2015年の「国立環境研究所 夏の大公開」が7月18日に開催されました。研究所全体では4433名、そのうち資源循環・廃棄物研究センター(循環センター)では600名以上の方々にお越し頂き、当日は大盛況となりました。循環センターで行われた企画の内容をここで少しだけご紹介します。
昨年、好評を頂いた「こでん屋さん」をさらにバージョンアップした「こでん屋さん2号店」。「使用済み小型家電に含まれる金属について学ぶ」というコンセプトを踏襲しつつ、ゲームのルールをよりシンプルにしました。そしてゲームだけではなく賞品も「金属元素シール」にバージョンアップ。金属元素をモチーフにしたオリジナルキャラクターは「え!?研究員の方がデザインしたんですか?」とご来場の方が驚かれるほど、魅力的なデザインに仕上がりました。キャラクターには金属元素の特性や用途などが表現されていて、例えば、お団子の髪型が電球になっている「タングス・テン」というキャラからは、タングステン(W)が電球のフィラメントにも使われていることが分かります。楽しみながら学べるこのシールは大人気で、1000枚用意した在庫がほぼ無くなってしまうほどでした。
そしてこでん屋さんの隣りでは新企画「こでんストラックアウト」を開催。使っていた携帯電話が不要になった時、どういうアクションをとればよりエコになるか?を考えて、9つの選択肢中、よりエコな選択肢のパネルにボールが当たったら成功、というストラックアウト形式のゲームです。知識として知っていても、よりエコなパネルに当てられなければ駄目、知らなくても運よくエコなパネルに当たったら成功、という、運まで試されるゲームでしたが、幼稚園生などの小さなお子様も楽しんで参加してくれました。また、つくば市にご協力を頂き、今年も小型家電回収ボックスを設置して来場者からの回収を受け付けました。中には回収ボックスを初めて見た、という方もおられ、小型家電回収が実際に行われていることを実感していらっしゃる様子でした。市のイメージキャラクター「フックン船長」も応援に来てくれて、会場を盛り上げてくれました!
「色々な廃食油からつくった石けん体験」では、3種類の油(オリーブ油、ココナッツ油、パーム油)と苛性ソーダなどを使って作成した石けんを実際に使って体験する企画でした。油の脂肪酸と苛性ソーダの水酸化ナトリウムが反応することにより石けんができる仕組みを学んだり、油の種類によって泡立ちが違うことを体験して頂きました。廃食油は石けんだけではなく、バイオ燃料など様々に有効利用できる可能性を秘めており、循環センターではそれに関する研究も進めています。
「最終処分プラント実験室公開」では埋立処分シミュレータの公開、解説や、研究紹介ポスター展示の他、「レーザーメタン測定体験」「ウキクサボールキーホルダー作り」の企画を行いました。レーザーメタン計は国内外の埋立地の調査において実際に用いられているものです(2015年5月号「地見な仕事」)。埋立地に赤外線レーザーを当てて、ピピッと鳴ったらメタンガスが出ている証拠。温室効果ガスであるメタンガスを減らす研究のため、調査を行っている研究員の仕事を実感して頂けたでしょうか? 「ウキクサボールキーホルダー作り」で使った「ウキクサ」は、タイ国での埋立地浸出水処理試験(2014年3月号「東南アジアの埋立地浸出水処理への人工湿地技術の適用」)で使われた「ガマ」などと同じく水質浄化作用のある水生植物です。水の入った球形キーホルダー(半球)にこのウキクサを入れ、ビーズで綺麗にデコレーションすると、素敵なキーホルダーの完成です。ちなみに球体の中に入れた水は水道水ですが、ウキクサは半年たってもまだ生きているんですよ!(1年経ったらさすがに枯れてしまいましたが・・・)
「熱処理プラント実験室公開」では熱処理プラントの説明の他、溶融スラグ関連の展示や津波がれき関連の展示、廃家電の展示などを行いました。日本における都市ごみのおよそ8割は熱処理の過程を通っていることをご存じでしょうか?熱処理の最終過程において煤塵(ばいじん)や燃焼廃ガスに含まれる有害物質がバグフィルターによって除去される、一部は溶融スラグなどに再資源化されて建設資材として使われる、などの解説から、家庭から排出されるごみがどのような過程を経てどこに向かっていくのか、理解を深める機会にして頂けたのではないかと思います。
第4回となった絵画コンテストでは「環境のために今、自分ができること」というテーマでたくさんの意欲的な作品が寄せられました。その中で、茨城県下妻市の小林千紗さんの作品「eco⇒Smile」を資源循環・廃棄物研究センター賞として表彰させて頂きました。実現すべき未来の社会に生きている私たちの姿を想像して素敵な絵を描いてくださった小林さん、ありがとうございました。私たちが進めている研究により真の循環型社会を実現することができたなら、その時はこの絵のように、地球、人間、生き物のすべてが笑顔になっていることでしょうね!
以上、資源循環・廃棄物研究センター2015年夏の大公開のご紹介でした。来年もお楽しみに!