けんきゅうの現場から
2013年7月号

ニッケルの生まれ故郷(産出国)を訪ねて

中島 謙一

サプライチェーンを通じた資源利用

通常、サプライチェーンとは、原料の段階から製品やサービスが消費者の手に届くまでの全てのプロセスの繋がりを指しますが、現在、私たちのセンターでは、リサイクルや廃棄物処理を含めた静脈サービスの繋がりを含めて、その把握と可視化を目指しています。このサプライチェーンを通じた資源利用状況の把握のために、統計等を利用した解析の他、資源産出国を含めた国内外の現場でのフィールドワーク等を通じて資源利用の実態把握や課題抽出を目指して、日々研究を行っています。

私たちの生活とニッケル

今回は、私たちの生活に密接に関係していながらも意外に知られていない『ニッケル』を取り上げて話をしたいと思います。私たちは、製品・サービスを利用する事で、サプライチェーンを通じて世界の国々との繋がりを持っています。ニッケルも例外ではありません。例えば、目に見えるところでは、私たちが日々利用している自動車やバスには、耐熱性・耐食性(腐食に対する強さ)が求められる吸排気管の材料として、ステンレス(クロムやニッケルを添加した鉄系合金)が使われています。ハイブリッド自動車にはニッケル水素電池が搭載されています。また、耐食性が求められる食器や台所のシンクにもステンレスが利用されています。一方、目に見えないところでは、日々利用している電気を発電するためにもニッケルは必要とされています。私たちは、火力発電等により発電された電気を利用していますが、この発電の為に、ステンレスや超合金等のニッケルを含む耐熱材料が使われています。このように私たちは多種多様な製品・サービスを介しニッケルを利用しています1。そして、これらの原料となるニッケル鉱石等はニューカレドニアやインドネシア等の資源産出国から輸入されています。

現在、ニッケルは、低炭素社会の実現において重要な耐熱材料等の高機能・高付加価値材料や電池材料として重要な資源であり、希少金属としても注目を浴びている資源の1つである一方で、資源採掘に伴う生物多様性への影響等の観点からも注目を浴びている資源の1つです。

ニューカレドニアへ

図1 ニューカレドニアの国鳥カグー(絶滅危惧種) 図1 ニューカレドニアの国鳥カグー(絶滅危惧種)

ニューカレドニアはオセアニア地域に属する南太平洋の島国です2。このニューカレドニアは良質なニッケル鉱石の産出国として有名で、世界有数のニッケルの埋蔵国・産出国です3。1864年のニッケル鉱石の発見以降、19世紀末から世界的なニッケル資源の需要拡大と共に大きく発展してきました。ニッケル鉱石の採掘の為に多くの人々が移住し、日本からも第2次世界大戦が起こるまでの間に、のべ約5500人がニッケル鉱山で働くために、ニューカレドニアに渡ったそうです。ニッケル産業は、現在においてもニューカレドニアにおける中核産業となっています。ニューカレドニアのもう1つの特徴は、『天国にいちばん近い島』としても知られるように、青い海とサンゴ礁(ユネスコ世界自然遺産, 2007)、そして、その豊かな生態系に有ります。ニューカレドニアには、約4000余種の陸上植物があり、一説には、その約8割が固有種であるとも言われています24

私たちは、2013年5月に『絶滅危惧種の保全に向けた持続可能な資源利用:ニッケルの国際サプライチェーン分析』(住友財団2012年度環境研究助成)および関連プロジェクトの調査として、ニューカレドニアを訪問し、ニッケル鉱山の視察、現地の研究施設での情報収集・文献調査(動植物の植生・生態等)、現地の研究者・有識者との交流を行ってまいりました。先述のように、ニッケルは重要な資源であり、使わなければ良いという単純な話ではありません。これからもサプライチェーンの把握と可視化、更にはステークホルダーとの対話を通じて、持続可能な資源利用・資源管理に向けた方策を考え、情報発信を行っていきたいと考えています。

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