2006年11月の創刊以来、18年弱の長きにわたりご愛読いただきました「資源循環領域オンラインマガジン 環環(以下「環環」)」は2024年3月の今号で終了となります。突然のお知らせで申し訳ありません。終了の理由を簡単に申しますと、国立環境研究所(以下「国環研」)の新しいウェブマガジンに統合されるためです。国環研では従来から所全体の公式ウェブサイトやウェブマガジンを開設していますが、それを構成する研究ユニットのいくつかは独自にウェブサイトやウェブマガジンを開設して研究や活動を紹介してきました。資源循環領域(以下「循環領域」)のウェブサイトや「環環」もその一例です。このような独自ウェブサイトやウェブマガジンは一定の評価を受けてきましたが、閲覧する一般の方々にとっては様々なウェブサイト等が乱立して分かりづらい状態でした。そこで、次年度(2024年度)より、国環研に関係する多くのウェブマガジンを「国環研View」という所全体のオウンドメディア※に統合することになりました。それに伴い、循環領域の独自ウェブマガジンとしての「環環」も終了し、研究や活動を紹介する記事は「国環研View」のフォーマットに従って作成・掲載することになります。このウェブマガジン統合は1年以上前から国環研内で検討してきたものですが、移行の内容や時期などの確定に時間を要したため、最終号でのお知らせとなりました。本記事では、まず「環環」のこれまでのあゆみを振り、つづいて「国環研View」への統合について簡単にご説明したいと思います。
「環環」は2006年11月5日に創刊されました。創刊の目的は、資源循環に関する研究ユニット(当時は「循環型社会・廃棄物研究センター」という名称でした)の活動を広く、分かり易く知ってもらうことでした。そのために当時のメンバーがニューズレターの発行を考え、さらに読み終わったあとに紙ごみにならないよう、ウェブマガジンを開設することになりました。分かり易さのレベルとしては高校生が理解できることを想定しました。また、ウェブマガジンの名前は、環境の「環」と循環の「環」を合わせて「環環」が選ばれました(創刊の詳しい経緯については、「環環(Kann Kann)創刊のご挨拶」をご参照下さい)。
「環環」の記事は循環領域のメンバーが執筆しています。研究者が自分の研究内容や関心事について記事を執筆し、その際、専門外の方にも分かり易く、そして面白く読んでいただくような表現を心がけています。
創刊以来今号に至るまで248号が刊行され、掲載された記事の総数は515本、記事の執筆者は総勢122名に上ります。また、読者の皆様からの「環環」へのアクセスは、集計を開始した2013年7月から2024年1月までで約777万回になります。「環環」の記事は、「けんきゅう(126本)」、「けんきゅうの現場から(83本)」、「活動レポート(53本)」、「近況(32本)」、「社会のうごき(16本)」、「循環・廃棄物の基礎講座(37本)」、「特別企画(14本)」、「当ててみよう(33本)」、「豆知識(121本)」というカテゴリーに分かれています。()内は記事の数です。各カテゴリーのコンセプトは、「研究」は研究トピックの紹介・解説、「けんきゅうの現場」はフィールド調査の様子や研究者の毎日などの紹介、「活動レポート」は海外滞在先からの報告や研究所の一般公開などの報告、「近況」は研究者からの季節の挨拶などの提供、「社会のうごき」は資源循環や廃棄物を巡る社会の動向、「循環・廃棄物の基礎講座」は循環・廃棄物に関する法律や社会のしくみなどの基本的な事柄の解説「特別企画」は同一テーマや関連する内容についての特集やシリーズもの、「当ててみよう」は循環・廃棄物に関するクイズ、そして「豆知識」はキーワードの解説や家庭で使える豆知識の紹介・解説、という設定です。
「環環」の記事では、資源・廃棄物・循環に関係する幅広い内容を扱っています。対象となった事柄を一部紹介すると、廃棄物の3R(リデュース、リユース、リサイクル)、廃棄物からのエネルギー回収・生産、廃水処理技術・装置、バイオマス、食品ロス・生ごみ、E-waste、災害廃棄物、ダイオキシン、アスベスト、難燃剤、放射性物質、プラスチック、金属、拡大生産者責任、サーキュラーエコノミー、脱炭素、地域循環共生圏、サプライチェーン、高齢化社会、コロナ禍、ごみの歴史、そして令和における廃棄物管理と資源循環等が挙げられます。
冒頭でお話ししましたように、国環研では、多くのウェブマガジンを1つのオウンドメディアに統合することになりました。従来から閲覧していただいている方はもちろんのこと、新しい閲覧者に続けて愛読していただくには、分かり易く整理されたウェブマガジンが必要となってきたためです。「国環研View」の目的は「従来からの国環研ファン以外に、環境問題に関心が薄い方々、環境問題に興味があるものの内容が難しいと感じておられる方々に対しても理解し易いウェブマガジンを目指す」となっています。「国環研View」は、「LITE」と「DEEP」の2段構成となる予定です。「LITE」のコンセプトは「環境問題が1分間で分かるメディア」です。「DEEP」のコンセプトは「じっくり理解するメディア」です。「LITE」はYouTubeで例えるとショート動画的な位置づけです。「LITE」で短く分かり易い内容を気軽に見ていただき、興味を持っていただければ「DEEP」でより詳しい内容を見ていただく、という流れを目指しています。
「国環研View」の「理解し易いウェブマガジン」とは正に「環環」が目指し、努力してきたところです。また、「LITE」と「DEEP」の関係も、「環環」の「豆知識」と「けんきゅう」等の関係と似ている所がありますね。我々循環領域のメンバーとしましては、「最新の研究内容や学術的知見を専門外の方にも分かり易く伝える」という「環環」の基本的なコンセプトを、新しく始まる「国環研View」においても出来る限り継承したいと考えております。
私は「環環」の最後の編集長を務めさせていただきました。至らない点ばかりでしたが、記事の執筆者の皆さん、原稿をチェックする査読者の皆さん、そして編集部の皆さんに支えていただき無事に最終号を迎えることができました。また、本記事の執筆にあたっては、過去の「環環」に関する様々なデータや「国環研View」の情報収集について循環領域の多田容子さんに多大なご協力をいただきました。この場を借りて感謝の意を表します。
最後に、読者の皆様におかれましては、長きにわたり「環環」をご愛読いただきましたことを、現役の循環領域のメンバーや過去に在籍した執筆者や関係者に代わって心より御礼申し上げます。また「国環研View」でお会いしましょう!