循環・廃棄物の豆知識
2011年12月号

POPs条約におけるPBDEsの位置づけ

梶原 夏子

POPs(ポップス)条約とは「残留性有機汚染物質に関するストックホルム条約」の通称で、化学物質の使用に関する重要な国際規制の一つです。この条約では、1難分解性(環境中で分解しにくい)、2高蓄積性(生物の体内に蓄積しやすい)、3生物や環境への有害性、4長距離移動性(環境に放出されると国境を越えて長距離を移動する)という4つの特性をあわせもつ物質を残留性有機汚染物質(POPs:Persistent Organic Pollutants)と指定し、POPsの製造及び使用の廃絶、排出の削減、及びこれら物質を含む廃棄物等の適正処理等を規定しています。2004年5月にPCBや有機塩素系農薬、ダイオキシン類など12物質群を対象に条約が発効されました。その後、2009年5月に新たに9物質群が追加登録され、その一つに臭素系難燃剤PBDEsが含まれます(2011年12月20日号「製品の一生 物質の一生」参照)。この追加登録によって、PBDEsは有害物質として国際的に規制されることになったのですが、いくつか議論の余地も残されています。

PBDEsは一つの物質を指すのではなく、臭素原子の数が1~10個含まれる209種類の物質の総称です。その中で、上述の4つの特性をあわせもつためにPOPs条約の規制対象に指定されたのは、特定の工業製剤に含まれる一部の物質(臭素原子が4~7個含まれているもの)に限られています。しかしながら、PBDEsは熱や紫外線により脱臭素化されやすい特徴をもつことから、条約対象外のDecaBDE製剤(臭素原子が10個含まれているBDE 209が主成分)についても4~7臭素化異性体や臭素化ジベンゾフラン(本誌2008年8月25日号「臭素化ダイオキシン類の発生源としての難燃剤」参照)の発生源として問題視する声も上がっています。

もとこ&たまき

また、POPs条約対象のPBDEsを含む製品であっても、今のところリサイクル及び再生品の使用は許可されています。そのため、資源回収された難燃剤含有プラスチックやそれを利用した再生製品は今後も国際的に流通することが予想されます。たとえば日本で回収されたテレビケースなど難燃剤含有プラスチックの多くが中国等に輸出されており、その一部は日本向け一般雑貨へリサイクルされているとの報告もあります。また、PBDEsを含む電気・電子機器廃棄物(E-waste)が途上国で処理され続けていることにも警鐘が鳴らされています(E-wasteについては、2007年2月5日号「コクサイシゲンジュンカン?」、2011年12月20日号「E-wasteリサイクル現場の土とダストを調べる」参照)。PBDEsを含有する多様な再生製品が流通することで、PBDEsの広範な拡散汚染を招き、さらには元来の使用用途よりもヒトへの曝露リスクを高める可能性が考えられます。PBDEs含有製品フローのクローズド管理及びリサイクルの禁止、DecaBDE製剤の使用継続の是非などについても引き続き慎重に検討する必要があります。

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