循環・廃棄物の豆知識
2023年7月号

このプラスチックごみ、どう捨てる?プラスチックごみに関する法律と分別方法の関係

山本 悠久

海洋プラスチックやマイクロプラスチックなど、最近プラスチックごみが大きな問題になっていますね(詳しくは2018年11月号の「プラスチック資源循環戦略策定の議論に参加して」などをご覧ください)。その解決策の一つが、プラスチックごみを分別してリサイクルすることです。それでは、みなさんはいつもプラスチックごみをどのように分別していますか。次のものについて考えてみてください。

1. ポテトチップスの袋 2. カップ麺の容器 3. ダイレクトメールの入ったプラスチック製の袋 4. プラスチック製の定規

きっと一緒に捨てているものもあれば、別々に捨てているものもあると思います。また、違う自治体に住む人に同じ質問をしてみると、自分と違う答えが返ってくることがあります。どうしてプラスチックごみの分別方法にはそんな違いがあるのでしょうか。

プラスチックごみの分別に関わる法律

日本のごみの法律(廃棄物処理法)では、私たち一般家庭から出るごみ(一般廃棄物、詳しくは2022年1月号「取扱おうとする物を見極める(廃棄物の区分とその見分け方)」をご覧ください)を処理する責任は基本的には私たちが住む自治体にあり、ごみの収集や処理にかかる費用は私たちからの税金をもとに自治体が支払っています。そして、自治体は処理費用などの状況に応じてごみの処理方法や分別方法をそれぞれ決めることができます。そのため、ごみの分別方法は自治体によって違ってきます。引っ越し先でごみの分別方法が変わって困った人もいるのではないでしょうか。

プラスチックごみの分別方法に関わる別の法律として、「容器包装リサイクル法」があります。この法律によって、ポテトチップスの袋やカップ麺の容器など(プラスチック製容器包装)をリサイクルするための費用は、自治体ではなくその製造者などが支払うことになっています(ただし、収集にかかる費用は自治体が支払います)。また、それらのごみをリサイクルするための仕組みが整備されています。そのため、自治体がプラスチック製容器包装を分別・リサイクルする費用や手間は小さくなっています。ですが、この「容器包装」は「商品を入れる『容器』および商品を包む『包装』」1)に限定されています。そのため、最初の質問のプラスチックごみのうち、ダイレクトメールは「商品」ではないので、それを包む袋は「容器包装」と見なされません。もちろんプラスチック製の定規は「容器包装」ではありません。そのため、これらのプラスチックごみの処理には仕組みを利用できず、自治体が自ら費用を支払ってプラスチック製容器包装と別々にリサイクルするか、他のごみと一緒に処理することになります。

プラスチックごみの自治体での分別のいまとこれから

これらの法律から、プラスチックごみの分別方法が決まってきます。2022年度にプラスチック製容器包装を分別・リサイクルしていた日本の市区町村は1316(全国の1741市区町村の75.6%)ありました2)。その一方で、プラスチック製容器包装以外のプラスチックごみ(製品プラスチック)を独自に分別・リサイクルしていた自治体はとても少なく(例えば東京都千代田区や鹿児島県大崎町)、環境省が2022年に行った調査によると1455の自治体のうち31(2.1%)だけでした3)。その他ほとんどの自治体では「燃やすごみ」や「燃やさないごみ」として製品プラスチックを処理していたことになります。

同じプラスチックなのに別々に分別しなくてはいけなかったりリサイクルされなかったりするのは変だな、と思う人もいるかもしれません。そこで、2022年度に始まった新しい法律(「プラスチック資源循環促進法」)によって、製品プラスチックをプラスチック製容器包装と一緒に集めて(一括回収して)リサイクルしやすくする仕組みができました(ただし、製品プラスチックの収集・リサイクル費用は自治体が支払います)。これにより、2023年度には新たに30程度の自治体が製品プラスチックの分別・リサイクルを始めました4)。これからこの新しい一括回収の仕組みによって、プラスチックごみの分別量・リサイクル量や収集・リサイクル費用などがどのように変化するのか、効果や課題を明らかにしていくことが求められています。国立環境研究所でも、自治体やリサイクル事業者へのヒアリング調査を通してプラスチックごみの一括回収に関する情報収集・整理を進めており5)、より適切なプラスチック循環が形成・進展されるよう、方策を検討していく予定です。

<もっと専門的に知りたい人は> <参考資料>
  1. 1) "容リ法の対象となる「容器」「包装」、素材," 日本容器包装リサイクル協会,
     https://www.jcpra.or.jp/law_data/tabid/988/
  2. 2) "令和3年度容器包装リサイクル法に基づく市町村の分別収集等の実績について," 環境省,
     https://www.env.go.jp/press/press_01329.html
  3. 3) "プラスチック分別回収等に関する市区町村へのアンケート," 環境省,
     https://plastic-circulation.env.go.jp/wp-content/themes/plastic/assets/pdf/bunbetsu02.pdf
  4. 4) "落札結果,"日本容器包装リサイクル協会,
     https://www.jcpra.or.jp/recycle/related_data/tabid/1193/
  5. 5) 山本悠久ら. "プラスチックの3R施策に関する検討-容器包装・製品プラスチックの一括回収・リサイクルに注目して-". 第18回日本LCA学会研究発表会講演要旨集, オンライン, 2023-3-8/10. 日本LCA学会, 2023, 1-C2-02.
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