2011年3月の東京電力福島第一原子力発電所の事故によって大量の放射性物質が放出されました。同年3月下旬の放射性ヨウ素による飲料水の汚染、そして、放射性セシウムの5月中旬の下水汚泥への集積と6月下旬の一般廃棄物焼却灰の汚染の発覚は、福島県だけでなく、東日本の広い範囲が汚染されていたことを顕(あらわ)にしました。「廃棄物処理法1)」では、廃棄物の定義(第二条)に、「この法律において「廃棄物」とは...(放射性物質及びこれによつて汚染された物を除く。)をいう。」という一文があり、これまで放射性物質は管轄外でした。原子力発電所や病院等から発生する放射性廃棄物の処理については別途法律2), 3)がありましたが、今回のように、事故由来で放出された放射性物質に汚染された土壌や廃棄物を処理することをまったく考えていませんでした。この穴を埋めるために2011年8月に「放射性物質汚染対処特措法4)」(以下「特措法」)、同年12月に関連する政省令5),6)が制定されました。
特措法では、国が収集、運搬、保管および処分を行う事故由来の放射性物質に汚染された廃棄物を「特定廃棄物」とします。特定廃棄物には、廃棄物が特別な管理が必要な程度に汚染されているおそれがある地域(汚染廃棄物対策地域7))にある「対策地域内廃棄物」と、浄水場、下水処理場や廃棄物処理施設などを調査した結果、放射性セシウム134,及び137の放射能濃度が8,000Bq/kgを超えており、これを申請して大臣の指定を受けた「指定廃棄物」があります。これらの廃棄物に対しては特措法に基づいた特別な処理・処分を行います。
上記の特定廃棄物ではない廃棄物は従来の廃棄物処理法に基づいて処理されますが、そのうち、事故由来の放射性物質に汚染されている、またはそのおそれがある廃棄物で一定の要件に該当するものを「特定一般廃棄物・特定産業廃棄物」といいます。具体的には、特定の地域にある施設から発生する浄水汚泥、下水処理汚泥とそれを焼却したもの、廃棄物焼却施設からの焼却灰その他の燃え殻とばいじん(焼却飛灰)、特定の地域から発生する廃稲わらと廃堆肥、除染実施区域8)内から発生する除染廃棄物などが該当します(詳しくは、特措法施行規則6)の第28条と第30条を参照)。
これらの処理(収集運搬、中間処理、埋立処分)にあたっては、廃棄物処理法に基づく通常の処理基準や施設維持管理基準に加え、特措法による上乗せ基準が課せられます(なお、特定の地域における焼却等施設については、特定一般廃棄物・特定産業廃棄物を処理するかどうかに関係なく、上乗せの維持管理基準が適用されます)。
- 廃棄物の処理及び清掃に関する法律(昭和四十五年十二月二十五日法律第百三十七号)
- 核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律(昭和三十二年六月十日法律第百六十六号)
- 放射性同位元素等による放射線障害の防止に関する法律(昭和三十二年六月十日法律第百六十七号)
- 平成二十三年三月十一日に発生した東北地方太平洋沖地震に伴う原子力発電所の事故により放出された放射性物質による環境の汚染への対処に関する特別措置法(平成23年8月30日法律第110号)
- 平成二十三年三月十一日に発生した東北地方太平洋沖地震に伴う原子力発電所の事故により放出された放射性物質による環境の汚染への対処に関する特別措置法施行令(平成23年12月14日政令第394号)
- 平成二十三年三月十一日に発生した東北地方太平洋沖地震に伴う原子力発電所の事故により放出された放射性物質による環境の汚染への対処に関する特別措置法施行規則(平成23年12月14日環境省令第33号)
- 福島県内の警戒区域または計画的避難区域である、またはあった区域
- 環境省, 除染情報サイト, 汚染状況重点調査地域一覧