循環・廃棄物の基礎講座
2015年5月号

将来の巨大災害に備えた災害廃棄物対策

平山 修久

1.はじめに

わが国における体系的な災害廃棄物対策は、20年前の1995年阪神・淡路大震災での経験に基づき、地震発生時のがれきをどのように処理するのか、という震災廃棄物対策指針が1998年に策定されたところから始まったといえます。その後、2004年の新潟・福島豪雨災害、福井豪雨災害、台風23号豊岡水害などの豪雨災害や台風災害を受けて、2005年に水害時の廃棄物に対する水害廃棄物対策指針が示されました。イラスト:もとこ、たまきそれ以降も、わが国では、地震や水害、さらには竜巻災害などの自然災害による被害が生じてきています。

そして、2011年の東日本大震災では、東日本の太平洋沿岸部を中心に、災害廃棄物約2千万トン、津波堆積物約1.1千万トンが発生し、環境省や県、市町村による懸命な対応が行われてきました。しかしながら、東日本大震災では、阪神・淡路大震災のような都市型災害とは異なり、津波による激甚な被害により、災害廃棄物に関するこれまでの経験や知識が必ずしも十分に活用することができたとはいえませんでした。国の中央防災会議では、南海トラフ巨大地震や首都直下地震の被害想定が示され、これらの将来の巨大災害への備えが喫緊の課題であると指摘されてきており、これら巨大災害に備えた災害廃棄物対策が重要であります。

2.巨大災害発生時の災害廃棄物対策

ここでは、東日本大震災以降のわが国における災害廃棄物対策を整理してみます。

(1)災害廃棄物対策指針

災害廃棄物対策における計画には「災害廃棄物処理計画(処理計画)」と「災害廃棄物処理実行計画(実行計画)」の2種類があります。「処理計画」は、平時からどのように備えるのか、また、発災後に後手にならないようにどのように対応するのかについて示されています。「実行計画」は、災害後に、「処理計画」に基づいて、災害や被害の状況に応じて、災害廃棄物を具体的にどのような手順で処理していくのかを示したものです。したがって、「処理計画」には、災害発生後に、誰がどのように「実行計画」を策定していくのか、その方法や手順を示しておくことが必要となります。

そこで、まず、東日本大震災の経験を踏まえ、都道府県及び市町村において、より実効性のある「処理計画」の策定に役立てることを目的に、災害廃棄物対策指針として対策の必要事項が整理されました。つまり、今後発生が予測される大規模災害における被害を抑止・軽減するための災害予防、発生した災害廃棄物の処理を適正かつ迅速に行うための応急対策、復旧・復興対策について示されています。また、東日本大震災における優良取組事例、いわゆるグッドプラクティスや、分別・処理に係る技術や実務マニュアルについても、技術資料・マニュアルとして整備されました。

(2)巨大災害発生時における災害廃棄物対策のグランドデザイン

平成25年に南海トラフ地震対策特別措置法、首都直下地震対策特別措置法及び国土強靭化基本法が成立しています。また、内閣官房に設置された国土強靭化推進本部が中心となって、国土強靭化政策大綱が公表され、災害廃棄物対策が巨大災害時の重要な施策として位置づけられました。そして、南海トラフ地震や首都直下地震による災害廃棄物の発生量の推計や既存の廃棄物処理施設における処理可能量の試算等の検討を踏まえて、巨大災害への対応を考慮した総合的な災害廃棄物対策の基本的な方向について、グランドデザインとしてとりまとめられました。ここでは、1)膨大な災害廃棄物の円滑な処理の確保、2)東日本大震災の教訓を踏まえた発災前の周到な事前準備と発災後の迅速な対応、3)衛生状態の悪化、環境汚染の最小化による国民の安全・健康の維持,4)強靭な廃棄物処理システムの確保と資源循環への貢献、5)大規模広域災害を念頭に置いたバックアップ機能の確保、という5つの事項について、巨大災害の発生に向けた対策のあるべき方向が示されました。

(3)災害廃棄物対策における行動指針

制度的な側面からの論点整理を踏まえた巨大災害時発生時の災害廃棄物処理の基本的考え方として、対策スキームが整理されてきています。巨大災害は、その被災地域が一都道府県内ではとどまらず、通常の災害とは異なる対応が必要となります。このため、国、都道府県、市町村、民間事業者等が平時から備えておくべき大規模災害特有の事項を整理し、一丸となって対策を行っていくことが重要となります。大規模災害対策についての発災前の備え、発災後の対策それぞれについて、1)各主体が備えるべき大規模災害特有の対策、2)都道府県境を超えた連携、わが国の7つの地域ブロックにおける行動指針策定のための指針、3)国が発災後に速やかに処理に関する指針、つまり、その災害をどのように乗り越えるのかというマスタープランを策定するための指針、4)通常規模の災害への備え、について整理されています。また、災害が発生した後に柔軟な対応を確保するための特例的な措置についても検討されてきています。

3.災害廃棄物の対応力の向上にむけて

東日本大震災以降、国を中心として、その経験と教訓に基づいたさまざまな取り組みがなされてきています。そして、今後の課題として、これらの取り組みに基づき、地域における災害廃棄物に対する対応力を平時から継続的に向上する取り組みが重要となってきます。つまり、災害が発生してからではなく、普段の演習や訓練の機会をとらえ、処理計画をためすことが必要です。そこでは、災害状況や被害状況を想定して、「処理計画」に基づき実際に「実行計画」を策定します。そして、その策定した「実行計画」を現場で実施します。その実施結果から、よかった点や改善点を明らかにし、処理計画と処理実行計画を評価、検証します。さらに、過去の災害事例や他の対応事例などを学習したうえで、災害廃棄物処理計画の見直し、改善をすることが必要であると考えています。このサイクルを支えるための人材育成の仕組みや実務者や専門家とのネットワークの構築も、将来の巨大災害に備えた災害廃棄物対策においては重要であるといえ、現在、国立環境研究所における災害環境マネジメント研究として国内外の行政機関や研究機関と共同して取り組んでいます。

図.災害廃棄物の対応力向上に向けた取り組みサイクル 図.災害廃棄物の対応力向上に向けた取り組みサイクル
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