けんきゅうの現場から
2023年1月号

災害廃棄物情報プラットフォーム~ニーズの変化への適応をめざして

森嶋 順子

災害廃棄物情報プラットフォームとは

災害大国とも言われる日本では、毎年のように全国各地で災害が起きています。被災した地域で大量に発生した災害廃棄物を、テレビやインターネット等で一度は見たことがあるかもしれません。被災した地域の復興には、災害廃棄物を早く片付けることが欠かせません。

国立環境研究所では、東日本大震災の教訓をきっかけに2014年から「災害廃棄物情報プラットフォーム(以下、情報プラットフォーム)」をオンラインで公開しています。情報プラットフォームは、被災後に災害廃棄物を早く安全に処理するために必要な様々な情報を集めて、災害廃棄物を処理する関係者のために役立つよう設計されました。例えば、情報プラットフォームでは、災害廃棄物対策の方針を地方自治体があらかじめ定めた「災害廃棄物処理計画」や被災した自治体の災害廃棄物処理の体験談、職員を育成するために行う研修に用いるガイドブックなどを紹介しています。

リニューアルの背景と目的

近年の頻発する水害と広域に及ぶ被害によって、国や自治体による対応(公助)だけでは限界があり、被災者が適切に災害廃棄物を出すことへ協力すること(自助)、地域やコミュニティの人々の協力を得ること(共助)も必要であることが分かってきました。そして、対策の種類に応じて、必要とされる情報も変わります。

たとえば、これまでは「将来に伝えておきたい災害廃棄物処理のはなし」や「災害廃棄物処理の現場レポート」等、災害廃棄物の処理に関する話題が多かったのですが、近年では、前述したように自助・共助の観点から、住民への啓発・広報やボランティアなどとの連携に関する情報がより重要視されるようになりました。また、これまで我々が行ってきた研究成果を基にした実務に役立つツールも作成しました。そのため、新たに下記のテーマを設け、2022年6月に情報プラットフォームをリニューアルしました。

  • 平時の対策を知る:住民への啓発や人材育成等、災害に備えて平時にできることを知る
  • 災害時の対応を知る:災害時にどのような災害廃棄物対策を進めるべきかを知る
  • 過去の災害別資料:過去の災害事例で作られた計画や記録・教訓から学ぶ
  • 関係者とつながる:人と人、組織と組織のつながりで災害廃棄物の対策・処理を進める
  • ツールを使う:調査・研究成果に基づき開発されたツールを用いて対策・対応を進める
図1 災害廃棄物情報プラットフォーム Topページ
図1 災害廃棄物情報プラットフォーム Topページ

それから、今回のリニューアルにあたって新たに作成したものの一つにロゴが挙げられます。このロゴはDisaster Waste Informationの頭文字をモチーフとしつつ、下半分の楕円でプラットフォームや循環を表現しています。新たな情報プラットフォームが利用者の方に親しみをもって使って頂けるよう願いを込めました。

図2 災害廃棄物情報プラットフォームのロゴジ
図2 災害廃棄物情報プラットフォームのロゴ

自助・共助の充実に向けて

情報プラットフォームの主な利用者は、災害廃棄物処理対策に関わる国・地方自治体職員や、災害廃棄物処理に携わる事業者、調査研究を進める研究者です。情報プラットフォームはWebサイトですから、誰でもアクセスできますが、災害廃棄物についてよく知らない人にとっては少々内容が難しく感じるかもしれません。しかし、災害廃棄物処理対策には住民の協力が必要であることから、情報プラットフォームでは住民に向けた啓発動画「災害ごみのこと」を作成し、公開しています。この動画は、国立環境研究所の2022年の夏の大公開でも使用され、地域住民が参加する防災訓練やイベントでの使用を想定し、できるだけ分かりやすい表現を用いて作成しています。ぜひ一度ご覧ください。

図3 啓発動画「災害ごみのこと」
図3 啓発動画「災害ごみのこと」
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