第3期中期計画期間(2011年度~2015年度)の成果例

国立環境研究所では緊急かつ重点的な対応が求められている課題などを10の研究プログラムとして設定しました。「循環型社会研究プログラム」はその1つで、資源循環・廃棄物研究センターが中心となって、日本とアジア諸国にまたがる国際的な資源循環、アジア新興国の廃棄物処理、日本国内の地域的な資源循環システムの問題の3つの空間スケールにおいて課題解決型の研究プロジェクトを推進しました。
研究所内の他の研究ユニットとも連携を図りながら、「循環型社会研究プログラム」は、以下のような成果をあげました。

循環型社会研究プログラム 研究プロジェクト1

国際資源循環に対応した製品中資源性・有害性物質の適正管理

国際サプライチェーンに関して、サプライチェーンの構造把握を継続して進め、各種指標との接続やそれに基づく解釈を実施しました。ニッケルの分析では採掘に伴う土地利用量との接続を実施することで、誘発される土地改変量の解析を実施し、また、リサイクルに伴う資源の散逸量把握と資源利用の高度化・高効率化のために、動的MFAモデルの開発、元素の分配挙動の熱力学解析、自動車の精緻解体による環境性・経済性の解析を進めました。アジア諸国では電気電子機器と自動車の発生量の将来推計モデル開発に向けた製品保有台数の重回帰モデルを作成しました。ベトナムのE-wasteリサイクル村に おけるフィールド調査では、製品由来化学物質の拡散状況と食用生物への移行について評価し、屋外保管施設や野焼き近傍では重金属やPOPsによる高濃度汚染が観察されました。一部の難燃剤は食用生物種への蓄積濃度に注意を要することが示されました。ESMに関して、野焼きの禁止や個人曝露防護などは途上国においても最優先に求められ、フロン回収などは越境移動や先進国の協力とともに進める必要があります。不適正輸出防止のためには上流からの適正管理や安全性とわかりやすさの向上が重要であることを指摘しました。

研究プロジェクト1-国際資源循環に対応した製品中資源性・有害性物質の適正管理

詳細は研究所の研究成果(年報)をご覧ください。

循環型社会研究プログラム 研究プロジェクト2

アジア地域に適合した廃棄物管理

サブテーマ1:準好気的埋立技術のアジア地域に適した設計手法の開発

タイ王国内で稼働中のMechanical Biological Treatment施設内において、パイロットスケールの廃棄物生分解実験を行い、酸素濃度変化及び温度変化をモニタリングしました。酸素濃度の低下と同時に温度上昇が確認されました。また同施設内のバイオドライ工程において、バイオドライ期間毎の廃棄物層内の温度変化、温室効果ガスおよび酸素濃度の調査を行い、3か月経過後の廃棄物層内において最も高温となり、その後、層内温度は低下していく傾向が見られました。埋立地浸出水管理に関して、タイ王国の埋立地敷地内に設置した人工湿地を用い、原水流入パターンが水量削減及び水質浄化性能等に及ぼす影響を、乾季・雨季の条件下で評価しました。実用化に向けた各種パラメータを取得し、東南アジアの気候に適した運転因子を提示しました。なお、ここで得られた成果を学術論文にて発表しました。

サブテーマ2:途上国適合型オンサイト液状廃棄物処理技術開発

サイフォン式無動力攪拌バイオガス化装置の流体力学解析から、原料に起因する発酵液の粘性が攪拌に及ぼす影響を評価し、粘度10-100mPa.sの範囲で沈殿物巻き上げに有意な変化が起きることを確認しました。また、実規模の装置を流体力学モデル化に基づき設計・作成し、実際の飲食店舗から排出される生ごみをほぼ全量投入して連続実験を実施し、これまでの室内実験と同等の処理性能(攪拌頻度平均約6回/日、メタン変換率80%)を確認しました。また、国産技術である浄化槽の海外展開に関して、相手国での性能評価方法および規制・制度の議論を進めるとともに、技術の現地化のためインドネシアの都市の停電パターンを模擬した実験を実施し、近年の電力事情においては顕著な悪影響を及ぼさないことを確認しました。また高温(30℃)での処理実験を進め、日本国内よりも微生物活性が3倍程度高く、効率化・低コスト化を図れる可能性が示されました。

サブテーマ3:廃棄物管理計画策定支援ツールの開発

アジア新興国における都市廃棄物管理の重要な課題のひとつが生ごみの埋立処分であるが、ベトナム国ホーチミン市をケーススタディとして生ごみの排出源分別と再資源化(メタン発酵)を組み合わせた代替シナリオを提案し、温室効果ガスを指標として従来の都市廃棄物管理システム(ベースラインシナリオ)と比較評価するツールを開発しました。評価に必要な活動量データ及び排出係数を更新するなど、ツールの改良は必要であるが、アジア新興国他都市への汎用性を備えたツールに仕上げることができました。

研究プロジェクト2-アジア地域に適合した廃棄物管理

詳細は研究所の研究成果(年報)をご覧ください。

循環型社会研究プログラム 研究プロジェクト3

地域特性を活かした資源循環システムの構築

第一に、バイオマス系廃棄物の地域循環の7事例について、再度現地訪問を行い、前年度に実施した戦略ヒストリー分析の結果を関係者に確認いただいて分析結果の内容を確定させるとともに、過去1年間の取り組みの進展状況を調査して追加の知見を得ました。この結果から、バイオマス資源循環のシステムを構築するうえでの18のキーアクションを抽出することができました。第二に、焼却施設の統合を行った自治体を訪問し、複数の自治体で施設統合を行う上での実務的な課題等を調査しました。また、当該地域における施設統合による効果をシステム分析によって推計し、他の地域と統合を行ったケースと現状ケースでの比較などから、施設統合の効果を環境面と経済面の両面から把握しました。第三に、5年間のプロジェクトの研究成果を地域還元して研究実装をするために、地域循環システムを構築するにあたっての実務的な留意点を計画的、実践的、交渉的、体制的の4つの視点から解説した自治体担当者や地域の担い手向けのガイドを、有識者の助言を仰ぎながら作成しました。システム構築の流れを物語形式で説明することで、具体的に実施すべき内容が容易に理解できるような内容とすることができました。

研究プロジェクト3-地域特性を活かした資源循環システムの構築

詳細は研究所の研究成果(年報)をご覧ください。

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以前の中期計画期間までの成果の例

その他、政策対応型廃棄物管理研究として以下の取組を行いました。

国の資源循環・廃棄物政策に対応し、着実な実施が必要な調査研究

廃棄物の焼却・熱処理システム評価及びモデル解析

  • ストーカ炉およびキルン炉の焼却シミュレータが完成。計算結果に基づき主灰中の重金属濃度低減化法を提案し、実施設にて実証。焼却残渣処分場の早期安定化傾向

詳細は研究所の研究成果(年報)をご覧ください。

新しい埋立・管理手法の構築

  • 埋立処分場連成モデルの確立、放射性Cs処分場廃止基準、海面処分場廃止時期予測と早期廃止手法提示、整備促進と防災拠点化、水銀廃棄物処分基準反映

詳細は研究所の研究成果(年報)をご覧ください。

流域内自然循環と調和した低炭素型液状廃棄物処理

  • 浄化槽等の温室効果ガス排出係数開発とインベントリ反映。節水機器普及による効果評価。分散エネルギー化、ライフスタイル変化を考慮した技術的評価。

詳細は研究所の研究成果(年報)をご覧ください。

負の遺産対策・難循環物質処理・計測手法

  • 石綿迅速判定法・飛散対策のマニュアル化、指針反映
  • 臭素系難燃剤等の適正処理(熱処理)の効果確認方法の標準化・汎用化
  • ブラウン管ガラス中Pbや液晶ディスプレイ中As、Sbの塩化揮発法の有効性確認
  • 実処分場で土堰堤安定解析用データ取得と自治体利用。火災防止の観点から除染仮置場等の標準仕様策定、提供。不適正処分サイトの調査手法の標準化

詳細は研究所の研究成果(年報)をご覧ください。

再生製品の環境安全品質評価

  • 鉄鋼スラグの海域利用安全性評価手法確立、pH影響評価手法標準化、土壌・再生資材等長期溶出性影響評価試験のISOプロジェクト化推進

詳細は研究所の研究成果(年報)をご覧ください。

政策対応型廃棄物管理研究の全体構成