有害鳥獣の捕獲後の適正処理に関するガイドブック(改訂版)(2024年6月改訂)

「有害鳥獣の捕獲後の適正処理に関するガイドブック」の改訂にあたって

生物多様性の損失を止め、回復させていくための「ネイチャーポジティブ(自然再興)」の理念が声高に叫ばれています。一方、イノシシやニホンジカなどの鳥獣が増えすぎることは、農業被害にとどまらず、生物多様性を損なうことにもつながり、延いては自然資本ともいうべき私たちが生活を営む自然環境にも影響を与えています。このように野生鳥獣との共生関係にアンバランスが生じ、一種の軋轢関係が生じている状況は、捕獲によって適正に管理しなければなりません。しかし、捕獲後の鳥獣について、ジビエとしての資源利用には光が当てられていますが、廃棄物になってしまう捕獲個体や資源利用後の残渣の処理についての取組みは、これまで不十分であったと言わざるをえません。

本ガイドブックは以上のような問題意識から作成されました。発行から約4年半が経過し、その間、多くの自治体から問い合わせをいただいており、反響の大きさを実感しています。また、有害鳥獣の捕獲や利活用、処理を取り巻く情勢は、国や自治体の取り組みが推進されている一方で、豚熱の感染拡大など新たな問題も発生しています。これらを踏まえて、本ガイドブックの内容を一部更新または修正し、事例調査等に基づいて参考となる情報も追加掲載し、関係者にとって、さらに使いやすいガイドブックとして改訂版を発行することとなりました。捕獲後の鳥獣の処理対策にお困りの方々にとって、少しでもお役に立つことができれば幸いです。

作成者代表:
国立環境研究所 フェロー 大迫政浩
農研機構畜産研究部門 上級研究員 平田滋樹
改訂作業協力:
(株)環境管理センター ソリューション事業部 環境政策部
有害鳥獣の捕獲後の適正処理に関するガイドブック「表紙」
  • (改訂版公開日 令和6年7月)

概要

近年、農林業被害や生態系被害、生活被害など野生動物と人との軋轢が深刻化しており、その解決策の一つとして増えすぎたイノシシやニホンジカの捕獲強化が図られています。しかしながら、捕獲後の鳥獣の処理システムが十分に整備されていないことから、捕獲事業の推進にも影響が出ているところです。そこで、国立環境研究所では、関係する農林系の研究機関等と共同して、有害鳥獣の捕獲後の適正処理に関するガイドブックを2019年に初版として作成しました。本ガイドブックでは、捕獲された鳥獣の処理に関する法令上の位置づけや処理方法、生活環境保全の観点からの留意点などがわかりやすく解説されており、発行後も多くの自治体から様々な声をいただいています。また、初版からの4年半余の経過のなかでの取り巻く状況の変化や、国や自治体等での様々な取組みも行われてきました。そこで、自治体の皆様のニーズに応えるために、最新の情報を追加し、さらに使いやすく有用な内容に更新した改訂版を作成しました。捕獲鳥獣の処理の問題に対して、市町村の農林と環境部署が協力して、捕獲と処理を統合的に進めていくために、本ガイドブック改訂版をご活用いただければと思います。

なお、本ガイドブックは、(独)環境再生保全機構の環境研究総合推進費(3K162012 及び3K163003)における研究成果の一部を用いて作成されました。

関連する研究情報

問合せ先

国立環境研究所 資源循環領域
フェロー 大迫 政浩
TEL:029-850-2540 E-mail:mosako[#]nies.go.jp
農研機構 畜産研究部門
上級研究員 平田 滋樹
TEL:029-838-8857 E-mail:hiratas833[#]naro.affrc.go.jp
※ [#]は@に置き換えてください