著者 田崎智宏
(資源循環社会システム研究室長)
* 本ポリシーブリーフにおける見解は著者によるものであり、必ずしも国立環境研究所もしくは資源循環領域の見解を述べたものではありません。
サステナビリティ(持続可能性)は、すでにビジネスにおいても考慮すべき一側面となり、投資先企業が本当にサステナビリティの高い活動を行っているかを判断して投資を行うニーズや商品が本当にサステナビリティ上の問題に加担していないかを判断するニーズは増大している。例えば、前者についてはEUで「タクソノミー」が検討されてきており、後者については、SDGsのターゲット12.7で設定されたサステナビリティ公共調達の進捗状況を把握する方法が検討されてきている。いずれも、ステークホルダーとの議論を通じてサステナビリティで考慮すべき項目を定めるものであり、自己宣言型のサステナビリティの取り組みが不完全あるいは誤解を招きやすい形で主張されることを防止し、健全な取組を行っている活動体が的確に評価されることを推進する動向である。
サステナビリティの実践はすでに行われていることから、それらの実践内容から現実社会が着目するサステナビリティの考慮項目を経験則として抽出することができる。田崎ら(2016)*1は、25のサステナビリティ認証制度等が設定している項目をa)環境の維持,b)社会・経済の発展,c)制度的担保に大別し、それぞれの項目を抽出している。
各群の主要な項目は、国際的に用いられているサステナビリティ考慮項目のなかでも重要なものといえ、本ポリシーブリーフでは各群で2割以上を占めた項目を最低限の項目として以下のとおり提案する。
- a) 環境の維持:
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- 効率的な資源利用あるいは環境負荷の低減に関する基準
- 自然環境・生態系の保全に関する基準
- b) 社会・経済の発展:
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- 基本的人権の保護、健康・財産等が損なわれる状態にないこと
- 公正な労働条件が保証されることに規定する基本的ニーズの充足に関する基準
- 地域社会やコミュニティに重要なニーズや価値が尊重されること
- c) 制度的担保:
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- コントローラビリティを高める基準(計画策定、取組状況のモニタリング・評価、担当部署の設置やシステム構築、全般的な管理能力・意識の向上など)