循環・廃棄物のけんきゅう
2016年8月号

資源の利用に関わるネットワークの解析

中島 謙一

「資源」と「繋がり」

「資源」という用語を、辞典等で調べると、『1. 自然から得る原材料で、産業のもととなる有用物。土地・水・埋蔵鉱物・森林・水産生物など。天然資源。「海洋資源」「地下資源」 』(デジタル大辞泉より)などの解説を目にします。私たちは、経済活動を営む上で、多種多様な資源を用いており、その資源を利用するに際して、他者や地球環境と密接な「繋がり」を有しているのは紛れもない事実です。例えば、私たちが日頃から口にしている米などの穀物は、農業生産者の方が生産した後、市場や販売業者など様々な人を介して食卓に運ばれてきます。じゅん&たまきまた、農業生産の際、植物の育成に必要とされる栄養塩(たとえば、りん(P))は肥料などとして供給されますが、その肥料や肥料の原料となる化学製品の生産を介して、世界の国々との繋がっています。なお、このりん資源(りん資源の隠れた国際フロー)は、各国の経済活動を支える食料調達とも密接にかかわる事から戦略的な管理や調達への関心が高まっている資源の1つです。このように身の周りのありとあらゆる製品やサービスは、その供給や処理に伴うサプライチェーンを介して、多種多様な人々や国々、更には、地球環境とも繋がりを有しています。

持続可能な資源管理のために

近年、新興国の経済発展や先進国における技術革新等に伴って資源需給を取り巻く状況は急速に変化しています。この世界規模での経済成長に伴う急速な資源利用の拡大と地球環境の劣化を背景に、国連環境計画(United Nations Environment Programme, UNEP) では、国際資源パネル(International Resource Panel)を2007年に設立して、科学的な知見に基づいた議論を展開すると共に、持続可能な資源管理の重要性とその推進力としての経済成長と資源利用・環境影響のデカップリング(切り離し)の重要性を指摘しています[1]。一方で、加速度的に増加する資源利用は、経済成長に伴う環境容量の超過による環境制約の顕在化[2]に加えて、資源のクリティカリティ[3]などの資源制約を顕在化させました。すなわち、現代社会においては、資源制約と環境制約を念頭に、資源利用のあり方を見直して、社会を将来にわたって維持できるようにする事が重要な課題となっていると言えます。

これらを背景に、資源循環・廃棄物研究センターでは、物質フロー・サプライチェーンの同定を進めると共に、環境問題を含めてサプライチェーンに内在する多様なリスク要因(例えば、地政学的なリスクなど)の把握と定量化、更には、それらの管理・改善のための戦略検討に取り組んでいます。例えば、温暖化対策技術などとも密接な関わりのある資源では、ニッケルを事例として資源採掘・製錬等により引き起こされる環境負荷の把握[4]、あるいは、ネオジム・コバルト・プラチナを事例として資源の供給に関わるリスクの同定[5]などを実施してきました。いずれの研究においても、私たちの生活が経済活動を通じて、資源産出国などの他国と密接な関わりを有している事を明らかにしてきました。また、資源の供給に関わるサプライチェーンには、供給を妨げる可能性のあるリスク要因が存在する事などを定量的に示してきました。これらの研究の一部は、学術論文の他、これまでの環環の記事などでも、「ニッケルの生まれ故郷(産出国)を訪ねて」、「物質フロー分析でクリティカルメタルの国際フローを 解明する」、「世界に広がるサプライチェーンと温室効果ガスの排出管理」、「資源利用の高度化・高効率化を目指して」などとして紹介させて頂きました。この機会に是非ともご一読頂ければと思います。

さて、私たちの研究センターでは、本年度から「消費者基準による資源利用ネットワークの持続可能性評価とその強化戦略の研究」と題したプロジェクトをスタートさせました。日本の経済活動に伴う資源利用と環境影響、サプライチェーンに内在する諸問題、更には、その管理方策等について研究を実施していく予定です。ご期待ください。

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図. プロジェクトの概念図 (作画:高柳 航)
<引用文献>
  • [1] United Nations Environmental Programme, International Resource Panel, http://www.unep.org/resourcepanel/
  • [2] A.Y. Hoekstra and T.O. Wiedmann, Humanity's unsustainable environmental footprint, Science, 344(2014), 1114-1117
  • [3] T.E.Graedel, et al., Methodology of Metal Criticality Determination, Environ. Sci. Technol., 46(2012), 1063-1070
  • [4] K. Nakajima, et al., Global supply chain analysis of nickel importance and possibility of controlling the resource logistics, Metall. Res. Technol., 111(2014), 339-346
  • [5] K.Nansai, et al., Global Mining Risk Footprint of Critical Metals Necessary for Low-Carbon Technologies: The Case of Neodymium, Cobalt, and Platinum in Japan, Environ. Sci. Technol., 49(2015), 2022-2031.
<もっと専門的に知りたい人は>
  1. K. Nakajima, Y. Otsuka, Y. Iwatsuki, K. Nansai, H. Yamano, K. Matsubae, S. Murakami and T. Nagasaka: "Global supply chain analysis of nickel: importance and possibility of controlling the resource logistics", Metallurgical Research and Technology, 111, (2014) , 339-346
  2. K.Nansai, K.Nakajima, S.Kagawa, Y.Kondo, Y.Shigetomi, and S.Suh: "Global Mining Risk Footprint of Critical Metals Necessary for Low-Carbon Technologies: The Case of Neodymium, Cobalt, and Platinum in Japan", Environ. Sci. Technol., Vol.49, 2015, 2022-2031
  3. H.Ohno, K.Matsubae, K.Nakajima, Y.Kondo, S.Nakamura, T.Nagasaka, "Toward the efficient recycling of alloying elements from end of life vehicle steel scrap", Resources, Conservation and Recycling, 100(2015), 11-20
  4. L.Tang, K.Nakajima, S.Murakami, N.Itsubo, T.Matsuda, "Estimating land transformation area caused by nickel mining considering regional variation", Int J Life Cycle Assess, 21(2016), 51-59
<関連する調査・研究>
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