我が国では、2011年3月に発生した東日本大震災以降も2012年5月のつくば市での竜巻災害、2013年10月の伊豆大島での土砂災害、2014年8月の広島土砂災害など、毎年大きな被害をもたらす自然災害が発生しています。
これらの自然災害は、人命や地域の社会生活に大きな被害をもたらすとともに、大量の災害廃棄物を発生させます。この災害廃棄物を迅速かつ安全に処理することは被災地域の早期復興のために極めて重要です。
災害廃棄物は一時に大量に発生するうえ、平時に家庭や事業所などから排出される一般廃棄物とは組成も異なっていて、分別も不十分であるという特徴があります。このため大規模災害時には、被災した自治体だけでなく国や都道府県、民間事業者などが連携して、特別な処理体制を組んで処理にあたる必要があります。
しかし、災害がいつどこでどれだけの規模で起きるのかを正確に予測することはできません。このような災害に備えるため2014年3月、環境省は東日本大震災の教訓を踏まえた新たな「災害廃棄物対策指針」(環境省 災害廃棄物対策指針 情報ウェブサイト参照)を示し、全国の自治体に対して、災害発生時に迅速に廃棄物を処理するための計画を策定するよう促しています。現在、これに基づいて多くの自治体で災害廃棄物処理計画の見直しや新規策定が行われています。
災害が発生したとき、様々な対応を図る場面で不足しがちなものが物資、人手、情報です。このうち最もキーになるものが情報で、限られた物資や人手をどこに投入するかの判断材料になるのも情報です。
災害廃棄物を処理する場合には、まず、どの範囲にどれだけの量の災害廃棄物が発生しているのかを情報収集し把握することが必要になります。加えて、先に述べたように災害廃棄物は自治体が平常時に扱っている廃棄物とは性状や分別レベルが異なるので、その集積場や選別処理のための施設や最終処分先も含めた処理戦略を立てなくてはなりません。
このようなとき、何よりも必要とされるのが過去の災害時に行われた廃棄物処理の実績に関する情報です。過去の災害での廃棄物処理の実績データや、技術面、手続き面を含め災害廃棄物の処理にあたって留意すべき事項等の情報は非常に貴重なものです。
現代のネット社会では様々な検索手段を用いてこれらの情報を取り出すことができますが、これまでの災害廃棄物処理に関する諸情報を集約し整理しておけば、災害発生直後の厳しい状況下でも手間をかけずに求める情報を入手できます。また、集約・整理された情報は、自治体が平常時に災害廃棄物の処理計画を考える際にも大いに参考になるでしょう。
国立環境研究所ではこのような着想から、災害廃棄物処理に関する過去の情報、自治体で策定している処理計画等の内容、公・民諸団体の災害廃棄物に関する取組内容等をWebサイト上で見やすく整理した「災害廃棄物情報プラットフォーム」を2014年5月に公開しています。
このWebサイトでは、公開されている既存の情報の集約整理だけではなく、過去に災害廃棄物処理に携わった方のインタビュー記事や最近発生した災害の廃棄物処理現場での取材記事など、災害廃棄物処理に関するさまざまな情報を積極的に発信するように努めています。
また、サイト利用者に会員登録をしていただき新着ニュースをメール配信するとともに、災害廃棄物に関する問い合わせも受け付けています。将来的には、災害発生を想定した廃棄物処理に関する研修に関するコンテンツの配信、会員相互の情報交換・意見交換が可能となるような掲示板機能の導入も検討しています。
この情報プラットフォームが、全国の自治体職員をはじめとする災害廃棄物処理に関わる人たちの貴重な情報源となるとともに、災害廃棄物処理に関わる人材の育成や相互のネットワークづくりにも活かされ、災害対応力の強化に役立つことを願っています。