第4期中期計画期間(2016年度~2020年度)の成果例
PJ1
研究プロジェクト1: 消費者基準による資源利用ネットワークの持続可能性評価とその強化戦略の研究
目的
日本の資源利用ネットワークを形成する国際サプライチェーンモデルを開発し、資源消費・環境影響に加え、社会影響としての資源調達に係るリスク要因の抽出・計測に取り組みます。また、将来シナリオに応じた各影響を同定することにより、特に温暖化対策と調和した資源管理方策の検討に取り組みます。
背景
持続可能な資源利用を達成する上では、グローバルな資源管理と物質循環の制御が不可欠です。国際的な合意である持続可能な開発目標(SDGs)、そして、パリ協定の実現のためには、更なる追加的資源の利用やそれに起因する諸問題を未然に把握し、対策を講じることが求められます。本プロジェクトでは、過去から現在、さらには未来までのグローバルな資源ネットワークを分析し、考慮すべき重要な問題を特定し、持続可能な資源管理方策の立案に向けた科学的支援に取り組みました(図1)。
主な成果(2016年度~2020年度)
第4期では、過去から将来にかけての資源利用ネットワークの解析の進展により、持続可能性への警鐘とともに、持続可能性の強化、資源循環戦略と脱炭素戦略の調和、さらには、対策としての物質と価値の好循環の形成等を支援するための各種成果(表1)を得ました。資源需要の将来展望の可視化を含む持続可能性の評価は、脱物質化目標等の科学的目標の設定、および、それを支援するための将来推計モデルの重要性を示しました。これにより、2℃目標と整合的な2100年までの物質利用可能量を算出可能なモデルを開発と脱物質化目標の設定に着手することが可能となりました。また、一連の解析を通じて、サプライチェーンに内在する問題の未然把握とその対策立案を支援する各種のツール群を開発・発信するとともに、持続可能性の強化戦略に関する意見交換・情報交換の場の形成に努めました。
以下に、PJ1の主な研究成果をご紹介します。
(1) グローバルな経済活動が誘発する総採掘活動量の定量化(Nakajima K. et al. 2019)
ポイント:鉄・銅・ニッケルを事例として、世界全体の経済活動が誘発する総採掘活動量と共に日本の経済活動による寄与を同定する分析モデルを開発しました。これにより世界全体での経済活動により顕著に採掘活動量が増大していることを定量化しました。
(2) 金属資源の採掘と輸入量の変化と持続可能な開発目標との関係(Nansai K. et al. 2019)
ポイント:ベースメタルや希少金属の一国への投入量(採掘と輸入)の増加が、社会的、経済的、環境的な目標を含む持続可能な開発目標(SDGs)の進捗を示す指標の悪化と関連していることが示唆されました。
(3) クリティカルメタルの長期需給に関する研究論文レビュー(Watari T. et al. 2020a)
ポイント:本研究は48鉱種のクリティカルメタルを対象に、その将来需給に関する全88本の既存研究を包括的にレビューした論文となります。これにより、既存研究の課題および将来展望が明らかとなりました。
(4) ベースメタルの長期需給および環境影響に関する研究論文レビュー(Watari T. et al. 2021)
ポイント:本研究はベースメタルの将来需給およびそれに付随する環境影響に関する全70本の既存研究を包括的にレビューすることで、その課題および将来展望を明らかにしました。
(5) 炭素制約下における世界規模での金属フロー・ストックの将来像(Watari T. et al. 2020b)
ポイント:本研究は、数理計画法を応用した新規の動学マテリアルフロー解析モデルを開発し、炭素制約が世界規模での金属フロー・ストックに与える影響の解析を実施しました。
(6) 経済大国が国際貿易を通じて誘引するPM2.5によるアジアへの不公正な健康と経済影響(Nansai K. et al. 2020)
ポイント:本研究は、GDPの大きい5カ国(米国、中国、日本、ドイツ、英国)の消費によって誘発されるPM2.5の発生によって、アジアに生じる早期死亡者と経済損失額を定量化しました。
参考文献
- Nakajima K., Noda S., Nansai K., Matsubae K., Takayanagi W., Tomita M. (2019) Global Distribution of Used and Unused Extracted Materials Induced by Consumption of Iron, Copper, and Nickel. Environmental Science & Technology, 53, 1555-1563
- Nansai K., Kondo Y., Giurco D., Sussman D., Nakajima K., Kagawa S., Takayanagi W., Shigetomi Y., Tohno S. (2019) Nexus between economy-wide metal inputs and the deterioration of sustainable development goals. Resources, Conservation & Recycling, 149, 12-19
- Watari T., Nansai K., Nakajima K. (2020a) Review of critical metal dynamics to 2050 for 48 elements, Resources, Conservation and Recycling, 155, 104669
- Watari T., Nansai K., Nakajima K. (2021), Major metals demand, supply, and environmental impacts to 2100: A critical review, Resources, Conservation and Recycling, 164, 105107
- Watari T., Keisuke N., Giurco D., Nakajima K., McLellan B., Helbig C. (2020b), Global metal use targets in Line with climate goals, Environmental Science & Technology, 54, 12476-12483
- Nansai K., Tohno S., Kanemoto K., Kurogi M., Fujii Y., Kagawa S., Kondo Y., Nagashima F., Takayanagi W., Lenzen M. (2020), Affluent countries inflict inequitable mortality and economic loss on Asia via PM2.5 emissions, Environment International, 134, 105238
PJ2
研究プロジェクト2: 循環資源及び随伴物質のフロー・ストックにおける資源保全・環境影響評価
目的
主要な技術プロセスにおける随伴物質の挙動把握と環境影響評価、ならびに循環資源のフロー・ストック推計とシナリオ評価を通じて、日本及びアジア地域の資源循環における随伴物質(資源性・有害性物質)の適正管理に貢献することを目的とします。特に、資源性物質と有害性物質、さらに温室効果ガス(フロンなど)を含む、随伴物質を有する電気電子機器廃棄物(WEEEまたはe-wasteと称します)を取り上げます。
背景
アジア地域をはじめとする世界の資源需要は、製品や資源の利用傾向や資源価格の変化を伴いながら急速に増加しています。一方、廃棄物処理プロセスやインフォーマルを含む循環資源のリサイクルプロセスについては、有害性物質の排出と曝露の実態把握を通じた物質管理が十分できていません。本プロジェクトでは、WEEEの量が世界的に増加していること、WEEEには重金属や難燃剤などの有害物質が含まれていること、WEEEの不適切なリサイクルによりダイオキシン類縁化合物が発生する可能性があること、エアコンなど一部のWEEEの随伴物質には地球温暖化の原因となる冷媒フロンが含まれていることなどから、有害性と資源性をあわせ持つWEEEを主な研究対象としました。プロジェクトの概要を図1に示します。
主な成果(2016年度~2020年度)
日本及びアジア地域における資源利用の高効率化とリスク低減のための、技術プロセス及び循環資源のフロー・ストック管理の評価と対策の検討を行いました。主な成果は、(1) WEEE排出量推計モデルの開発とアジアにおけるエアコンへの適用、及び温暖化対策シナリオの評価、(2) WEEE解体に伴う化学物質の直接・間接暴露に関する研究結果と、インフォーマルリサイクルが行われている現場での現地調査に基づくリスク評価の結果、(3) 中国の廃棄物輸入禁止と日本への影響を考慮した国内リサイクルの改善に向けたWEEEプラスチックフローと含有難燃剤の挙動の推定結果、です。
(1) WEEE排出量推計モデルの開発とアジアにおけるエアコンへの適用、及び温暖化対策シナリオの評価
ポイント: ポピュレーションバランスモデル(PBM)に基づいて、将来のWEEE発生量を推計するモデルを提案し、社会経済指標や製品寿命の将来シナリオに基づいて、アジア諸国における将来のWEEE発生量を推計するケーススタディを行いました。
(2) WEEE解体に伴う製品由来化学物質の直接・間接曝露に関する研究結果と、インフォーマルリサイクルサイトでの現地調査に基づくリスク評価の結果
ポイント: 環境への悪影響を軽減し、解体作業者の安全性を向上させるために、ベトナムにおけるインフォーマルのWEEE解体・リサイクルのリスク管理において優先度の高い製品由来化学物質を、曝露・健康リスク評価を通じて特定しました。
(3) 中国の廃棄物輸入禁止と日本への影響を考慮した国内リサイクルの改善に向けたWEEEプラスチックフローと含有難燃剤の挙動の推定結果
ポイント: 日本におけるWEEEの処理・リサイクルを通じたプラスチックのフローと、それらに含まれる臭素系難燃剤(BFR)のフローを推定しました。中国の廃プラスチック輸入禁止後、日本からの混合プラスチックの輸出は減少したと考えられますが、WEEEプラスチックからのリサイクルペレットは依然として中国や他のアジア諸国に輸出されています。ただし、日本国内で行われる選別工程の段階でBFRの大部分が除去されていることがわかり、リサイクルへのBFR混入は一定程度防止されていると考えられました。
参考文献
- Oguchi M., Terazono A., Hanaoka T. (2017) Estimating the potential amount of fluorocarbons in end-of-life products generated in Asian developing countries. The 9th biennial conference of the International Society for Industrial Ecology and the 25th annual conference of the International Symposium on Sustainable Systems and Technology (ISIE/ISSST 2017 Joint Conference)
- Wannomai T., Matsukami H., Uchida N., Takahashi F., Tuyen L.H., Viet P.H., Takahashi S., Kunisue T., Suzuki G. (2020) Bioaccessibility and exposure assessment of flame retardants via dust ingestion for workers in e-waste processing workshops in northern Vietnam. Chemosphere, 251, 126632-126632
- Wannomai T., Matsukami H., Uchida N., Takahashi F., Tuyen L.H., Viet P.H., Takahashi S., Kunisue T., Suzuki G. (2021) Inhalation bioaccessibility and health risk assessment of flame retardants in indoor dust from Vietnamese e-waste-dismantling workshops. Science of The Total Environment, 760, 143862
- Oguchi M., Terazono A., Kajiwara N., Murakami S. (2020) WEEE plastics flows and the corresponding behavior of brominated flame retardants - A Japanese case before and after China's ban on waste imports. Electronics Goes Green 2020+, Proceedings, 333-338
PJ3
研究プロジェクト3: 維持可能な循環型社会への転換方策の提案
目的
日本社会が迎える人口減少や高齢化などの社会変化に適応する方策を、循環型社会推進基本計画が目指すリサイクルの進展といった着実な政策展開を支援する方策とともに検討します。同時に、廃棄物の利用価値の向上と、モノの授受を契機とした社会価値の創出の取り組みを視野に入れ、物質的及び非物質的な付加価値を高めた循環システムへの転換方策とストック活用の方策ならびにそれらの効果を把握します。これらを通じて、今後の人口オーナス時代における循環型社会形成政策の転換に資する知見を得て、政策提案を行います。
背景
日本はとりわけ2020年以降、3R(リデュース、リユース、リサイクル)ならびに循環型社会の形成に向けた政策を実施し、成果を上げてきました。しかしながら、その取り組みの効果は徐々に飽和しつつあります。また、今後の日本は人口減少と高齢化が進展し、これまでに構築してきたリサイクル・廃棄物システムの非効率化、財政困難や廃棄物処理サービスへのアクセスが困難となる人々の増加等が懸念されます(田崎ら2018、Tasaki et al. 2019)。
そこでプロジェクト3では、次の3つの課題に取り組むこととしました。
(2) 超高齢社会における廃棄物収集サービスの検討
(3) 資源循環の質的改善と製品ストックの効率的利用
主な成果(2016年度~2020年度)
上記の目標を達成するため、本プロジェクトでは、一般廃棄物のフローモデルの開発、資源循環と廃棄物処理のシナリオ分析、ケーススタディなどを実施しました。
主な成果は以下のとおりです。
(1) 一般廃棄物モデルの開発と人口減少下の政策シナリオ分析
ポイント: 国レベルでの政策目標設定のため、ボトムアップ型(自治体積み上げ型)の一般廃棄物フロー全国モデルを開発しました。全ての自治体について個別に対策導入シナリオを設定することができるため、多様な自治体の取り組みを考慮して国全体の効果が把握でき、循環型社会推進基本計画が長年課題としていた政策導入量と効果の関係が不明確であるという課題を克服したモデルです。人口減少下のシナリオ分析の結果からは、一般廃棄物の循環利用率の2025年目標である28%の達成は野心的な政策導入でも困難であり、2030年に23%程度を実現することにも相当の努力が必要であることが示されました。
(2) 超高齢社会における廃棄物収集サービスの検討
ポイント: 高齢者によるごみ出しの実態やその支援策について調査し、地方自治体や自治会がごみ出し支援の仕組みを作り、運営するためのガイドブックを発行しました。また、ごみ集積所の管理運営方策についても調査し、高齢者を含む地域住民が適切にごみ集積所を管理するための事例集を発行しました。
(3) 資源循環の質の向上と製品ストックの効率的な利用
ポイント: 資源循環の質の向上について、先進的事例収集および分析を行い、6つの類型に分類しました。社会的価値の定量化を試み、評価の重要性と評価手法の課題を明らかにしました。製品の長期使用による効果を定量的に分析し、全体の20%の消費者が製品を従来の1.4倍程度長く使用することで製品の需要量と使用済み発生量は5%~10%程度削減されることを示しました。
参考文献
- 田崎智宏, 稲葉陸太, 河井紘輔(2018)人口オーナス時代の廃棄物管理~人・ごみ・施設・財政の観点から. 環境技術, 47 (4), 181-186
- Tasaki T., Inaba R., Kawai K., Kojima E., Tajima R., Suzuki K., Kubota R. (2019) Waste Management in the Era of Population Decrease and Aging. Sardinia 2019, 17th International waste management and landfill symposium proceedings. 10p.
- 高木重定, 不破敦, 田崎智宏, 稲葉陸太, 河井紘輔(2018)一般廃棄物に係る全自治体レベルのボトムアップ型ごみ発生・処理モデルを用いた対策シナリオ導入効果について. 第29回廃棄物資源循環学会研究発表会講演論文集, 17-18 <https://doi.org/10.14912/jsmcwm.29.0_17>
- 稲葉陸太, 田崎智宏, 河井紘輔, 不破敦, 高木重定(2019)一般廃棄物フロー全国モデルを用いた市町村別対策効果の推計. 第30回廃棄物資源循環学会研究発表会講演論文集, 69-70 <https://doi.org/10.14912/jsmcwm.30.0_69>
- Inaba R., Tasaki T., Kawai K., Nakanishi S., Yokoo Y., Takagi S. (forthcoming) National and subnational outcomes of waste management policies for 1,718 municipalities in Japan: Development of a bottom-up waste flow model and its application to a declining population through 2030.
- 小林拓朗, 横尾祐輔, 倉持秀敏, 田崎智宏, 稲葉陸太, 河井紘輔(2021)含油汚泥と厨芥のオンサイト混合メタン発酵がCO2排出量削減と廃棄物循環利用に及ぼす効果. 用水と廃水, 63 (4), 298-305
- 一般焼却施設および粗大ごみ処理施設の施設集約検討に向けた地図データの作成 (2019)<http://www-cycle.nies.go.jp/jp/report/mapdata.html>
- 小島英子,多島良(2017)高齢者ごみ出し支援ガイドブック,国立環境研究所,51p.
- 鈴木薫, 多島良, 田崎智宏(2019)ごみ集積所の管理と高齢化の関係-つくば市における実態アンケート調査より-,廃棄物資源循環学会研究発表会講演集, Vol.30, 103-104 <https://doi.org/10.14912/jsmcwm.30.0_103>
- 鈴木薫,多島良(2021)高齢化・地域コミュニティの弱体化に対応するごみ集積所管理支援の事例集,国立環境研究所. <https://www-cycle.nies.go.jp/jp/report/aging4.html>
- 吉田綾, 田崎智宏(2019)リサイクル・リユースの質の向上に関する事例分析. 第30回廃棄物資源循環学会研究発表会 <https://doi.org/10.14912/jsmcwm.30.0_99>
- Yoshida A., Hosoi Y., Hagiwara M., Kayama T., Tasaki T. (2021) Estimating the Social Value of a Marine Plastics Upcycling Project. The 3R International Scientific Conference on Material Cycles and Waste Management.
- Oguchi M., Tasaki T., Terazono A., Nishijima D. (2019) A product lifetime model for assessing the effect of product lifetime extension behavior by different consumer segments. Proceedings of the 3rd Product Lifetimes and the Environment (PLATE) 2019 Conference, 5p.
PJ4
研究プロジェクト4: アジア圏における持続可能な統合的廃棄物処理システムへの高度化
目的
本プロジェクト(PJ4)では、アジア特有の状況に適した技術を開発し、また既存の技術を適応させることで、日本を含むアジアにおける強靭で持続可能な統合的廃棄物管理システムの構築に貢献します。
背景
日本をはじめとするアジア地域では、それぞれの地域に特有の環境、都市の特性、経済状況、社会的受容性を考慮した上で、持続可能で弾力性のある廃棄物処理システムを構築することが重要です。そのためには、まず、都市計画と調和した将来の廃棄物処理システムの立案とその評価方法の確立が必要となります。またそれぞれの地域は、焼却・埋立などの技術を統合したシステムとそれらの高度化を必要としています。本プロジェクト(PJ4)では、アジアのより広い範囲に適用させるために、廃棄物処理のための技術をアジアに特有の状況に合わせて開発・適合させ、それぞれの地域でカスタマイズ可能な、統合された廃棄物処理システムの基本となるベースラインモデルを提示します。
主な成果(2016年度~2020年度)
第4期中期計画の5年間で、PJ4ではアジア特有の状況を考慮して、いくつかの技術をアジアに広く適用できるように開発または適合化させました。それらの技術とは、機械的生物的処理システム、埋立地浸出水のための人工湿地、長期的な汚染フラックスを低減する埋立地、分散型廃水処理による省エネ・創エネシステム、家庭用廃水処理システムである「浄化槽」などです。また、PJ4では、アジアの廃棄物管理を評価するためのツールを開発し、アジアの地域に用いました。
以下では、PJ4の主な成果をご紹介します。
(1) アジアにおける堆肥化及び機械的・生物的処理 (MBT):地域における廃棄物管理システム改善に向けた技術
ポイント:堆肥化及びMBTに関するガイドラインを発行しました。これらのガイドラインは、アジアにおける意思決定者、政策立案者、その他ステークホルダーが戦略的選択肢として堆肥化及びMBTといった処理技術の導入可能性を自ら評価することを支援し、地域における廃棄物管理システム改善を目指したものです。
(2) 省エネ・分散型処理技術による流域管理システム
ポイント:省エネルギーで分散型の廃棄物・廃水処理技術を開発し、アジア諸国で広く適用できるようにしました。また、これらの技術の技術的・財政的な効率性を強調し、その普及を促進するために、処理施設の性能試験・評価・認証制度をいくつかの国に提案しました。
(3) 都市計画と調和した廃棄物管理システムの構築と事業化に関する研究
ポイント:アジア新興国の高級住宅地や大型商業施設の開発時に、資源回収や衛生設備を段階的に導入するビジネスモデルを提案しました。
(4) アジアにおける都市廃棄物の適正管理と環境保全を両立する自立可能な技術システムの開発
ポイント:日本を含むアジアの特性を考慮した、廃棄物管理・処理技術の開発を行いました。地域の特性に適合し、強固で持続可能な廃棄物の統合的管理システムの構築に寄与する技術とその運転・維持管理方法を提示しました。
(5) 有害物質を含む廃棄物埋立地の長期的な安全性評価
ポイント:埋立地で用いられている様々な処分・遮蔽技術の有効性を評価することにより、有害物質を含む廃棄物埋立地の長期的な環境安全性を評価し、これを改善するための、埋立地の構造要件および廃棄物処理要件を提案しました。
参考文献
- Kawai K., Liu C., Gamaralalage P.J.D. (2020) CCET guideline series on intermediate municipal solid waste treatment technologies: Composting. United Nations Environment Programme.
- Ishigaki T., Liu C. (2020) CCET guideline series on intermediate municipal solid waste treatment technologies: Mechanical-Biological Treatment. United Nations Environment Programme.
- Ogata Y., Ishigaki T., Ebie Y., Sutthasil N., Witthayaphirom C., Chiemchaisri C., Yamada M. (2018) Design considerations of constructed wetlands to reduce landfill leachate contamination in tropical regions. Journal of Material Cycles and Waste Management, 20 (4), 1961-1968
- Sutthasil N., Chiemchaisri C., Chiemchaisri W., Ishigaki T., Ochiai S., Yamada M. (2020) Greenhouse gas emission from windrow pile for mechanical biological treatment of municipal solid wastes in tropical climate, Journal of Material Cycles and Waste Management, 22, 383-395
- Ishimori H., Suzuki T., Sakanakura H., Ishigaki T. (2020) Establishing Soil Adsorption Testing Methods for Gaseous Mercury and Evaluating the Distribution Coefficients of Silica Sand, Decomposed Granite Soil, Mordenite, and Calcium Bentonite, Soils and Foundations, 60, 496-504, https://doi.org/10.1016/j.sandf.2020.03.006
PJ5
研究プロジェクト5: 次世代の3R基盤技術の開発
目的
3R (リデュース, リユース, リサイクル)への貢献を目指して、未利用な廃棄物を対象に、次世代のエネルギー及び資源回収に関する技術を開発します。
背景
我が国では、資源性が高いもののリサイクル率が依然として低い廃棄物もあります(図1参照)。例えば、脂質やグリース等の廃油脂を含む食品廃棄物は、高いバイオガス(エネルギー利用可能なメタンガス)生成能を有しています。また、焼却灰は、灰中の貴金属や有害金属が回収されれば、土木資材として利用することができます。第4期中長期計画では、図1のように、エネルギー回収(Waste-to-Energy : WtE)技術の開発として生ごみとトラップグリース(廃油脂)からバイオガスを製造する技術の開発、資源回収(Waste-to-Materials: WtM)技術の開発として一般廃棄物の焼却灰からの金属回収技術の開発に取り組みました。
主な成果(2016年度~2020年度)
WtE及びWtMの技術開発を行いました。得られた成果は、最終処分量の削減と循環型社会の推進の強化、循環型社会推進基本計画の実行に貢献するものです。
PJ5の主な成果を以下にご紹介します。
(1) 廃棄物からのエネルギー回収(WtE: Waste-to-Energy:)技術の開発
ポイント:オンサイトのバイオガス生成システムを構築し、厨芥と廃油脂との混合発酵によるエネルギー効率の改善を達成することができました。
(2) 廃棄物からの資源回収(WtM: Waste-to-Materials)技術の開発
ポイント:都市ごみまたは木質バイオマスに由来する様々な種類の焼却残渣の元素組成を分析し、焼却処理における有価・有害金属の挙動を明らかにしました。エアテーブル装置を用いて焼却主灰粒子を粒度と密度ごとに分類し、貴金属を回収する方法の有効性を確認しました。
参考文献
- Kobayashi T., Kuramochi H., Xu K-Q. (2017) Variable oil properties and biome thane production of grease trap waste derived from different resources. International Biodeterioration & Biodegradation, 119, 273-281
- Wu L.J., Kobayashi T., Kuramochi H., Li Y.Y., Xu K-Q., Lv Y. (2018) High loading anaerobic co-digestion of food waste and grease trap waste: Determination of the limit and lipid/long chain fatty acid conversion. Chemical Engineering Journal, 338, 422-431
- Wu L.J., Kobayashi T., Li Y.Y., Xu K-Q., Lv Y. (2017) Determination and abatement of methanogenic inhibition from oleic and palmitic acids. International Biodeterioration & Biodegradation, 123, 10-16
- Kobayashi T., Kuramochi H., Xu K-Q., Maeda K. (2020) Simple solvatochromic spectroscopic quantification of long-chain fatty acids for biological toxicity assay in biogas plants. Environmental Science and Pollution Research, 27, 17596-17606
- Shi C., Hu Y., Kobayashi T., Zhang Z., Kuramochi H., Matsukami H., Zhang Z., Xu K-Q. (2019a) Distribution characteristics of poly-brominated diphenyl ethers between water and dissolved organic carbon from anaerobic digestate: Effects of digestion conditions. Chemosphere, 223, 358-365
- Shi C., Hu Y., Kobayashi T., Zhang N., Kuramochi H., Zhang Z., Xu K-Q. (2019b) Anaerobic degradation of deca-brominated diphenyl ether contaminated in products: Effect of temperature on degradation characteristics. Bioresource Technology, 283, 28-3
- Back, S., Ueda, K., Sakanakura H. (2020) Determination of metal-abundant high-density particles in municipal solid waste incineration bottom ash by a series of processes: Sieving, magnetic separation, air table sorting, and milling. Waste Management, 112(1), 11-19
- Back S., Sakanakura H. (2021) Distribution of Recoverable Metal Resources and Toxic Elements in Municipal Solid Waste Incineration Bottom Ash Depending on Particle Size and Density, Waste Manage, 126, 652-663.