循環・廃棄物のけんきゅう
2016年6月号

情報源の信頼は何で決まるのか

佐野 和美

あなたも「情報源」になりうる

「情報源」といった場合、皆さんはどのようなものを想像しますか?すぐに思いつくのは、テレビ、ラジオ、新聞、書籍でしょうか? 他には、学校の先生、親兄弟などの「人」も情報源になります。従来、不特定多数の人に迅速に情報を伝えるのは、テレビやラジオ、新聞といった大手メディアの役割でした。事故などにより何らかのリスクが発生した場合、大手メディアは、取材や専門家による検証コメントなどを合わせて、ニュースとして報道します。そうすることにより、伝えられる情報が客観的で信頼できる物へと近づきます一方で、近年急速に普及したインターネットやSNS(Twitter、Facebook、LINEなど)により、個人が自由に意見を発信することがより簡単にできるようになりました。事故の目撃者が現場から写真付きのツイートをして、その写真や発言が大手メディアのニュースで取り上げられてさらに伝播していくようなことも、実際に起こっています。つまり、この文章を読んでいるあなたも、いつでも、大きな影響力を与える「情報源」になりうるのです。個人が気楽に発信できるのと同時に、検証されない情報が拡散することで、自分では意図しないままにデマを広めてしまったり、誤解を与えてしまったりする恐れもあります。このような状況で私たちは、多様化している情報源にどのような印象を抱き、何を基準に信頼しているのでしょうか?

情報源に抱いている印象とはどのようなものだろう

私たちは、さまざまな「情報源」から15項目を選び、、人々がどのような印象を抱いているのかを2013年から調査しています。具体的には、(1)テレビ、(2)ラジオ、(3)新聞、(4)本・雑誌、(5)インターネット(ホームページ、ブログなど)、(6)SNS(Twitter、Facebook、LINEなど)、(7)家族、(8)職場の人、(9)ママ友・パパ友、(10)近所の人、(11)友人、(12)学校や保育所の先生や職員、(13)大学や研究機関の専門家、(14)国の機関の刊行物など、(15)自治体の刊行物など、の15種類を対象としました。それぞれの情報源の印象を30の形容詞(公平である、正確であるなど)の選択肢の中から選択してもらい、SPSSという統計解析ソフトを用いて情報源と印象との関係を解析(コレスポンデンス分析)した結果が下の図です。■が情報源に対して感じる印象(形容詞)、▲が情報源を表しており、丸で囲んだ情報源同士は、近い関係にあります。

図図拡大
情報源と情報源に感じる印象との関係(出典:日本リスク研究学会第27回年次大会 講演論文集(2014))

これらを見ると、「人」の情報源((7)家族、(11)友人など)はみな印象が似ている関係にあり、多くの人が、「親しみやすさ」、「親身になってくれる」、「意見が同じ」や「癒される」などの印象を持っていることがわかります。調査では、(7)家族の信頼度が、すべての情報源の中で一番高いこともわかっており、情報源に対して日頃から抱いている親密さが信頼度を高めていることが推察されます。特に人同士の関係では、接触頻度が高く親密な関係であるほど、双方向のやり取り、双方向での信頼が生まれることも大きな特徴です。一方、「もの」媒体の情報源では、(1)テレビ、(2)ラジオ、(5)インターネット、(6)SNSが同じグループに属し、「速報性」、「更新性」、「話題性」、「便利」などのキーワードが集中しています。また、面白いことに、(6)SNSは、一年前の結果では、(5)インターネットに近い位置にあり「便利」というキーワードとの関係が強かったのに対し、今回の調査では、「オーダーメイド」や「わかりやすい」と近い位置へと大きく移動していました。SNSでは迅速な双方向のやり取りが可能であるため、テレビやラジオに比べて、「オーダーメイド」でより身近な情報を伝える存在になりつつあるのかもしれません。

では、私たちのような研究機関はどうでしょうか。(13)大学や研究機関の専門家は、(14)国の機関の刊行物と近い関係にあり、「専門性」のほか、「権威的」というキーワードが近くにあります。同じ公的機関でも(15)自治体の刊行物は、(3)新聞や(4)本・雑誌と同じグループに入っており、「公平」、「代表制」、「独自性」などのキーワードが見られます。そして、(15)自治体の刊行物の信頼度も、(7)家族に次いで高くなっていました。これらの結果から、情報は、受け手側のニーズに沿った情報であることとともに、公平であり代表性のある情報源から発信されるものが、より信頼される傾向にあると考えられます。公平で専門性の高い情報を発信していくことは、我々研究機関の責務ですが、一方的な発信ではなく、受け手側のニーズをくみ取った、より具体性・地域性の高い情報や、双方向のやり取りを重視していく手法も、今後はますます重視していかなければいけないのでしょう。

イラストそれとともに、科学的な検証がされない情報が気楽に発信されてしまう時代になっていることを踏まえて、非科学的な情報や曖昧な情報が不用意に拡散されてしまうことにも注意しなければいけません。発信側のリテラシーとともに、情報の受け手側にも、真偽を判断するリテラシーが求められているようです。

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