汚泥とは読んで字の如く一般的には廃棄物として取り扱われる泥状のものの総称ですが、今回は、排水処理に関わる汚泥の豆知識を紹介します。
生活排水や工場排水は水環境保全のために、きれいに処理されています。排水には様々な汚濁物質が含まれており、その代表的な指標として、BOD・T-N・T-Pがあります。BODは生物化学的酸素要求量(Biochemical Oxygen Demand)の略で、有機物の中でも微生物が処理することができる成分(炭素成分が主)の指標になります。T-N(全窒素(Total nitrogen)の略)とT-P(全リン(Total phosphorus)の略)はそれぞれ全ての窒素化合物とリン化合物の濃度を意味し、無機態と有機態の合計になります。排水は、もっとたくさんの水質項目のすべてを排水基準以下のレベルまで処理してから、放流されているわけです。
排水処理方法としては、活性汚泥法と呼ばれる生物処理が主体になっています。つまり、微生物が水をきれいにしてくれているのです。それでは、微生物が水をきれいにする仕組みを説明していきます。
皆さんも微生物も同じ生き物なので、しくみは似ています。まず、微生物は汚濁物質をごはんとして食べます。そして、汚濁物質を分解してエネルギーを作り(異化といいます)、そのエネルギーを消費して、活動し、成長していきます(同化といいます)。最後には、いらないものを排泄します。ごはんの種類は、炭素源(有機物・二酸化炭素など)、窒素源(アミノ酸・アンモニア・硝酸など)、その他元素(リン・微量金属)など、微生物によって異なります。いろんな微生物が共存している状態では、ある微生物が排泄したものを、ごはんにする微生物もいるので、汚濁物質は、最終的に、炭素源(CO2・CH4など)、窒素源(N2・N2Oなど)などの単純なガスに転換されます(これも、異化を意味します)。水中の汚濁物質がガスになるので、水がきれいになるのです。微生物が共存している塊を活性汚泥と呼び、最初に挙げた処理方法の名前になっているように、水をきれいにするには欠かせないアイテムです。ただ、忘れてはいけません!異化があれば、同化もあります。微生物の場合は、細胞分裂して、増殖することです。つまり、水中の汚濁物質は微生物自身にもなるのです。水をきれいにするほど、活性汚泥が増えるのですが、増えすぎてしまっては、適正に処理性能を維持することができなくなります。そこで、増えすぎた分を引き抜く必要が出てきます。この引き抜かれた不要な活性汚泥は余剰汚泥と呼ばれています。
この余剰汚泥が適正に廃棄物処理されなければ、また環境を汚染してしまうので、焼却してから埋立処分されているのが、現状です。しかし、この汚泥処理コストが事業経営の悪化を招いているので、問題となっています。この課題に対して、熱分解やメタン発酵などの汚泥利活用や汚泥減量化の開発や普及が進められています。