙くずは産業廃棄物になりますが、建設業であっても、事務所(オフィス)から出る紙くずは、直接工事とは関係ないので、一般廃棄物です(これを事業系一般廃棄物と言う場合もありますが、法律上の言葉ではなく、家庭から排出される一般廃棄物と区別するために広く使われているものです)。このように、事業活動に伴って排出される廃棄物であっても一般廃棄物になる場合もありますので、注意が必要です。

表1 産業廃棄物の種類
種類 具体例
あらゆる事業活動に伴うもの 1)燃え殻 石炭がら、焼却炉の残灰、炉清掃排出物、その他焼却残さ
2)汚泥 工場廃水等の処理後に残る泥状のものや各種製造業の製造工程において生ずる泥状のもので、製紙スラッジ、下水汚泥、カーバイトかす、ベントナイト汚泥、洗車場汚泥、建設汚泥など
3)廃油 グリス(潤滑油)、廃溶剤類など、鉱物性動植物性を問わず、すべての廃油
4)廃酸 廃写真定着液など、有機性無機性を問わず、すべての酸性廃液
5)廃アルカリ 廃写真現像液、廃金属石けん液など、有機性無機性を問わず、すべてのアルカリ性廃液
6)廃プラスチック類 廃ポリウレタン、廃スチロール、廃ベークランド、廃農業用フィルム、各種合成樹脂系包装材料のくずなど
7)ゴムくず 天然ゴムくず(合成ゴムは廃プラスッチク類)
8)金属くず 鉄くず、空かん、古鉄・スクラップなど
9)ガラス・コンクリート・陶磁器くず 板ガラスくず、アンプルロス、破損ガラス、製造工程等で生じるコンクリートブロックくず、土器くず、陶器くずなど
10)鉱さい 高炉、平炉、転炉、電気炉からの残さい(スラグ)、キューボラ溶鉱炉のノロ、ドロス・カラミ・スパイスなど
11)がれき類 工作物の新築、改築または除去により生じたコンクリート破片、アスファルト破片その他これらに類する不要物
12)ばいじん 大気汚染防止法に定めるばい煙発生施設、ダイオキシン類対策特別措置法に定める特定施設または産業廃棄物焼却施設において発生するばいじんであって集じん施設によって集められたもの
特定の事業活動に伴うもの 13)紙くず 建設業で工作物の新築、改築または除去により生じたもの、パルプ製造業、製紙業、紙加工品製造業、新聞業、出版業、製本業、印刷物加工業から生ずる紙くず
14)木くず 建設業(範囲は紙くずと同じ)、木材・木製品製造業(家具の製造業を含む)、パルプ製造業、輸入木材の卸売業および物品賃貸業から生ずる木材片、おがくず、バーク類等
貨物の流通のために使用したパレット等
15)繊維くず 建設業(範囲は紙くずと同じ)、衣服その他繊維製品製造業以外の繊維工業から生ずる木綿くず、羊毛くず等の天然繊維くず
16) 動植物性残さ 食料品、医薬品、香料製造業から生ずるあめかす、のりかす、醸造かす、発酵かす、魚および獣のあら等の固形状の不要物
17) 動物系固形不要物 と畜場において処分した牛、馬、豚など、食鳥処理場において処理した食鳥に係る固形状の不要物
18)動物のふん尿 畜産農業から排出される牛、馬、豚、めん羊、にわとり等のふん尿
19)動物の死体 畜産農業から排出される牛、馬、豚、めん羊、にわとり等の死体

そこで、廃棄物の区分とその見分け方の手順を図1に書いてみました。取扱おうとする物が決まったら、それが何に該当するかを一度考えてみてください。一般廃棄物と産業廃棄物の区分で異なる点を1つ紹介します。それは、処理責任のありかです。一般廃棄物の処理は、市町村に責任があり、ごみを出す人は、市町村が定める分別などのルールに従うことを求められます(ごみの排出者としての責任)。一方で、産業廃棄物は、廃棄物を排出する事業者が処理責任を負うため、自身がその処理を行うことが原則です。ここまでを踏まえて、レストランなど飲食店のごみをイメージして産業廃棄物か一般廃棄物かを考えてみましょう。①調理に用いた油(廃油)、②材料を包んでいたプラスチック容器(廃プラスチック類)、③調理くずや食べ残し(動植物性残さ)といった廃棄物が想像できますね。見分け方の手順に従って、①と②はずっと「はい」で下に進んでいけますので「産業廃棄物」に該当します。なので、①と②は飲食店自身で処理するか、飲食店の責任の下、産業廃棄物処理業者に委託して処理します。③はどうでしょうか。動植物性残さは最後の分岐で「いいえ」となります。また、業種を確認すると、飲食店は食料品、医薬品、香料製造業に該当しないので、「いいえ」となります。そのため、③の調理くずや食べ残しの廃棄物は、「一般廃棄物」になるのです。したがって、市町村のルールに従うことになりますが、研究所があるここ茨城県つくば市では、家庭ごみと一緒に集積所に出すことは禁止されていて、市の施設に自分で持ち込むか、市の許可を持つ業者に運搬をお願いすることになっています。なお、東京都千代田区のように、つくば市の2つの方法に加えて、1回のごみ量が50kgに満たない場合で有料ごみ処理券を貼れば、ごみ集積所に出せる自治体があります。このように、取扱おうとする物の区分で、対応が異なりますので、これから廃棄物に関して議論を進めていこうとする際は、廃棄物の種類は何か、ということを一度考えてみてください。ちなみに、災害廃棄物は、事業活動に伴って排出される廃棄物ではないので、一般廃棄物の取扱いになり、その処理(災害廃棄物の処理)は市町村が行います。

図1 廃棄物の区分とその見分け方の手順 図1 廃棄物の区分とその見分け方の手順

最後に余談ですが、1970年以前の廃棄物処理法が制定される前の、清掃法のなかには、一般廃棄物と産業廃棄物の区分はなく、汚物とされていました。元々は、公衆衛生を守る観点から、公共サービスとして市町村がごみを集めて処理していました。ある意味で、今の「一般廃棄物」しかなかったことになります。しかし、戦後の高度経済成長によって産業が発展し、様々な事業活動から生じる膨大な量の廃棄物が問題となり、一部には有害物を含むものもありました。そこで、公害対策の基本的な考え方である「汚染者負担の原則」に基づいて、事業者自身に排出者としての処理責任を負わせるようにするために、産業廃棄物の区分を新たに特出しして設けたのです。このように、廃棄物の区分は時代とともに変化してきました。これからの将来においても、社会の状況に応じて、廃棄物の取扱い方もまた変わっていくかもしれませんね。

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