循環・廃棄物の豆知識
2022年3月号

増える自治会未加入者、ごみ集積所の管理はどうする?

鈴木 薫

自治会未加入者はごみ集積所を使えない?

日本のほとんどの市町村は、ごみ集積所を通じたごみ収集(ステーション収集)を行っていて、そのごみ集積所を設置したり掃除したりするのは、利用者や建物の管理者です。自治会がある地域では、多くの場合、自治会がごみ集積所の設置・修理や、ごみ当番の調整、ごみ出しルールを守るように呼び掛けるなど、重要な役割を果たしています。しかし近年は、共働きで時間がとれない、高齢のため役割を果たせないなどの理由で、自治会に加入しない人(自治会未加入者)が増えていて、自治会未加入者が自治会からごみ集積所の利用を断られてトラブルになってしまうこともあります。

私たちがつくば市の自治会長を対象に行ったアンケート調査(2019年実施、回答者数402人)では、約7割の自治会が「自治会未加入者の利用を許可していない。」と回答しました。自治会はごみ集積所の管理に自治会員から集めたお金(自治会費)を使ったり、役員を置いたりしているので、自治会員以外には使わせられないという理由です。しかし、「自治会未加入者が勝手にごみ集積所を使って困っている。」いう声や、「ごみ当番の苦労を知らないので、ごみの分別も守らない人が多い。」といった声もあり、利用できない仕組みのなかで勝手に捨てる人やそれによって生じる問題もあることが分かりました。

一方、約3割の自治会は自治会未加入者も利用できるようにしていて、そのうち約半数では利用料金をとっていました。料金は1年間で500円から高いところは12,000円と幅広く、他の自治会員と負担の差がないよう、自治会費と同額にしているところもありました。ただし、「利用料金の徴収が大変。」、「ごみ当番の調整にも手間がかかるので結局免除している。」といった声もあり、受け入れる側の自治会にも様々な負担があることが分かりました。

地域コミュニティの状況に合わせた柔軟な検討を

私たちが2020年に全国の市町村を対象に行った調査では、70%の市町村で自治会未加入者がごみ集積所を使えないといったトラブルが起こっていました。ごみは全ての家庭から出されるものです。自治未加入者にとっては、自治会は任意団体であって、そこに入っていないという理由でごみ収集という重要な行政サービスが使えないのは受け入れにくいことでしょう。市町村側も、ごみの収集・処理に支障が出ないように配慮しなければなりません。自治会未加入者から市町村に相談があれば、対応に苦慮しつつ、清掃センターへのごみの持ち込みができることを案内したり、一定数以上の世帯が集まれば新しくごみ集積所が設置できることを案内したりしているようです。

今後、高齢化がすすみ、共働きや一人暮らし家庭が増えることにより、自治会活動に参加する体力や時間がない人も増えていくと予想されます。その一方で、地域コミュニティには、ごみ集積所のことに加え、災害への備えや災害時の安否確認など、暮らしや命にかかわる助け合いが期待されています。これらの課題について、事情の異なる世帯同士でどのように助け合っていくか、何ができて何ができないのか、地域コミュニティの状況に合わせた柔軟な検討が望まれます。

これまで私たちは、上記でお伝えしたようなごみ集積所管理の課題について調査研究を行ってきました。その成果に基づいて「高齢化・地域コミュニティの弱体化に対応するごみ集積所管理支援の事例集」を作成・公開しています。ごみ集積所管理を支援する自治体やごみ集積所管理にかかわる市民の皆さんに、参考にしていただければ幸いです。