循環・廃棄物のけんきゅう
2012年6月号

食生活の変化と生ごみの発生量

朱 文率

食と環境

皆さん、今日は何を食べましたか。どこから来たものを食べましたか。誰が作ったものを食べましたか。自分に与えられた食べ物を残さず食べましたか。最初からきつい質問で失礼しましたが、これは環境において大切な質問です。

毎日あまり深く考えずに食べている私たちの食事が、実は地球に大きい影響を及ぼしています。肉や野菜等の種類、旬のものか温室で育てられたものか、地元で育てられたものか輸入して遠いところから飛行機や船でたくさんの石油を使って運ばれたものか、家で作られた料理なのか工場で作られた料理なのか、そして残さず食べたかあるいはたくさん残してしまったかということによって環境に及ぼす影響が変わります。

今回はこの中で一番私たちの生活と密接していて、環境負荷を減らすための行動として一番実践しやすいものである生ごみの話をしたいと思います。

生ごみの中身

図1 不可食部分と食品ロスの例 図1 不可食部分と食品ロスの例

生ごみをちゃんと見たことはありますか。その中には、食べられなくてどうしても捨てるしかない野菜の皮、果物の種、動物の骨などが入っています。その部分を"不可食部分"と言います。他には食べられるけど捨てられるものがあり、これを"食品ロス(Food Loss)"と言います。食品ロスには、皿に残されたものや冷蔵庫で消費期限を過ぎて食べられなくなったもの、そして消費期限まで売り場で販売されなかったものや流通段階で基準に合わなかったもの(曲がっていたり大きさが足りないきゅうりなどの規格外野菜)が含まれます(図1)。

生ごみは、発生すること自体に、すでにいろんな問題点を抱えています。食べられるものなのに捨てられている食品ロスについては、人間向けの食料として生産されて食卓まで運ばれるまでにすでにたくさんの資源やエネルギーが使われてしまったという非効率性、地球の一部では人々が飢餓で死んでいる状況の中で食べ物を無駄に捨てる非倫理性、そしてまた資源とエネルギーを投入してこれら生ごみを処理しなければならない反環境性が考えられます。

生ごみを減らすことだけでもこのような問題点を解決することができます。

食生活の変化と生ごみの発生量

イラスト:じゅん、しげる

そうすると、私たちは自分の努力でどのくらい生ごみを減らすことができるのか、自分の見えないところではどのぐらい生ごみが発生しているかが疑問になるでしょう。そのためには、現状の私たちの食生活を省みることが必要です。

食生活の形態は、家で材料から料理して食事をする「内食」、スーパーやコンビニで出来合いのものを買って家で食べる「中食」、そしてレストランなどでの「外食」に分けることができます。 近年は、独身や高齢者の世帯の増加、伝統的に料理を担当していた女性の社会進出、そして便利な生活の追求とともに料理しなくなった人が増えたことによって、内食から徐々に中食と外食に向かっています。このような食生活の変化によって生ごみの量、種類、経路が変わります。

内食より食の外部化と言われる中食と外食の場合、肉・海産物・脂肪の摂取が多くなります。中食の場合は調理を終えたものを売っているので家庭で発生する生ごみの量は少なくなりますが、その分は工場で発生します。そして、調理した食品は品質の低下速度が速くて消費期限が短いし、需要も天気によって変動しやすいために予測が難しくて売れなく捨てる分が多くなります。外食の場合は一般的に家庭で食べる時より食品ロス率が高くなります。これは残しても自分が処分する必要もないしどんな費用も発生しないという状況であるからだと思います(因みに韓国では、残したら費用を支払う食堂もあります)。さらに、食の外部化によって家庭で発生する生ごみの量が増えるという研究もあります。それは食べようと思って買っておいたものが、中食や外食によって食べる機会を逸し、結局捨てられることになるためです。

現代社会はシステムが複雑なので自分から見えている部分だけでは誤判する可能性が高いと言えます(例えば、中食や外食では不可食部分や食品ロスが少ないと感じてしまうこと)。これを避けるために、もっと全体を捉えられるシステム分析が必要です。物質フロー分析という手法は、ある対象範囲を設定して、その内の一つ一つのプロセスに入ってくるものと出て行くものの量を分析して全体的な流れを把握する方法で、この手法によって対象範囲内での物質の流れを定量的に見ることができます。

図2 内食・中食・外食の変化による生ごみの発生量 図2 内食・中食・外食の変化による生ごみの発生量 参考1)

図2は物質フロー分析を元に得られた結果で、内食・中食・外食によって不可食部分と食品ロスがどこでどのぐらい発生しているかを現わしています。グラフを説明すると、最初のH、I、Rはそれぞれ家庭、食品産業、飲食店を示し、次に書いてあるFLと IEはそれぞれ食品ロスと不可食部分を示しています。最後の数値は人が一般的な食事として1kgを摂取する時 に発生するごみの量(g)を示しています。

食品ロス発生量だけ見ると中食が一番低いです。しかし、不可食部分も含めて全体の生ごみの量を見ると内食が一番低いことが分かります。外食は食品ロスも不可食部分も一番多く発生しています。私たちが食べる時に見えるごみの量以外にも、その一食のために見えない生ごみが発生していることを認識することが重要です。

発生したものをどうやって処理するのかによっても環境負荷が変わりますが、先ずはその発生量を減らすことが環境負荷を減らすために重要です。できるだけ内食に向かうこと、そして、必要な分だけ買うこと、外食する場合はできるだけ自分が食べられる分を考えて注文して食べ残しがないようにすることが大切です。

人間は食べることによって他の生き物からエネルギーを得る動物です。この生態系の一部分である私たちは、できるだけ環境に負荷が掛からないような社会システムをつくる努力をすべきでしょう。生ごみを減らして経済的・倫理的で 環境にも優しい生活を過ごしましょう。

参考資料
  1. Munsol Ju (2011) An Impact Assessment of Food Waste Generation Influenced by Food Consumption Styles in Japan, Doctorial Thesis, Tokyo Institute of Technology
  2. FOOD AND AGRICULTURE ORGANIZATION OF THE UNITED NATIONS (2011) GLOBAL FOOD LOSSES AND FOOD WASTE
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