近況
2020年9月号

ある研究者のテレワークをお伝えします

石森 洋行

生活スタイルが変わりました

最近では、「コロナウイルス」という言葉を耳にしない日は、ほとんど無いといってよいでしょう。新聞、インターネット、テレビのニュースはその話題で持ちきりです。学校や職場など、私たちの生活にも大きな変化を与えていることと思います。人との接触を減らすことが求められる中で、普通に登校できなくなり、友達と会えず心理的距離が生まれてしまった人もいるかもしれません。一方で家にいる時間が久しぶりに長くなり、家庭内での会話が増えた人もいるのではないでしょうか。学校の時間割や職場の業務時間に縛られないことは、自由に勉強や仕事ができるというメリットもあります。

国立環境研究所でも新型コロナウィルス感染拡大防止のため、テレワークの導入が進み、新しい仕事のスタイルに移行しつつあります。研究者にとってこの変化がどのような影響をもたらしているのか、個人的に感じていることをお伝えします。

研究者の働き方と、変わりつつあること

これまでにも、フレックスタイム制や裁量労働制といった、研究者にとっては仕事の進め方を自分でコントロールしやすい制度がありました。今回さらにテレワークが導入されたことにより、本格的に自分の裁量で仕事をするようになりました。そうなると、自宅にも職場のような環境が必要になります。その点、研究者はもともと専門書籍、PC、プリンタ、通信環境などを自宅に備えていることが多く、比較的テレワークに馴染みやすい職種と感じます。しかし、自宅にいても仕事のことをずっと考えてしまうため、仕事と家庭の境がなくなってしまい、家族から反感を買うこともあります。私の場合は、コンピュータ計算をしていますが、なかでも夏場ではもともとの気温に加えてコンピュータからの放熱によって部屋が異常なほど暑くなるので、エアコンを動かすための電気代が予想以上にかかり、家族に叱られてしまいました。

現在、テレワークを行うための環境は着実に整いつつあります。従来から、遠隔より学内や社内のネットワークを利用したり、職場に置いてあるパソコンの機能を遠隔で使用するための様々なツールはありましたが、最近になってその利用頻度は急激に高まりました。なによりもZoomやTeamsといったWeb会議サービスが大いに活用されるようになり、直接現地に赴くことなくオンライン上で打合せを行ったり、セミナーや学会等の開催にまで利用されています。

移動に伴う様々な負担(例えば、体力的な負担もあるし、精神的な負担、または経済的な負担もあります)の減少、時間の有効活用などの恩恵を感じるテレワークですが、同時に、人と会うことの大切さを忘れてはいけないと感じています。研究(仕事)はチームで行うものです。自分を支えてくれている同僚や上司、部下達とは定期的に人と対面でコミュニケーションをとることがチームとしての絆を深め、独りでは実現できないような大きなプロジェクトを成功させることにつながるのだと思います。

テレワークの広がりは、社会における労働形態に変化をもたらしています。決められた労働時間をこなしたかに加えて、その時間内にどのような実績を得たのかが評価されていくのだろうと感じています。研究者はもともと実績主義です。テレワークによってさらに時間の自由度が増しました。自分の時間、家族との時間も大切にしながら、仕事仲間とのコミュニケーションをとり、社会のために価値のあるより良い研究成果が得られるように、わたし自身も試行錯誤を重ねています。

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