国立環境研究所では毎年一般の方を対象とした研究所の公開を行っています。今年は4年ぶりに対面で2023年7月22日土曜日に開催しました。天候は暑くはありましたが猛暑日とはならず、事故や病気、けがもなく何とか無事に終了することができました。ご来場いただいた方々には厚く御礼申し上げます。わたしたち資源循環領域では「探検!ごみや資源の世界のナゾ解きに出かけよう!」をテーマに、身の回りに多くあるプラスチック、金属、電池などの「モノ」について楽しく学べるナゾ解きゲームを行いましたのでご紹介いたします。
わたしたちの身近にあるごみや資源について、よく見聞きはするけど意味はよく知らない…なんて言葉がたくさんあるのではないでしょうか。そこで、みなさんに知っていただきたい、覚えていただきたい言葉をナゾ解きで見つけ出すゲームを行いました。ナゾ解きは特別な知識を必要としない、だれでもアッというひらめきで解けて年代に関わらず楽しめるゲームです。問題は金属、プラスチック、電池に関するものでした。問題文は部屋のどこかに隠してあり、まずは来場者のみなさんに探してもらいます。問題はそれぞれのテーマに関わりの深い部屋にあり、部屋で行われている催事も参考にして問題を解いていただき、最後にそれらの答えから“真の答え“を導き出せたらゲーム終了です!お子さんから大人の方までみなさん楽しそうにナゾを解いていらっしゃいました。そして、“真の答え”を導き出すと、「あぁ、この知っている言葉にたどり着くのね」と感想を述べられていた方がいたのが印象に残っています。
ナゾ解きゲームの金属の問題を解くヒントとして、金属キャラクターを的にした水鉄砲での射的を行いました。各キャラクターには金属の種類ごとの地球環境への負担の尺度の1つであるTMR(Total Material Requirement:関与物質総量)※が割り当てられていて、その数値が小さいと倒れやすく、大きいと倒れにくい的にしましたが、なんと10種類の的を全部倒す方がいらっしゃいました(素晴らしい!)。また、親子で協力して的を倒すなど、みなさんそれぞれのスタイルで水鉄砲を楽しんでいらっしゃいました。最後に金属の特徴を解説したキャラクターカードをプレゼント。それぞれの金属について、採掘するときの環境への負担、具体的な用途を知ってもらえる機会となればうれしいです。
※資源を採掘するときに掘り起こされた土石の量や、利用した水の量などを含めた重さです。
みなさんもここ最近プラスチックが大きな環境問題になっていることをテレビやSNSなどで見聞きされているのではないでしょうか。ここでは、マイクロプラスチックとはどれぐらいの大きさなのか、またどんなことが良くないのかを、顕微鏡や動画、実物の展示やポスターを使って学んでいただきました。
実際に海岸で回収してきた海ごみの展示には、プラスチックを素材とした多種多様なごみがたくさん含まれていました。また、身近にあるクリアファイルに紫外線を長く浴びさせたものを手で触ると、簡単にパリパリと割れてしまいました。割れたクリアファイルの破片を顕微鏡で拡大して見ると、うろこ状に亀裂が入って劣化していることがハッキリわかりました。これと同じ現象が海ごみでも生じ、マイクロプラスチックの発生につながっていると考えると、ごみのポイ捨てや不適切な処分がいかに環境や生物に悪影響を与えてしまうのか、お分かりいただけるのではないかと思います。
また、夏休みの宿題にも役立つような参考資料をまとめた二次元バーコードには、親御さんと思われる大人の方に一生懸命スマホでアクセスしていただきました。ぜひご活用下さい。
持っている人も多いと思いますが、スマートフォンや携帯ゲーム機、ハンディ扇風機にはLIB(リチウムイオン電池:Lithium-Ion Battery、以下LIBとします)が使われています。さて、みなさんは不要になったLIBをどうやって捨てていますか?不燃ごみとして捨ててしまっている人は要注意です。ごみ処理施設で火災が発生し、多額の修繕費用がかかったり、ごみ収集が数カ月以上停止してしまっている事例があります。ではどうやって捨てたら良いのでしょうか?答えは「LIBが簡単に外せる場合は家電量販店などのJBRC回収ボックス(写真7の黄色い缶。モバイルバッテリーはそのままで大丈夫)で、外すのが難しい場合は製品ごと小型家電回収ボックス」が望ましいです。ご自宅のまわりの回収場所を探してみてください。わかりにくいといった課題もありますし、LIBが外れない製品の回収など自治体で新たな試みを始めたところもあります。
会場では、実際の家電を使ってどこにどんなLIBが使われているかご説明しましたが、ハンディ扇風機、ワイヤレスイヤホン、モバイルバッテリー、スティック型掃除機などの、身の回りでよく使用している家電にもLIBが使われていることを改めてご理解いただきました。
今回対面での開催は4年ぶりと久しぶりで、ご来場いただいた方々の楽しそうなお顔を直接拝見でき大変うれしく思いました。来年の開催がどのような形になるかはまだ分かりませんが、わたしたちの研究をもっと分かりやすくお伝えできるように頑張りますので、ぜひご来場ください。お待ちしています。
謝辞 今回のナゾ解きゲームの問題はジョーカープロジェクトさんにご協力をいただきました。ありがとうございました。
TMR(Total Material Requirement:関与物質総量)について詳しく知りたい方はこちら
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- 小型家電に入っている電池の回収・リサイクル
https://www-cycle.nies.go.jp/magazine/kisokouza/201603.html- 寺園淳:リチウムイオン電池の循環・廃棄過程における火災等の発生と課題, 廃棄物資源循環学会誌(2022), Vol.33, No.3, pp.214-228
https://www.jstage.jst.go.jp/article/mcwmr/33/3/33_214/_pdf/-char/ja