特別企画
2022年1月号

日本が誇るべき一般廃棄物実態調査データを見てみよう
(1)閲覧システムで見る日本のごみ総排出量

川畑 隆常

ごみデータは日本の宝!?

皆さんの日々の生活の中で発生する身近なごみ。単身世帯なのか、子育て世帯なのか、高齢世帯なのかなどによってごみの質や量が変わってきます。またどの自治体(都道府県・市区町村)に住んでいるのかによっても、ごみの分別の仕方や種類が異なりますし、ごみを集めたあとにリサイクルするのか焼却するのか、あるいは埋め立てるのかといった処理・処分の仕方も、日本で暮らしている以上は大まかには同じ状況とはいえ、細部まで比べてみると様々です。

日本では、環境省(古くは旧厚生省から)がこうした生活に伴って家庭から排出されるごみに加えて事業活動に伴って排出されるごみ(産業廃棄物を除く)の排出から処理・処分まで、ごみの質と量、またそれに関わる人員やお金のことについて、1970年代初頭より毎年、各自治体の統計を取っており、日本全体と各自治体のごみの状況を把握できます。この統計情報のうち比較的最近(1998年度~)のものは環境省サイトから誰でも見ることができるようになっているのですが、なにせデータ量が膨大なので、ある部分を切り出して、表や図として表示したり、理解することは簡単ではないのです。

しかしながら、このような半世紀近くという長期間にわたり継続したごみに関する統計情報は、世界的に見ても大変貴重なものです。なぜ貴重なのでしょうか?実は、このように長期にわたって、多くの調査項目について地道に蓄積し続けた自治体別のデータは、世界を見渡しても日本のデータ以上のものはありません。ごみの3R(リデュース、リユース、リサイクル)や適正処理が益々大切になってくる状況の中、この統計情報データからは、日本のごみとは何か?排出や処理・処分がどうして様々なのか?といった過去から現在までを分析することができるだけでなく、これから将来どうしていけば良いのかを考え、行動するための課題や方向性、といったことが見えてきます。また、これから発展してくる他の国にとってより適切に取り組むための参考にもなります。いわば、日本のごみの将来を見通すうえでの有用な情報が隠された「宝の山」のようなものなのです。

膨大なごみデータの一面を見ることができる情報閲覧システム

国立環境研究所では、この日本の一般廃棄物に関する統計情報を、資源循環・廃棄物管理に関わる幅広い方々(行政官や環境NPOの方々、事業者、専門家など)にも見易く使いやすい形で提供することができるように、データベース化し、閲覧するシステム(一般廃棄物長期時系列データ閲覧システム、以下閲覧システム)を作成し、提供しています。

環境省の一般廃棄物処理実態調査では大きく分けて2つのデータを取り扱っています。ひとつはごみの「処理状況」、もうひとつはごみ処理の「施設」のデータです。国立環境研究所ではこの両データともにデータベースに収録し、まずは処理状況の一部を閲覧システムにて見られるようにしました。

収録してあるデータは膨大であり、古い年度データでは約800、新しいほうでは約4,200項目もあります。開発した閲覧システムで画期的なのは、ここまで触れてきたように「①古い年度のデータが使える」ことに加えて、「②各項目について長期間(最大約50年)の数値的傾向を見ることができる」、「③人口規模が同程度の自治体同士を比較することができる」ようにしたことです。

図1 一般廃棄物長期時系列データ閲覧システム 図1 一般廃棄物長期時系列データ閲覧システム

データ整備の裏側

閲覧システムの核となるのが何といっても収録データです。1971年度から1997年度までの古い年代は、電子情報での公表がされておらず、紙媒体の報告書等(「日本の廃棄物処理」「一般廃棄物統計」「一般廃棄物実態調査報告」等)としてのみ存在していたため、環境省および公益社団法人全国都市清掃会議の協力を得て、それらを電子化※しました。1998年度以降は既に数値として扱える電子化データが環境省より公表されているためそちらを用いています。

データ整備で一番苦労したことは、入手したデータを比較したり理解したりし易いように加工することでした。日本のごみ処理の仕方は、その時々の環境政策のみならず経済・社会・国際的な動向にも対応しつつ、この半世紀の間で様々に変化してきた部分があり(環環:令和の時代の廃棄物管理と資源循環)、ある年度の前後でデータの定義が変わってしまうことがあります。また市区町村の統廃合(平成の時代、1989~2019年に、特に2004~2006年をピークとする「平成の大合併」と言われる大掛かりな統廃合があり全国の市区町村数が約半数に減少しました)があった場合にも、その年度前後での値の意味が変わってしまいます。上記②のような、時系列の連続的な傾向を見るためには、長期間の比較軸を揃えるためのデータの加工・調整が必要となりましたが、ここに多くの時間が割かれました。このような背景を知っておくと、皆さんが閲覧システムを使用したり、元データを利用したり、といった際にも大変役立つものと思います。

※第1段階の電子化として実態調査報告そのものをpdf化してアーカイブとして残す(以降、アーカイブデータと呼ぶ)とともに、一部の主要項目についてはエクセル等の表計算ソフトでも扱えるように第2段階の電子化をしています。

閲覧システムの簡易版で実際にデータを見てみよう

環環の読者の皆さん向けに、閲覧システムの簡易版から閲覧できることの一例を取り上げてみたいと思います。日本全国のごみ総排出量の推移(図2)では、データが古くは1982年度から表示されており、2000年度の5,483万トンをピークとして、その後減少傾向となり、2016年度には4,317万トンにまで削減されたことが分かります。ごみ総排出量は実に様々な事象を反映した結果として見えるものではありますが、例えば日本の総人口は2000年度ではまだ増加傾向の最中であり、2008~2010年度頃をピークに減少傾向に転じたことから、単純に人口の増減に応じてごみ総排出量も変動した、という関係性ではなさそうです。1980年代後半~1990年代前半、日本のバブル期が終わってもしばらくは増え続けたものの、2000年は循環型社会形成推進基本法が制定、またその頃、関連する各種リサイクル法が次々と制定され、3Rの進展によって、ごみの排出量が減ったと考えることが出来ます。

図2 ごみ総排出量(トン) 図2 ごみ総排出量(トン)

(おまけ:閲覧システム簡易版を操作してデータを見てみよう)

ここまで読んでいただいた皆さん、実際に閲覧システムを操作してデータを表示してみませんか?手順は難しくありません。簡単なマニュアル通りにやってみてください。こんな表(図3)を簡単に表示することができます。

図3 一人一日当たりのごみ総排出量(g/人・日) 図3 一人一日当たりのごみ総排出量(g/人・日)

※環環3月号では、「日本が誇るべき一般廃棄物実態調査データを見てみよう(2)」として、図3やその他のごみ統計データについて解説しますので、お楽しみに。

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