第4期中期計画期間(2016年度~2020年度)の成果例

PJ1
研究プロジェクト1: 消費者基準による資源利用ネットワークの持続可能性評価とその強化戦略の研究

目的

日本の資源利用ネットワークを形成する国際サプライチェーンモデルを開発し、資源消費・環境影響に加え、社会影響としての資源調達に係るリスク要因の抽出・計測に取り組みます。また、将来シナリオに応じた各影響を同定することにより、特に温暖化対策と調和した資源管理方策の検討に取り組みます。

背景

持続可能な資源利用を達成する上では、グローバルな資源管理と物質循環の制御が不可欠です。国際的な合意である持続可能な開発目標(SDGs)、そして、パリ協定の実現のためには、更なる追加的資源の利用やそれに起因する諸問題を未然に把握し、対策を講じることが求められます。本プロジェクトでは、過去から現在、さらには未来までのグローバルな資源ネットワークを分析し、考慮すべき重要な問題を特定し、持続可能な資源管理方策の立案に向けた科学的支援に取り組みました(図1)。

PJ1の概要
図1 PJ1の概要

主な成果(2016年度~2020年度)

第4期では、過去から将来にかけての資源利用ネットワークの解析の進展により、持続可能性への警鐘とともに、持続可能性の強化、資源循環戦略と脱炭素戦略の調和、さらには、対策としての物質と価値の好循環の形成等を支援するための各種成果(表1)を得ました。資源需要の将来展望の可視化を含む持続可能性の評価は、脱物質化目標等の科学的目標の設定、および、それを支援するための将来推計モデルの重要性を示しました。これにより、2℃目標と整合的な2100年までの物質利用可能量を算出可能なモデルを開発と脱物質化目標の設定に着手することが可能となりました。また、一連の解析を通じて、サプライチェーンに内在する問題の未然把握とその対策立案を支援する各種のツール群を開発・発信するとともに、持続可能性の強化戦略に関する意見交換・情報交換の場の形成に努めました。

表1 開発に取り組んだ分析手法とその適用事例
Note. TMR: Total Material Requirement, DMI: Direct Material Input, GLIO: Global ling Input-Output model, MF: Material Flow, 3EID: Embodied Energy and Emission Intensity Data for Japan Using Input-Output Tables, WIO-MFA: Waste Input-Output Material Flow Analysis model, MaTrace: Tracing the Fate of Materials over Time and Across Products in Open-Loop Recycling.

以下に、PJ1の主な研究成果をご紹介します。

(1) グローバルな経済活動が誘発する総採掘活動量の定量化(Nakajima K. et al. 2019)

ポイント:鉄・銅・ニッケルを事例として、世界全体の経済活動が誘発する総採掘活動量と共に日本の経済活動による寄与を同定する分析モデルを開発しました。これにより世界全体での経済活動により顕著に採掘活動量が増大していることを定量化しました。

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今日の世界経済では、各国は直接的な資源利用に加えて、その経済活動をサポートする間接的な資源利用を伴っており、国際サプライチェーンを通じて消費地から遠く離れた他の国・地域における環境負荷を誘発しています。このような状況下では、グローバル規模での生産から消費に至る連関、そしてその正負の影響を体系的にとらえて検討することが重要です。本研究では、関与物質総量(Total material requirement、 TMR)を指標として、鉄、銅、ニッケルの採掘によって誘発された総採掘活動量の世界的な分布量を推計し、多地域産業連関分析モデルの1つであるGLIO(Global link input-output)モデルに基づいて、国民経済とグローバルな影響との関連を示しました。鉄、銅、ニッケルの採掘によって誘発された総採掘活動量は、1990年から2013年にかけて2倍以上になりました。鉄、銅、ニッケルの採掘によって誘発された世界の総採掘活動量は2005年から2011年にかけて急速に増加しましたが、同じ期間の日本の最終需要によって誘発された抽出量は、同程度(鉄)またはわずかに減少しました(銅とニッケル)。採掘活動、起因する鉱山廃棄物は、地球環境に深刻な被害をもたらす可能性があります。また、鉱滓ダムの決壊などの災害を引き起こす可能性があります。これらの問題を解決・緩和し、持続可能な資源利用を確立するための計画策定が緊要であるといえます。

図2 世界全体および日本の経済活動が誘発する鉄・銅・ニッケルの総採掘活動量の概略
(Nakajima et al. 2019)

(2) 金属資源の採掘と輸入量の変化と持続可能な開発目標との関係(Nansai K. et al. 2019)

ポイント:ベースメタルや希少金属の一国への投入量(採掘と輸入)の増加が、社会的、経済的、環境的な目標を含む持続可能な開発目標(SDGs)の進捗を示す指標の悪化と関連していることが示唆されました。

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本研究では、2004年から2013年までの10年間の国別パネルデータを用いて、一国経済の金属投入量と国連の持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals: SDGs)の進捗の確認指標の悪化との関連性を調査しました。具体的には、11種類の金属投入量の変化と、96の指標値の増減を分析し、その結果、金属採掘を行う国では、金属採掘の増大と複数の指標の悪化が確認されました。この現象は採掘量の多いベースメタルにも、採掘量は少ないが燃料電池や電気自動車などの新エネルギー技術に使用される希少金属にも同様に見られました。これは、脱炭素社会への移行に向けた世界規模で希少金属の採掘が拡大し続けることを予想すれば、国際社会は希少金属採掘国のSDGsの進展に注視する必要があることを示唆しています。金属使用国は責任ある調達を強化し、採掘国の持続可能性を支援する必要があるといえます。

図3 金属資源の投入量の増加と関連して、値が悪化したSDGs計測指標の数:(a)金属採掘と輸入との比較、(b)ベースメタルと希少金属との比較、(c)金属間の比較(Nansai K. et al. 2019)

(3) クリティカルメタルの長期需給に関する研究論文レビュー(Watari T. et al. 2020a)

ポイント:本研究は48鉱種のクリティカルメタルを対象に、その将来需給に関する全88本の既存研究を包括的にレビューした論文となります。これにより、既存研究の課題および将来展望が明らかとなりました。

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本研究は48鉱種のクリティカルメタルを対象に、その将来需給に関する全88本の既存研究を包括的にレビューした論文であり、既存研究の課題および将来展望が明らかとなりました。本研究で整理した全546のデータポイントを含む2050年までの将来需要データベースは、現在多くの学術論文や政策レポートで参照されています。

図4 各循環経済戦略を調査した論文数を示すホイールダイアグラム(Watari T. et al. 2020a)

(4) ベースメタルの長期需給および環境影響に関する研究論文レビュー(Watari T. et al. 2021)

ポイント:本研究はベースメタルの将来需給およびそれに付随する環境影響に関する全70本の既存研究を包括的にレビューすることで、その課題および将来展望を明らかにしました。

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本研究はベースメタルの将来需給に関する全70本の既存研究を包括的にレビューすることで、その課題および将来展望を明らかにすると共に、2100年までの将来需要データベースを構築し、金属需要量の長期将来展望の可視化しました。

図5 2030年、2050年、2100年までの主要金属の世界規模での需要見通しまとめ
(Watari T. et al. 2021)

(5) 炭素制約下における世界規模での金属フロー・ストックの将来像(Watari T. et al. 2020b)

ポイント:本研究は、数理計画法を応用した新規の動学マテリアルフロー解析モデルを開発し、炭素制約が世界規模での金属フロー・ストックに与える影響の解析を実施しました。

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本研究では、数理計画法を応用した新規の動学マテリアルフロー解析モデルを開発し、炭素制約が世界規模での金属フロー・ストックに与える影響の解析を試みました。解析の結果、炭素制約下では天然鉱石からの1次生産が2030年までにピークアウトし、スクラップからの2次生産が2050年までに一次生産を凌駕することが明らかとなりました。これにより世界的な金属ストック形成が制約され、21世紀の財とサービス需要は現在の高所得国のレベル(国民一人あたり約12 t)よりも低い、国民一人あたり約7 tの金属ストックで賄う必要性が示唆されました。

図6 気候目標と整合的な炭素制約下における一人当たり金属ストック量の推移
(Watari T. et al. 2020b)

(6) 経済大国が国際貿易を通じて誘引するPM2.5によるアジアへの不公正な健康と経済影響(Nansai K. et al. 2020)

ポイント:本研究は、GDPの大きい5カ国(米国、中国、日本、ドイツ、英国)の消費によって誘発されるPM2.5の発生によって、アジアに生じる早期死亡者と経済損失額を定量化しました。

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2010年において、GDPの大きい5カ国(米国、中国、日本、ドイツ、英国)の消費に起因するPM2.5の発生は、アジアで100万人以上の早期死亡者をうみ、そのうちの1万5千人が5歳未満の子どもであることを明らかにしました。これに伴う労働所得の損失は約450億米ドルに相当します。消費国が、貿易によってもたらした健康被害国への経済的付加価値と労働所得の損失を比較すると、損失率(付加価値額に対する損失額の割合)は、影響国によって大きく異なると得られました。例えば、米国の場合、ラオスが4.1%と最も損失率が高く、次いでバングラデシュの2.0%でした。一方、日本には0.21%、韓国は0.18%であり、先進国の数値を大きく上回ると得られました。これは、消費国と影響国の間に存在する不公正なバリューチェーンが作用しており、途上国が意図せずに健康リスクの増加と引き換えに付加価値を得ている現状を示唆し、国の発展を遅らせ、貧困や公衆衛生などの分野における改善を妨げる悪循環を引き起こす懸念を生むことを意味しています。

図7 米国、中国、日本、ドイツ、英国の国内最終需要に起因するPM2.5がもたらすアジアにおける早期死亡者と経済損失(2010年値)(Nansai K. et al. 2020)

参考文献

  1. Nakajima K., Noda S., Nansai K., Matsubae K., Takayanagi W., Tomita M. (2019) Global Distribution of Used and Unused Extracted Materials Induced by Consumption of Iron, Copper, and Nickel. Environmental Science & Technology, 53, 1555-1563
  2. Nansai K., Kondo Y., Giurco D., Sussman D., Nakajima K., Kagawa S., Takayanagi W., Shigetomi Y., Tohno S. (2019) Nexus between economy-wide metal inputs and the deterioration of sustainable development goals. Resources, Conservation & Recycling, 149, 12-19
  3. Watari T., Nansai K., Nakajima K. (2020a) Review of critical metal dynamics to 2050 for 48 elements, Resources, Conservation and Recycling, 155, 104669
  4. Watari T., Nansai K., Nakajima K. (2021), Major metals demand, supply, and environmental impacts to 2100: A critical review, Resources, Conservation and Recycling, 164, 105107
  5. Watari T., Keisuke N., Giurco D., Nakajima K., McLellan B., Helbig C. (2020b), Global metal use targets in Line with climate goals, Environmental Science & Technology, 54, 12476-12483
  6. Nansai K., Tohno S., Kanemoto K., Kurogi M., Fujii Y., Kagawa S., Kondo Y., Nagashima F., Takayanagi W., Lenzen M. (2020), Affluent countries inflict inequitable mortality and economic loss on Asia via PM2.5 emissions, Environment International, 134, 105238

PJ2
研究プロジェクト2: 循環資源及び随伴物質のフロー・ストックにおける資源保全・環境影響評価

目的

主要な技術プロセスにおける随伴物質の挙動把握と環境影響評価、ならびに循環資源のフロー・ストック推計とシナリオ評価を通じて、日本及びアジア地域の資源循環における随伴物質(資源性・有害性物質)の適正管理に貢献することを目的とします。特に、資源性物質と有害性物質、さらに温室効果ガス(フロンなど)を含む、随伴物質を有する電気電子機器廃棄物(WEEEまたはe-wasteと称します)を取り上げます。

背景

アジア地域をはじめとする世界の資源需要は、製品や資源の利用傾向や資源価格の変化を伴いながら急速に増加しています。一方、廃棄物処理プロセスやインフォーマルを含む循環資源のリサイクルプロセスについては、有害性物質の排出と曝露の実態把握を通じた物質管理が十分できていません。本プロジェクトでは、WEEEの量が世界的に増加していること、WEEEには重金属や難燃剤などの有害物質が含まれていること、WEEEの不適切なリサイクルによりダイオキシン類縁化合物が発生する可能性があること、エアコンなど一部のWEEEの随伴物質には地球温暖化の原因となる冷媒フロンが含まれていることなどから、有害性と資源性をあわせ持つWEEEを主な研究対象としました。プロジェクトの概要を図1に示します。

図1 PJ2の概要

主な成果(2016年度~2020年度)

日本及びアジア地域における資源利用の高効率化とリスク低減のための、技術プロセス及び循環資源のフロー・ストック管理の評価と対策の検討を行いました。主な成果は、(1) WEEE排出量推計モデルの開発とアジアにおけるエアコンへの適用、及び温暖化対策シナリオの評価、(2) WEEE解体に伴う化学物質の直接・間接暴露に関する研究結果と、インフォーマルリサイクルが行われている現場での現地調査に基づくリスク評価の結果、(3) 中国の廃棄物輸入禁止と日本への影響を考慮した国内リサイクルの改善に向けたWEEEプラスチックフローと含有難燃剤の挙動の推定結果、です。

(1) WEEE排出量推計モデルの開発とアジアにおけるエアコンへの適用、及び温暖化対策シナリオの評価

ポイント: ポピュレーションバランスモデル(PBM)に基づいて、将来のWEEE発生量を推計するモデルを提案し、社会経済指標や製品寿命の将来シナリオに基づいて、アジア諸国における将来のWEEE発生量を推計するケーススタディを行いました。

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PBMに基づいて、将来のWEEE発生量を推定するモデルを提案しました。また、エアコン、冷蔵庫、洗濯機、携帯電話等を対象として、提案モデルの入力データとして必要となる将来のストック量を、非OECD諸国25カ国を含む62カ国のデータを用いて推定する回帰モデルを導出しました。これらのモデルを用いて、社会経済指標や製品寿命の将来シナリオに基づくアジア諸国における将来のWEEE発生量推計のケーススタディを行いました。また、推計したWEEE発生量を有害物質の含有量に換算するケーススタディとして、冷媒フロン類を事例とした検討を行いました1

アジア地域における2030年までの使用済みルームエアコンに含まれる冷媒フロン類の量を推定した結果は以下のとおりです。どの品目においても中国の貢献度が圧倒的に高く、日本の数倍から10倍以上になることがわかりました(例:2030年のエアコンの場合、9.2倍)。アジア7カ国の冷媒フロン類の変遷を調査し、使用済みエアコンから排出される冷媒フロン類の量とGWP(地球温暖化係数)を算出しました。その結果、2015年以降のGWP推定値の合計が約1~1.4億t-CO2相当となったアジア7カ国の中では、やはり中国の寄与が圧倒的であり(約90%)、使用済みエアコンから冷媒フロン類を回収することの重要性が示唆されました。

一般的に、アジアの途上国では、冷媒フロン類の回収・分解をカバーするリサイクルスキームは確立されていません。そこで、使用済みエアコンに含まれる冷媒フロン類について、各国国内での適正処理と、越境移動を伴う適正処理の2つのケースについて費用対効果を比較評価しました。その結果、中国などのケースにおいて、越境移動を伴って適正処理を行っても、費用対効果は他の温暖化対策と比較して合理性があることが認められました。

(2) WEEE解体に伴う製品由来化学物質の直接・間接曝露に関する研究結果と、インフォーマルリサイクルサイトでの現地調査に基づくリスク評価の結果

ポイント: 環境への悪影響を軽減し、解体作業者の安全性を向上させるために、ベトナムにおけるインフォーマルのWEEE解体・リサイクルのリスク管理において優先度の高い製品由来化学物質を、曝露・健康リスク評価を通じて特定しました。

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これまでの研究で、WEEEに含まれるポリブロモジフェニルエーテル(PBDE)、重金属、ダイオキシン類縁化合物などの有害物質は、手作業による解体、屋外保管や野焼きが不適切に行われた場合、環境や健康へのリスクを伴って環境に放出されることが示唆されています。

本研究では、WEEE解体地域におけるリスク管理の優先順位が高い製品由来化学物質を特定するために、WEEE解体に伴って排出・散逸する製品由来化学物質(PBDEやテトラブロモビスフェノールA(TBBPA)などの臭素系難燃剤(BFR)、トリス(2-クロロイソプロピル)ホスフェート(TCIPP)やトリス(2-クロロエチル)ホスフェート(TCEP)などのリン含有難燃剤(PFR)、銅、鉛、亜鉛などの重金属、ダイオキシン類縁化合物)の直接曝露と間接曝露に着目した研究を実施しました。直接曝露では、作業環境の室内ダスト中製品由来化学物質を対象として、経口摂取を想定した模擬胃液・小腸液による溶出試験2、経気道摂取を想定した模擬リソソーム液・模擬肺胞液による溶出試験3を実施して、各曝露経路における溶出量に基づく曝露量を算出しました。間接曝露では、施設近傍で平飼いされている鶏の鶏卵中製品由来化学物質を測定して曝露量を算出しました。ベトナム北部のインフォーマルなWEEE解体地域において、室内ダストは2015年10月に3つの解体施設から採取し、鶏卵は2017年11月に解体作業員から入手しました。作業者の曝露評価を実施したところ、鉛や銅は室内ダストの経口摂取量が、TBBPA、TCIPP、TCEPや亜鉛は室内ダストの経気道曝露経由の摂取量が、PBDEsやダイオキシン類縁化合物といった残留性有機汚染物質は生物濃縮した鶏卵経由の摂取量が高いと推定されました。

図2に示すように、曝露評価結果と耐容一日摂取量や参照用量等との比較に基づいてリスク評価を実施したところ、曝露量の中央値ベースのハザード比(耐容一日摂取量や参照用量等に対する比)は、鉛やダイオキシン類縁化合物の健康リスクが解体作業員で高いことを示しました。

鉛やPBDEsは、2006年7月以降、RoHS指令において製品含有量が規制されています。しかし、本研究の結果は、鉛やPBDE製剤中不純物の臭素系ダイオキシン類といったダイオキシン類縁化合物が廃棄循環過程において人健康に影響を及ぼしている可能性を示唆します。鉛は室内ダストの直接曝露を防ぐことで、ダイオキシン類縁化合物は施設外へのダスト等の散逸を防ぐことで、それぞれ健康リスクを効果的に低減できると考えられます。

図2 WEEE解体エリアで得られたハザード比(HQs)の中央値(1より大きい場合に健康リスク上昇の可能性がある)

(3) 中国の廃棄物輸入禁止と日本への影響を考慮した国内リサイクルの改善に向けたWEEEプラスチックフローと含有難燃剤の挙動の推定結果

ポイント: 日本におけるWEEEの処理・リサイクルを通じたプラスチックのフローと、それらに含まれる臭素系難燃剤(BFR)のフローを推定しました。中国の廃プラスチック輸入禁止後、日本からの混合プラスチックの輸出は減少したと考えられますが、WEEEプラスチックからのリサイクルペレットは依然として中国や他のアジア諸国に輸出されています。ただし、日本国内で行われる選別工程の段階でBFRの大部分が除去されていることがわかり、リサイクルへのBFR混入は一定程度防止されていると考えられました。

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WEEEからのプラスチックのリサイクルは、日本でも欧州でも推進されていますが、日本では新しい電気・電子機器(EEE)へのリサイクルなど、先進的なアプローチをより広く取り入れることが必要です。しかし、国際的に規制されているBFRを一定濃度以上で含むプラスチックのリサイクルは困難であり、これがより高度なリサイクルを阻害する1つの要因となっています。本研究では、日本におけるWEEEのリサイクル過程で発生するプラスチック及びそれらに含有されるBFRのフローを推定しました4

まず、WEEEの国内発生量とプラスチック含有率のデータからWEEEに由来するプラスチックの国内発生量を推計しました。次に、WEEEのフローに従って、プラスチックの国内発生量をリサイクルや処理施設等の各仕向先へ割り当てました。さらに、国内のリサイクルや処理施設におけるプラスチックの回収量を、プラスチックの種類別に推計しました。含有されるBFRのフローは、WEEEプラスチックのフローの推計結果をBFR量に換算して求めましたが、混合プラスチックの選別工程においては各回収物への分配率がプラスチックとBFRで異なるため、選別工程におけるBFRの分配挙動を調査し、その結果を反映してBFRのフローを推計しました。

2017年度の日本におけるWEEEプラスチックとBFRの推計フローを図3に示します。日本国内のWEEEリサイクル・処理におけるWEEEプラスチックの大部分は混合プラスチックまたは破砕残渣として回収されていると推計されました。2017年度においては回収された混合プラスチックの大部分が海外へ輸出されていましたが、2018年度以降は中国の廃プラスチック輸入禁止に伴ってその輸出量が大幅に減少し、国内でのリサイクル・処理に移行したと考えられました。しかし、プラスチックリサイクル業者への聞き取り調査から、WEEEに由来するプラスチックからの再生ペレットは依然として中国や他のアジア諸国に輸出されていることがわかりました。BFRについては、混合プラスチックの選別工程において、湿式比重分離やX線選別の段階で大部分が除去されており、WEEE由来プラスチックのリサイクルからは結果的に排除されていることがわかりました。

図3 2017年度における日本のWEEEプラスチックとBFRのフロー推計結果
(拡大する)

参考文献

  1. Oguchi M., Terazono A., Hanaoka T. (2017) Estimating the potential amount of fluorocarbons in end-of-life products generated in Asian developing countries. The 9th biennial conference of the International Society for Industrial Ecology and the 25th annual conference of the International Symposium on Sustainable Systems and Technology (ISIE/ISSST 2017 Joint Conference)
  2. Wannomai T., Matsukami H., Uchida N., Takahashi F., Tuyen L.H., Viet P.H., Takahashi S., Kunisue T., Suzuki G. (2020) Bioaccessibility and exposure assessment of flame retardants via dust ingestion for workers in e-waste processing workshops in northern Vietnam. Chemosphere, 251, 126632-126632
  3. Wannomai T., Matsukami H., Uchida N., Takahashi F., Tuyen L.H., Viet P.H., Takahashi S., Kunisue T., Suzuki G. (2021) Inhalation bioaccessibility and health risk assessment of flame retardants in indoor dust from Vietnamese e-waste-dismantling workshops. Science of The Total Environment, 760, 143862
  4. Oguchi M., Terazono A., Kajiwara N., Murakami S. (2020) WEEE plastics flows and the corresponding behavior of brominated flame retardants - A Japanese case before and after China's ban on waste imports. Electronics Goes Green 2020+, Proceedings, 333-338

PJ3
研究プロジェクト3: 維持可能な循環型社会への転換方策の提案

目的

日本社会が迎える人口減少や高齢化などの社会変化に適応する方策を、循環型社会推進基本計画が目指すリサイクルの進展といった着実な政策展開を支援する方策とともに検討します。同時に、廃棄物の利用価値の向上と、モノの授受を契機とした社会価値の創出の取り組みを視野に入れ、物質的及び非物質的な付加価値を高めた循環システムへの転換方策とストック活用の方策ならびにそれらの効果を把握します。これらを通じて、今後の人口オーナス時代における循環型社会形成政策の転換に資する知見を得て、政策提案を行います。

背景

日本はとりわけ2020年以降、3R(リデュース、リユース、リサイクル)ならびに循環型社会の形成に向けた政策を実施し、成果を上げてきました。しかしながら、その取り組みの効果は徐々に飽和しつつあります。また、今後の日本は人口減少と高齢化が進展し、これまでに構築してきたリサイクル・廃棄物システムの非効率化、財政困難や廃棄物処理サービスへのアクセスが困難となる人々の増加等が懸念されます(田崎ら2018、Tasaki et al. 2019)。

そこでプロジェクト3では、次の3つの課題に取り組むこととしました。

(1) 一般廃棄物モデルの開発と人口減少下の政策シナリオ分析
(2) 超高齢社会における廃棄物収集サービスの検討
(3) 資源循環の質的改善と製品ストックの効率的利用

主な成果(2016年度~2020年度)

上記の目標を達成するため、本プロジェクトでは、一般廃棄物のフローモデルの開発、資源循環と廃棄物処理のシナリオ分析、ケーススタディなどを実施しました。

主な成果は以下のとおりです。

(1) 一般廃棄物モデルの開発と人口減少下の政策シナリオ分析

ポイント: 国レベルでの政策目標設定のため、ボトムアップ型(自治体積み上げ型)の一般廃棄物フロー全国モデルを開発しました。全ての自治体について個別に対策導入シナリオを設定することができるため、多様な自治体の取り組みを考慮して国全体の効果が把握でき、循環型社会推進基本計画が長年課題としていた政策導入量と効果の関係が不明確であるという課題を克服したモデルです。人口減少下のシナリオ分析の結果からは、一般廃棄物の循環利用率の2025年目標である28%の達成は野心的な政策導入でも困難であり、2030年に23%程度を実現することにも相当の努力が必要であることが示されました。

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人口減少は地理的に異なって起こります。また、地域循環共生圏の考えのもと、地域の特性に応じた資源循環の取り組みが進められています。そのため、多様な自治体の取り組みを考慮して国全体の政策効果が把握できることが求められており、本プロジェクトでは、そのような目的に使える分析モデルとしてMINOWA (Municipality-Input Nation-Output WAste management) モデルを開発しました(高木ら2018、稲葉ら2019、Inaba et al. forthcoming)。MINOWAモデルは図1に示すとおり、家庭系廃棄物発生・収集サブモデル、事業系廃棄物発生・収集サブモデル、廃棄物処理サブモデルという3つのサブモデルから構成されています。

図1 開発した一般廃棄物モデル(MINOWAモデル)の概要
(拡大する)

2030年までの人口減少下における政策シナリオ分析では、1,741の自治体の政策がどのように一般廃棄物の発生量や循環利用量、最終処分量、また関連する温室効果ガス排出量といった国レベルの政策目標達成に影響を及ぼすかを分析しました。「なりゆきシナリオ」だけでなく、これまで以上にリデュースや生ごみやプラスチックリサイクルを進展させた「対策シナリオ」についても分析を行いました。また、プロジェクト5と連携して商業施設における生ごみのメタン発酵の導入も検討しました(小林ら2021)。さらに、廃棄物処理施設の更新時期のマッチング検討から、施設集約の検討が望まれる広域ブロックを特定して公表(図2)するとともに、グラビティモデルを用いた施設親和度に基づいて全国の施設集約シナリオを作成するアルゴリズムを開発し、その結果に基づいた施設集約シナリオも設定しています。

人口減少の進展をふまえると廃棄物処理基本方針における最終処分量の2025年目標は追加対策なしで達成が可能ですが、廃棄物発生量やリサイクル率については追加対策が必要となること、リサイクルの進展だけでなく、同時進行する人口減少によって過剰となる焼却施設を削減し直接焼却率を低減させることが重要であることを示しました。人口減少の時代においては政策間のトレードオフが発生しやすくなることが示され、これまでよりもきめ細かな政策目標の設定等が求められているといえました。

図2 2030年度における一般廃棄物焼却施設の集約検討ブロックの地図化例
(網掛け地域が施設集約検討ブロック、点が焼却施設をそれぞれ示す)

(2) 超高齢社会における廃棄物収集サービスの検討

ポイント: 高齢者によるごみ出しの実態やその支援策について調査し、地方自治体や自治会がごみ出し支援の仕組みを作り、運営するためのガイドブックを発行しました。また、ごみ集積所の管理運営方策についても調査し、高齢者を含む地域住民が適切にごみ集積所を管理するための事例集を発行しました。

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高齢化に関連する廃棄物管理上の課題は、少なくとも2つ指摘できます。一つ目は、高齢者に対するごみ出し支援の課題です。ごみ出しが困難でありながら必要な支援が受けられない高齢者が増加していることがその背景にあります(小島・多島 2017)。「ごみ出しができなくなる」、「不適切なごみ出しをする」、「無理にごみ出しを続ける」といった状態を回避する支援策が求められています。本プロジェクトでは、高齢者ごみ出し支援制度に関する独自の調査を行い、その研究成果をもとに、廃棄物管理に係る専門家との協議を行い、本課題に行政担当者等が取り組むうえで参考となるガイドラインを日本語と英語でとりまとめて公表しました。本ガイドラインでは、ごみ出し支援をめぐる課題の構造を解説し、公助・共助によるごみ出し支援の考え方、仕組みの検討方法、実務的留意点を示しています。また、12の特徴的・先進的なごみ出し支援制度を紹介した事例集も公表しました。上記の成果は、環境省における高齢化社会に対応した廃棄物処理体制構築の検討や、自治体のごみ出し支援制度設計、自治会における取り組みにおいて参照されており、多数の報道で取り上げられました。

二つ目は、ごみ集積所の管理運営の課題です。現状、多くの自治体では、各家庭が集積所に排出したごみを自治体が集めてまわる「ステーション方式」の収集方法が採用されています。ごみ集積所は、通常、自治会によって設置、管理されています。自治会の担い手が高齢化することで、ごみ集積所の設置や管理運営が適切に実施できなくなるという問題が懸念されます。そこで本プロジェクトでは、高齢社会においてごみ集積所を適切に運営管理する方策を提案するために、自治体職員や自治会長へのインタビュー調査とアンケート調査を実施しました。その結果、ごみ集積所の管理において自治会が重要な役割を果たしていることが明らかとなりました(鈴木・多島 2019)。例えば、ごみ出しルールの周知、ごみ当番の調整、未分別等の理由で残置されたごみの回収・再分別などが挙げられます。また、自治会によって管理されていないごみ集積所ほど不適切なごみ出しが行われる傾向も認めることができました。さらに、高齢化率が高い地域ほど、ごみ当番としてごみ集積所の管理作業ができない高齢者、ごみの分別・排出が困難な高齢者、自治会を退会することにした高齢者が多くみられることが明らかとなりました(鈴木・多島 2021)。地理的には、人口集中している地域の方が高齢者が孤立しがちであることが示唆されました。このように地域の特性を考慮して新たなごみ集積所の管理・運営方法を導入する必要性を確認できたことから、全国調査を通じて明らかとなった特徴的な20事例を紹介する事例集を作成し、公表しました。事例集では、ステーション収集やごみ集積所管理の課題の背景・構造を解説したうえで、「①適切な設備の導入を支援する」、「②ごみを出しやすくする」、「③住民の助け合いによるごみ集積所の管理のしくみを支える」という3つの類型でのごみ集積所管理事例を紹介しています。

(3) 資源循環の質の向上と製品ストックの効率的な利用

ポイント: 資源循環の質の向上について、先進的事例収集および分析を行い、6つの類型に分類しました。社会的価値の定量化を試み、評価の重要性と評価手法の課題を明らかにしました。製品の長期使用による効果を定量的に分析し、全体の20%の消費者が製品を従来の1.4倍程度長く使用することで製品の需要量と使用済み発生量は5%~10%程度削減されることを示しました。

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資源循環の質の向上と製品ストックの有効活用に向けた分析を行いました。資源循環による新たな価値創出を行っている約50事例について、その価値創出を分析した結果、アップサイクル製品加工型、素材再生型、自然還元物利用型、社会貢献型、地域活性化型、オンライン・マーケットプレイス活用型の6つの類型に分類されました(吉田・田崎 2019)。これらの事例には、廃棄された資源を有効利用した事例や社会的価値を創造(例えば、障碍者のための雇用の創出)している事例なども含まれています。さらに、海洋プラスチックごみのアップサイクルの事例について社会的投資収益率を用いて社会的インパクト評価を行いました(Yoshida et al. 2021)。

また、耐久消費財の長期使用による需要量と使用済み発生量の削減効果を分析する製品寿命モデルを開発し、事例分析を行ないました(Oguchi et al. 2019)。その結果、例えば、全消費者の20%程度の消費者が製品を従来の1.4倍程度長く使用することで、製品の需要量と使用済み発生量は5%~10%程度削減されることを示しました。さらに、消費者が製品に期待する使用年数(期待使用年数)の調査と分析を行い、期待使用年数は実際の使用年数よりも1.5倍程度長く、消費者の期待使用年数を満足させることによって長期使用を実現できる可能性があることを示しました。

参考文献

  1. 田崎智宏, 稲葉陸太, 河井紘輔(2018)人口オーナス時代の廃棄物管理~人・ごみ・施設・財政の観点から. 環境技術, 47 (4), 181-186
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PJ4
研究プロジェクト4: アジア圏における持続可能な統合的廃棄物処理システムへの高度化

目的

本プロジェクト(PJ4)では、アジア特有の状況に適した技術を開発し、また既存の技術を適応させることで、日本を含むアジアにおける強靭で持続可能な統合的廃棄物管理システムの構築に貢献します。

背景

日本をはじめとするアジア地域では、それぞれの地域に特有の環境、都市の特性、経済状況、社会的受容性を考慮した上で、持続可能で弾力性のある廃棄物処理システムを構築することが重要です。そのためには、まず、都市計画と調和した将来の廃棄物処理システムの立案とその評価方法の確立が必要となります。またそれぞれの地域は、焼却・埋立などの技術を統合したシステムとそれらの高度化を必要としています。本プロジェクト(PJ4)では、アジアのより広い範囲に適用させるために、廃棄物処理のための技術をアジアに特有の状況に合わせて開発・適合させ、それぞれの地域でカスタマイズ可能な、統合された廃棄物処理システムの基本となるベースラインモデルを提示します。

主な成果(2016年度~2020年度)

第4期中期計画の5年間で、PJ4ではアジア特有の状況を考慮して、いくつかの技術をアジアに広く適用できるように開発または適合化させました。それらの技術とは、機械的生物的処理システム、埋立地浸出水のための人工湿地、長期的な汚染フラックスを低減する埋立地、分散型廃水処理による省エネ・創エネシステム、家庭用廃水処理システムである「浄化槽」などです。また、PJ4では、アジアの廃棄物管理を評価するためのツールを開発し、アジアの地域に用いました。

以下では、PJ4の主な成果をご紹介します。

(1) アジアにおける堆肥化及び機械的・生物的処理 (MBT):地域における廃棄物管理システム改善に向けた技術

ポイント:堆肥化及びMBTに関するガイドラインを発行しました。これらのガイドラインは、アジアにおける意思決定者、政策立案者、その他ステークホルダーが戦略的選択肢として堆肥化及びMBTといった処理技術の導入可能性を自ら評価することを支援し、地域における廃棄物管理システム改善を目指したものです。

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多くの発展途上国では、都市廃棄物を直接、埋立処分することが多いのですが、埋立処分場は必ずしも適切に管理されている訳ではなく、それゆえに建設費や運営費が安価なため、埋立処分に依存しているのが一般的です。しかし、未処理の有機性廃棄物を不適切に埋立処分すると、地域レベルでも地球レベルでも甚大な環境影響が生じてしまいます。

堆肥化は有機性廃棄物の不適切な埋立処分を回避できる最も有効な手段のひとつです。PJ4での研究成果として、堆肥化に関するガイドライン(Kawai K. et al., 2020)(図1)を発行しました。本ガイドラインは、アジアにおける発展途上国の都市廃棄物管理の改善に向け、有機性廃棄物の排出源分別と、堆肥化施設での好気性発酵を前提としたプロジェクトについて解説したものです。またMBTは資源循環、環境影響の低減、費用対効果の観点で、都市廃棄物の処理方法としての高い導入効果が期待されています。アジアの都市部におけるMBTの適用を目指し、MBTの導入と実践に関するガイドラインも発行しました(Ishigaki T. and Liu C., 2020)(図1)。堆肥化及びMBTに関するガイドラインは、アジアにおける意思決定者、政策立案者、その他ステークホルダーが堆肥化及びMBTの導入可能性と持続可能性を自ら評価することを支援し、地域における廃棄物管理システムの改善が期待されます。

堆肥化ガイドライン(左)とMBTガイドライン(右)
図1 堆肥化ガイドライン(左)とMBTガイドライン(右)

(2) 省エネ・分散型処理技術による流域管理システム

ポイント:省エネルギーで分散型の廃棄物・廃水処理技術を開発し、アジア諸国で広く適用できるようにしました。また、これらの技術の技術的・財政的な効率性を強調し、その普及を促進するために、処理施設の性能試験・評価・認証制度をいくつかの国に提案しました。

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中国の農村地域における分散型廃棄物・排水処理システムの特徴を調査・分析しました。具体的には、農村部における家畜排泄物の嫌気性消化について、温度が家畜に投与されている抗生物質への耐性遺伝子(ARG)や微生物群集の動態に及ぼす影響を評価しました。解析の結果、ARGの変動に対する遺伝子伝搬因子の協調性が明らかになり、嫌気性消化においては、病原菌や遺伝子伝搬因子がより効率的に抑制されない限り、温度が高くても必ずしも抗生物質に対するARGの除去率が向上するとは限らないことが証明されました。この研究成果は、家畜排泄物処理システムの効率化に貢献することが期待されます。その他には農村地域のそれぞれの地域性や排水性状に応じた技術や設備の導入を提案しました。また、基準の設定、維持・管理、性能評価システムについて、農村部に必要な規制を提案しました。

生活排水処理施設の性能試験・評価・認証制度については、インドネシアを中心に研究を進めてきました。インドネシアで開催されたステークホルダーミーティングでの意見をもとに、性能試験方法を立案しました。試験方法を試行し、その実現性を確認しました(図2)。また、日本の排水処理技術を高温条件下かつインドネシアの典型的な流入パターンで試験しました。その結果、より高い処理効率と低い汚泥発生量が得られたため、インドネシアでは初期設備投資と運転コストの削減が期待できます。

インドネシアの国家規格となる試験方法の案(左)と、インドネシアの現地製品での試験方法の試行(右)
図2 インドネシアの国家規格となる試験方法の案(左)と、
インドネシアの現地製品での試験方法の試行(右)

(3) 都市計画と調和した廃棄物管理システムの構築と事業化に関する研究

ポイント:アジア新興国の高級住宅地や大型商業施設の開発時に、資源回収や衛生設備を段階的に導入するビジネスモデルを提案しました。

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提案したビジネスモデルでは、資源回収施設と衛生施設を段階的に導入するために、以下の3つのフェーズを設定しています。(1)発生源分別など排出時の管理を行うフェーズ、(2)資源回収施設などの比較的簡易な施設を導入するフェーズ、(3)廃棄物処理、排水処理、給湯を統合した焼却プラント、下水処理プラント、配管システムを導入するフェーズです(図3)。最後のフェーズでは、物質とエネルギーのバランス、さらに費用対効果を見積もるモデルを開発しました。また、ベトナムのハノイ近郊でアンケート調査を行い、こうしたサービスへの支払い意思額を評価しました。この廃棄物管理システムを「ecolux」と名付け、登録商標(図3)を取得し、プロジェクト実施に必要な様々な要素を示すために関係者と協議しました。

提案するビジネスモデルの商標とそのフルスケールシステム
図3 提案するビジネスモデルの商標とそのフルスケールシステム

(4) アジアにおける都市廃棄物の適正管理と環境保全を両立する自立可能な技術システムの開発

ポイント:日本を含むアジアの特性を考慮した、廃棄物管理・処理技術の開発を行いました。地域の特性に適合し、強固で持続可能な廃棄物の統合的管理システムの構築に寄与する技術とその運転・維持管理方法を提示しました。

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アジア諸国の廃棄物埋立地の状況に適合した生物学的な埋立地浸出水管理の方法として、タイの現場実証試験を通じて、人工湿地の有用性を示しました(Ogata Y. et al., 2018)。人工湿地は窒素や有機物に加え、および微量有害物質の除去にも有効であり、その除去機構は微生物の働きによるものが主で、土壌粒子への吸着と植物による微生物活動の促進作用が附随的な機構として示されました。

アジアの廃棄物の特性として、有機性廃棄物を多量に含むことによる、粘着性と水分保持性が挙げられます。こうした特徴は、廃棄物の中間処理の性能や資源化の効率が低下させることから、施設の運転・維持管理技術のこうした特性への適合を図るとともに、有機性廃棄物の適正な管理について検討することが不可欠であるといえます。アジアにおいてMBTによって生産される固形燃料(SRF)は、上記の理由で国際的に流通しているSRFに比べてしばしば品質が劣ること、また生産品質が安定しないことが問題となっています。そのため、SRF利用者の側で追加的な品質調整・精製のプロセスが必要な状況となっていて、SRFの利用拡大、ひいてはMBT等の適切な中間処理の普及が進まない要因となっていることが示されました。また、MBTプロセスにおける熱収支や炭素収支に基づく運転の最適化をすすめることで、炭素成分の微生物分解に伴って生じる熱を効率的に水分蒸発に移行させることが可能であり、SRFの品質向上に寄与できることが示されました(Sutthasil N et al, 2020)。

MBTプロセスで生じる残さは、現在のところ埋立処分されていますが、有効利用方策としてバイオチャー(生物炭)への転換により、処分量をさらに削減することについて検討しました。MBT残さ由来のバイオチャーは、高い比表面積と高いミクロ孔(2 mm以下)割合を示すとともに、高い重金属類の吸着能力を示すなど、高い品質性能を示しました。アジア都市の廃棄物管理システム全体を包括的に評価した結果、中間処理にMBTを導入し、埋立地は準好気的な管理を実施することが、最も効率的に温室効果ガス排出量の削減が可能であることが明らかにされました。この評価結果には、埋立地からのメタンの直接排出の削減と、SRFの使用による化石燃料由来の二酸化炭素の代替的な削減による効果が大きく寄与しています。

こうした知見を踏まえて、先に述べたように、アジア途上国の都市におけるMBTの実践に関するガイドライン(Ishigaki T. and Liu C., 2020)を発行しました(図1)。本ガイドラインは、行政の政策決定者に活用してもらうことを想定していますが、地域の廃棄物管理システムの改善・高度化を検討する際には、処理業者、地域住民等の利害関係者に対する情報共有にも利用可能です。MBTが環境・エネルギー的に適切な都市廃棄物管理システムを構成する処理技術の選択肢として取り上げられ、アジア地域に普及・拡大していくことが期待されます。

(5) 有害物質を含む廃棄物埋立地の長期的な安全性評価

ポイント:埋立地で用いられている様々な処分・遮蔽技術の有効性を評価することにより、有害物質を含む廃棄物埋立地の長期的な環境安全性を評価し、これを改善するための、埋立地の構造要件および廃棄物処理要件を提案しました。

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様々な遮蔽技術を施した廃棄物の環境安全性を調査し、地球科学に基づく遮蔽技術を活用した処分方法によって環境中への許容放出量が決まることを明らかにしました。水銀の場合、硫化・固型化処理した水銀含有廃棄物から放出した溶存態の水銀は、雨水浸透防止の点から外界とは隔離した単独埋立区画に埋め立てた場合でさえ、不飽和条件下では気液表面からガス状水銀へと形態変化し拡散することがわかりました。そのため、雨水浸透防止のための隔離層のみならず、溶存態水銀やガス状水銀の移動を遅延させるための土壌吸着層を同時に設けることで、水銀の最大放出フラックスを低減できること、さらにはその出現時期を数千年レベルで管理できることがわかりました(Ishimori H. et al, 2020)。

また、水銀のような単独埋立の場合だけでなく、他の重金属等の埋立地にも対応可能な数値埋立モデルを開発しました。コンクリートの中性化や塩害による化学的な経年劣化や、大規模地震による物理的損傷を表わす亀裂進展解析と組み合わせることで、埋立地の環境安全性を100年スケールで定量的に評価できるようにしました。この成果をもとに、有害廃棄物の埋立地の長期的な安全性を向上させるための埋立地の構造要件および廃棄物処理要件を提案しました。

参考文献

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  2. Ishigaki T., Liu C. (2020) CCET guideline series on intermediate municipal solid waste treatment technologies: Mechanical-Biological Treatment. United Nations Environment Programme.
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PJ5
研究プロジェクト5: 次世代の3R基盤技術の開発

目的

3R (リデュース, リユース, リサイクル)への貢献を目指して、未利用な廃棄物を対象に、次世代のエネルギー及び資源回収に関する技術を開発します。

背景

我が国では、資源性が高いもののリサイクル率が依然として低い廃棄物もあります(図1参照)。例えば、脂質やグリース等の廃油脂を含む食品廃棄物は、高いバイオガス(エネルギー利用可能なメタンガス)生成能を有しています。また、焼却灰は、灰中の貴金属や有害金属が回収されれば、土木資材として利用することができます。第4期中長期計画では、図1のように、エネルギー回収(Waste-to-Energy : WtE)技術の開発として生ごみとトラップグリース(廃油脂)からバイオガスを製造する技術の開発、資源回収(Waste-to-Materials: WtM)技術の開発として一般廃棄物の焼却灰からの金属回収技術の開発に取り組みました。

PJ5の概要
図1 PJ5の概要

主な成果(2016年度~2020年度)

WtE及びWtMの技術開発を行いました。得られた成果は、最終処分量の削減と循環型社会の推進の強化、循環型社会推進基本計画の実行に貢献するものです。

PJ5の主な成果を以下にご紹介します。

(1) 廃棄物からのエネルギー回収(WtE: Waste-to-Energy:)技術の開発

ポイント:オンサイトのバイオガス生成システムを構築し、厨芥と廃油脂との混合発酵によるエネルギー効率の改善を達成することができました。

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廃油脂をはじめとする高油分含有廃棄物は、高いメタン収率を有しているため(Kobayashi et al., 2017; Wu et al., 2018)、これらの廃棄物との混合発酵は、バイオガスプラントのエネルギー効率の改善において有望な手段です。高層ビルや大型商業施設に導入することを想定したオンサイトバイオガス化システムに、この混合発酵法の適用を試みました。このシステムは、商業店舗で発生する厨芥と廃油脂を原料として、オンサイトでバイオガスを生産・利用するようにデザインされています。まず、オンサイトシステムにおける混合発酵の安定的な運転を確立するため、廃油脂との混合発酵のラボ連続実験を実施しました。その結果、厨芥に対する廃油脂の混合比率を増大させるにつれ、単位処理量あたりのメタン生成は増大するものの、微生物群集に対して阻害を生じさせることが明らかとなりました。この際の阻害成分は高級脂肪酸であり、処理の過程で高級脂肪酸の蓄積が進行し、一定水準に到達することで、微生物群集に対する阻害が顕著に現れることを明らかにしました(Wu et al., 2017; Kobayashi et al., 2020)。また、発酵温度について、35℃の中温発酵と55℃の高温発酵とで比較実験を行ったところ、中温発酵の方がこうした阻害に対する耐性が大きいことが判明しました。中温発酵における阻害耐性の大きさは、発酵槽内における菌体を含む固形有機物濃度の高さに依存していることを踏まえ、菌体の高濃度化と高温発酵による反応速度の高さを兼ね備えた生物膜法式の高温発酵(CSFBR)を利用した効率的な混合処理を検討しました。ラボ連続実験の結果から、CSFBRは、高温発酵と同等の高負荷での処理が可能で、尚且つ高級脂肪酸やその分解によって生じる揮発性脂肪酸の濃度が高温発酵及び中温発酵と比較して著しく低い水準を維持できることがわかりました。このことから、CSFBRが効率的かつ安定的な厨芥と廃油脂の混合処理が可能であることを確認しました。CSFBRを利用することで、投入原料の増大による処理効率の低下を伴わずにより多くのメタンを回収できることから、オンサイトバイオガス生成システムのエネルギー効率の改善が期待できます。

一方、バイオガスを生成するメタン発酵施設では、原料によっては有機環境汚染物質(例えば、ポリ臭素化ジフェニルエーテル(PBDEs)等)が混入する可能性もあることから、汚染物質の挙動を再現する多媒体モデルを開発しました。モデルに汚染物質の水/溶存有機炭素間の分配係数(KDOC)を組み込むために、PBDEsのKDOCを測定しました(Shi et al., 2019a)。また、メタン発酵におけるPBDEsの分解速度も解析しました(Shi et al., 2019b)。さらに、実測したKDOCを多媒体モデルに組み込み、モデルが生ごみ等を含む廃棄物を原料とするメタン発酵施設(実機)におけるPBDEs の挙動を再現できることを示しました。このモデルは、汚染物質の環境排出削減策の検討にも有用です。

(2) 廃棄物からの資源回収(WtM: Waste-to-Materials)技術の開発

ポイント:都市ごみまたは木質バイオマスに由来する様々な種類の焼却残渣の元素組成を分析し、焼却処理における有価・有害金属の挙動を明らかにしました。エアテーブル装置を用いて焼却主灰粒子を粒度と密度ごとに分類し、貴金属を回収する方法の有効性を確認しました。

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WtM技術については、木材、紙、プラスチックなど、焼却する種類ごとに、廃棄物の元素組成を分析し、焼却残渣中の有用および有害金属への各廃棄物の寄与を推定しました。さらに、都市ごみ焼却施設と木質バイオマス発電施設での有用および有害な金属の挙動を調査しました。例えば、流動床式焼却施設では、流動砂、ボイラー灰、ガス冷却塔灰、集じん灰をサンプリングし、サンプルの元素組成分析を行いました。流動砂の元素組成は、揮発性元素を除いて、ボイラー灰等の元素組成と類似していることが示されました。一方、近年多くのバイオマス発電施設が建設され、バイオマス燃焼灰の発生量が増加していることから、木質バイオマス燃焼過程で発生する落じん灰、焼却主灰、焼却飛灰に対して元素分析を行い、元素の挙動を明らかにしました。さらにX線回折測定により灰中の鉱物組成を明らかにし、施設内の元素挙動を詳細に解析しました。これらのデータは、バイオマス発電施設からの焼却残渣のリサイクル方法の開発に有用です。また、都市ごみ焼却灰の資源リサイクル方法として、エアテーブル選別装置を用いて金属粒子を分離した後、二酸化炭素を多く含むガスを通気する方法を提案しました。さらに、都市ごみ焼却主灰粒子を粒度と密度に応じて選別するためのエアテーブル選別装置を導入し(Back et al., 2020)、灰粒子の元素組成の粒度と密度への依存性を解明しました(Back et al., 2021)(図2)。

都市ごみ焼却主灰の粒度(mm)と嵩密度(g/cm3)ごとの元素組成
図2 都市ごみ焼却主灰の粒度(mm)と嵩密度(g/cm3)ごとの元素組成

参考文献

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