2010年2月22日号
活性汚泥法による水処理山本智子
私たちが汚した水は、主に活性汚泥法を用いた下水処理場や浄化槽で浄化された後、川や海に戻されます(2007年3月5日号「排水を毎日きれいにする小さな装置」参照)。 汚泥の正体は、細菌や原生動物、後生動物などの微生物の集合体です。活性汚泥法は、汚泥に空気を送り、微生物が排水中の有機物、窒素やリンなどの汚れを分解する力を促進する方法です。 微生物は、排水中の汚れをエサにどんどん増えます。つまり、汚れた水をきれいにすればするほど、汚泥が多量に発生するという嬉しくないおまけがついてきます。 日本では、生活排水などの浄化に伴って、1年間に4億4千万m3(東京ドーム300個以上)もの汚泥が下水処理場や浄化槽から発生しています。 発生した汚泥の大部分は、産業廃棄物(ゴミ)として脱水後に焼却処理され埋め立てられてきましたが、このままでは埋立地がなくなるという問題や、埋立地からの有害物質の浸出、処理に伴う飛灰やCO2の発生などの二次的な環境破壊が問題となっていました。 そこで、汚泥減量化と汚泥再資源化の動きが出てきました。汚泥減量化は、汚泥を生分解化(微生物が食べやすい形に)して再び微生物の栄養源とする方法で、例えば、化学的(オゾン酸化、酵素分解、薬剤処理)、物理的(機械的破砕、熱分解、電解酸化)手法や、汚泥の発生自体を抑制する生物的(自己酸化法、食物連鎖法)手法などがあります。 一方、再資源化された汚泥は、セメントの原料、軽量骨材、公園や歩道のブロックやレンガ、コンポスト(肥料)として身近な場所で利用されています。 最近では、エネルギーとして利用している国もあります。現在、日本では汚泥の約70%がリサイクルされています。ゴミでしかなかった汚泥の有効利用は、循環型社会形成に大きな役割を担っています。施設の規模や地域特性に応じて、汚泥発生量の削減と発生汚泥の再資源化の使い分けが重要です。 技術は発達していますが、最も大切なことは、やはり食べ残しや油、洗剤などの汚濁物を極力流さないよう心掛け、そもそも排水量を減らす環境意識だと思います。 |
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