けんきゅうの現場から
2015年5月号

地見な仕事

山田 正人

埋立地の上に立って

以前に「埋立地ガスのモニタリング方法の開発」や「タイでの埋立地ガス調査」で紹介したように、私の研究室ではごみの埋立地から発生するガス(埋立地ガス)を測っています。埋立地ガスには、可燃性で火災や爆発事故を引き起こすメタンなどが含まれています。また、メタンは温室効果ガスでもありますので、どのような埋立地の、どこから、どれくらい発生しているかを調べることは、埋立地の安全や環境のために重要なのです。そこで私達はその実態を調べるために、国内外の埋立地に商売道具であるチャンバーを持って出かけます。飛行機や電車や車を乗り継いで、辿り着いた埋立地の上の光景は例えばこんな感じです(写真1)。さて、どこから手をつけましょうか。まずは、地面にそそり立つ煙突のようなものが目につきますね。近づいてみると確かに白い湯気のようなものがもくもくと出ていて、なおかつ臭いです(写真2)。これはガス抜き管といってまさに地下から発生する埋立地ガスを集めて大気へと拡散させるために設置されています。よし、ここから発生するガスを測っておけば仕事は終わりだ、と早合点してはいけません。実際は一本のガス抜き管がガスを集めることができる範囲はきわめて限られており、集められなかった相当量は地表面から放出されています。ガス抜き管など設置されていない埋立地もあります。それでは広い地面のどこからガスが発生しているのか、全体を端から端まで測らなければならないのか、埋立地の上で途方に暮れるわけです。

写真1 ごみ埋立地の上に立つ 写真1 ごみ埋立地の上に立つ
写真2 ガス抜き管 写真2 ガス抜き管

ホットスポットを探せ

埋め立てられた生ごみなどの有機物が酸素がない状態で分解すると、埋立地ガスとして主に二酸化炭素とメタンが生成します。地下の狭いところで発生するガスには圧力がかかっていますから、パンクしたタイヤのピンホールのように、多くのガスは通りやすいところを通って地表から大気へと放出されます。そこから放出されるガスの量を測ることができれば、埋立地の地面から発生するガスの大部分を捉えることができるはずです。このピンホール、「ホットスポット」は、生ごみをたくさん埋め立ててガスが大量に発生する埋立地では、雨が降ったすぐ後に見つけ出すことができます。水たまりの中からポコポコと泡となってガスが発生しているのが見えるからです(写真3)。しかし、調査する前に都合よく雨が降るとは限りませんし、雨が降った後はぬかるんで埋立地の上を歩きまわるのが容易ではありません。

写真3 埋立地の水たまりの泡 写真3 埋立地の水たまりの泡
写真4 サーモグラフでみた埋立地の地面(と人)(BとCがホットスポット、Aは人) 写真4 サーモグラフでみた埋立地の地面(と人)(BとCがホットスポット、Aは人)

雨が振らずとも、また、それほどガスの発生量が大きくなくとも、ホットスポットを探しだす方法がないものか。そこで、目を付けたのが、ホットスポットでは周りの地面よりも温度が高くなるという現象です。この現象は埋立地ガスが持つ熱や、地面の近くにいるメタンを食べる細菌(メタン酸化細菌)が発する熱によるものです。世の中には赤外線サーモグラフという便利なカメラがあり、地面の温度差を画像として見ることができます(写真4)。このカメラを持って埋立地の上を歩けば、効率よくホットスポットが見つけ出せ、そこにチャンバーをおいて放出量を測っていけばよいわけです。しかし、この方法にも大きな欠点があります。最初の写真をもう一度よく見てください。埋立地の地面はむき出しになっているところもあれば、草が生えているところもありますよね。ところによっては人の背丈以上の草木が生えている場合があります(写真5)。このような場所では当然地面がよく見えません。ガスの発生が小さいところではホットスポットと周囲の温度差はごくわずかで、それを見つけ出すためには、日射がない夜明け前の地温が一番低くなる時間帯に探さなくてはなりません(早起きがしんどい)。

写真5 草木が繁茂する埋立地 写真5 草木が繁茂する埋立地
写真6 レーザーメタン検出器 写真6 レーザーメタン検出器

そうこう悩んでいるうちに登場したのがレーザーメタン検出器という機器です(写真6)。この機器は懐中電灯の先のようなところから赤外線レーザーを出していて、地面などの対象物に当てた時の散乱光や反射光を捉えることによって、間にあるメタンの濃度を計測することができます。もともと配管からのガス漏れを検知するために開発された機器で、メタン濃度が一定以上になるとアラームが鳴るようにできており、これを持って埋立地の上を歩き回れば、日中だろうが、(藪こぎが必要ですが)草丈が高かろうが、ホットスポットを見つけ出すことができます。現在では国内外の埋立地の調査に、この方法を用いています。

地見な仕事

いずれにせよ、埋立地ガスの発生量の調査は、数haはあろうかという現場で一日中地面をずっとみて歩きまわる地見な仕事です。しかし、こうして開発した手法や集めたデータは、埋立地の維持管理だけでなく、埋立地ガスの発生量予測準好気性埋立技術の開発などに活かされています。そんなことを長らくしていると、いつも水たまりできる場所は変色して地面が締まっており、実はガスが放出されにくいとか、ガスが放出されやすい場所の草は下の方が赤くなっているとか(それがなぜかわかる方教えてください)、地面の様子を見るだけでホットスポットがわかるようにもなってきます。埋立地に咲くきれいな小さな花も見つけることができます(写真7)。焼却灰を埋め立てて土をかぶせていない埋立地の地面をみてまわると、結構な額の硬貨が見つかることは内緒にしておきましょうか。

写真7 埋立地に咲く花 写真7 埋立地に咲く花
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