循環・廃棄物のけんきゅう
2012年8月号

ハウスダスト中の臭素化ダイオキシン類

鈴木 剛

ダイオキシン類と同様の規制管理へ

2012年3月、国連環境計画(UNEP)と世界保健機構(WHO)は、ダイオキシン類と同様に毒性等価係数(TEF)を設定して、ダイオキシンと同じ毒性を示す物質として臭素化ダイオキシン類を規制管理することを提言しました(参考資料1)。現在、残留性有機汚染物質(POPs)条約やダイオキシン類対策特別措置法の中で規制されているのは、ダイオキシン類、つまり塩素で置換された塩素化ダイオキシン類(PCDD/Fs、Co-PCBs)ですが(「ダイオキシン」参照 )、UNEPとWHOの見解を受けて臭素化ダイオキシン類も規制がかけられる可能性があります。

WHOとUNEPは、人が臭素化ダイオキシン類を体内に取り込む経路として、食品だけでなく、家のほこりであるハウスダストを重要視しています。ここでは、循環センターで実施したハウスダスト中の臭素化ダイオキシン類の研究を紹介します。

臭素系難燃剤と臭素化ダイオキシン類

臭素化ダイオキシン類は、ポリ臭素化ジフェニルエーテル(PBDEs)という代表的な臭素系難燃剤中に含まれる不純物として知られています。さらに最近の研究から、臭素化ダイオキシン類は、臭素系難燃剤が使用されている電化製品や繊維製品のライフサイクル(製造、使用、廃棄、リサイクル)を通じて、意図せずに生成することが分かってきました 。臭素系難燃剤については、環環でも、これまで、臭素化ダイオキシン類の発生源POPs条約における位置づけについて紹介してきました。

臭素化ダイオキシン類は、資源循環・廃棄物研究センター(循環センター)の発足以来、分析評価対象物として重要視しています。今中期計画でも、国内外の難燃剤含有製品のライフサイクルにおける重要なケースについて、臭素系難燃剤と共に臭素化ダイオキシン類に関する調査研究を実施しています(詳しくは「製品の一生、物質の一生」 「E-wasteリサイクル現場の土とダストを調べる」参照 )。

ハウスダスト中の臭素化ダイオキシン類

循環センターでは、ハウスダスト中の難燃剤や臭素化ダイオキシン類を分析評価して、これらを含有する製品の使用実態、製品からの放出等について調査研究を行ってきました(「ハウスダスト研究(ほこりの研究)」参照)。

図1 ハウスダストと都市港湾底泥中のダイオキシン縁化合物濃度 図1 ハウスダストと都市港湾底泥中のダイオキシン縁化合物濃度

ハウスダスト中の臭素化ダイオキシン類に着目した研究では、はじめにダイオキシンと同様の毒性反応を示す化学物質(ダイオキシン類縁化合物)を包括検出する生物検定法による分析評価を行いました。生物検定法は、 ダイオキシン類対策特別措置法で公定測定法として規定されている組換え哺乳類細胞を用いる手法を使用しました。生物検定法の使用は、UNEPとWHOが臭素化ダイオキシン類だけでなくダイオキシン類縁化合物の濃度情報の提供を求めていたことが背景にあります。結果としてハウスダストは、きわめて高い細胞応答性 (ダイオキシン様応答)を示し、ダイオキシン類縁化合物が多く含まれることが分かりました。その濃度レベルは、ダイオキシン類のような環境汚染物質が溜まっている都市港湾で採取した底泥よりも高いことが分かりました(図1)。また、ハウスダストを介して摂取するダイオキシン類縁化合物は、食品由来の一日摂取量を上回ることがあり、ダイオキシン類の耐容一日摂取量(TDI)を超過する要因となることが計算上推定されました。

図2 国内で採取したハウスダスト(n=33)中のダイオキシン類縁化合物の存在割合(中央値ベース) 図2 国内で採取したハウスダスト(n=33)中のダイオキシン類縁化合物の存在割合(中央値ベース)

ハウスダスト中のダイオキシン類縁化合物の構成内訳を調べたところ、ダイオキシン類(PCDD/Fs、Co-PCBs)の他、PCBs、ポリ塩素化ナフタレン(PCNs)、臭素化ダイオキシン類といったダイオキシン類縁化合物が含まれていることが分かりました。総濃度に対する寄与率を、各物質の濃度と細胞応答性(すなわち毒性の強さの目安)をもとに算出すると、ダイオキシン類よりも臭素化ダイオキシン類(臭素化ジベンゾフラン:PBDFs)で高いことが明らかとなりました(図2)。

一連の研究成果によって、臭素化ダイオキシン類が臭素系難燃剤と同様にハウスダスト中で検出され、さらにリスク(毒性〔ここでは細胞応答性〕×曝露量)ベースでみて規制管理されているダイオキシン類よりも重要度が高い物質であることを明らかにしました。

規制管理をサポートするために

私たち 研究者が今後なすべきこと としては、これまでと同様に臭素化ダイオキシン類の挙動や、人や環境への曝露の実体調査を継続して行い、規制管理を着実に実施するための基礎データを得ることが第一に挙げられます。第二に、現状の測定法の妥当性を確認する研究(「はかることを評価する」参照)や、新しい測定法の開発とその妥当性評価に関わることも重要課題といえます。図2では、ダイオキシン類縁化合物の中での臭素化ダイオキシン類(PBDFs)の重要性が示されていますが、物質を特定できなかったものの存在割合も大きいことが分かります。ここには、現在実施されている分析方法で測定できない臭素化ダイオキシン類が一定程度関連すると想定しています。まさに、新しい測定法の開発が求められている状況と言えます。

今後も、これらを意識して、臭素化ダイオキシン類の規制管理 をサポートするための調査研究を継続していきたいと考えています。

参考資料
  1. van der Berg et al.: The use of toxic equivalency factors (TEFs) for polybrominated dibenzodioxins (PBDDs) and dibenzofurans (PBDFs) in risk assessment. Abstract of Society of Toxicology annual meeting. 2012, 2506.
<もっと専門的に知りたい人は>
  1. Suzuki, G. et al. Dioxin-like and transthyretin-binding compounds in indoor dusts collected from Japan: Average daily dose and possible implications for children. Environ. Sci. Technol. 2007, 41, 1487-1493.
  2. Suzuki, G. et al. Dioxin-like activity in Japanese indoor dusts evaluated by means of in vitro bioassay and instrumental analysis: Brominated dibenzofurans are an important Contributor. Environ. Sci. Technol. 2010, 44, 8330-8336.
<関連する調査・研究>
  1. 研究プロジェクト1
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