国立環境研究所・第18回日本LCA学会研究発表会 共催シンポジウムTNFD対応における研究者との協働ポイントを知る」

国立研究開発法人国立環境研究所(国環研)では、戦略的研究プログラムとして2021年度より「プラネタリーヘルスに物質ライフサイクルから迫る」をコンセプトとする物質フロー革新研究プログラムを実施しています。プラネタリーヘルスは地球環境と人類社会の健全性を追求する学術的概念として提示され,その実現には生産者と消費者による包括的な取り組みが必要です。

企業は気候変動関連リスクと機会を金融機関に開示する気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD: Task Force on Climate-related Financial Disclosures)だけでなく,2023年にフレームワークが公表される自然関連財務情報開示タスクフォース(TNFD: Taskforce on Nature-related Financial Disclosures)への対応が求められます。TNFDは世界のお金の流れを通じて,自然を負から正の状態へと移行する支援を究極の使命としていることから,生産者がプラネタリーヘルスに貢献するビジネスツールとも考えられます。しかしながら,実務的なTNFDと学術的なプラネタリーヘルスとの整合性や矛盾については不明瞭な状態です。

そこで,物質フロー革新研究プログラムは3月8日から10日まで開催される第18回日本LCA学会研究発表会の協力を得て,TNFDとプラネタリーヘルスの各専門家を招聘し,両者の相互関係を包括的に理解するシンポジウムを開催します。特に,両者の親和性の強化に際し,企業と金融機関において研究者との協働が鍵となるポイントについて議論を深めます。TNFDへの対応を着実にプラネタリーヘルスに繋げるため,科学的評価を必要とする企業と金融機関の方に有益な会合にしたいと考えております。皆様のご参加をお待ちしております。

開催概要

日時 2023年3月8日(水)9時40分から17時40分
開催場所 つくば国際会議場エポカル(https://www.epochal.or.jp/
現地参加費用 無料
主催 国立環境研究所(物質フロー革新研究プログラム),第18回日本LCA学会研究発表会
参加申込 詳細・お申込みはこちらから

プログラム(登壇者敬称略)

※プログラムの内容は、予告なく変更する場合があります。予めご了承ください。

時間 プログラム(登壇者敬称略)
9:40 – 10:00 挨拶
10:00 – 10:35
基調講演1TNFD(自然関連財務情報開示タスクフォース)による枠組開発の最新状況
原口 真(MS&ADインシュアランスグループホールディングス
サステナビリティ推進室TNFD専任SVP
TNFDタスクフォースメンバー)

【概要】
TNFD は開示フレームワークの開発を通じて、世界の資本の流れを自然にマイナスからプラスの状態へとシフトさせるようサポートすることを究極の使命と考えている。2023年9月にフレームワークの最終提言を行うことを目指して、あらゆるステークホルダーからの意見を歓迎するオープンイノベーションのアプローチを採用している。

10:35 – 11:10
基調講演2プラネタリー・ヘルスからみたTNFD
渡辺知保(長崎大学大学院プラネタリーヘルス学環 学環長)

【概要】
プラネタリー・ヘルスは,”地球の健康と人間の健康”を意味するとともに,相互依存する両者の持続的な実現をめざす科学と実践とを指すとも言える.プラネタリー・ヘルスの観点からTNFDの枠組みをみた場合,どのような相乗効果や課題があるのかを考えてみたい。

11:10 – 12:00
パネルディスカッション
ファシリテーター
  • 春日文子(国環研・第18回日本LCA学会研究発表会実行委員長)
パネリスト
  • 原口 真
  • 渡辺知保
  • 本藤祐樹(横浜国立大・日本LCA学会会長)
12:00 – 13:00 休憩
13:00 - 14:20
セッション1持続可能な自然資本を創るファイナンス;研究者と金融部門との協働
座長:亀山康子(国環研・東京大)

【概要】
近年、サステナブルファイナンスという概念が広まり、特に気候変動への対応を中心に議論が進展しています。しかし、自然資源や生物多様性保全を対象としたものについては、気候変動とは異なる課題や困難な点もあります。本セッションでは、自然資本に関連する研究者と金融部門関係者との協働の必要性について注目します。特に、研究者は自然資本をどのように評価しているのか、それは金融部門が自然資本の持続可能性を担保するために求める知見と共通するのか,相違点は何かについて議論します。

【登壇者と演題】

  • 角谷 拓(国環研)ネイチャー・ポジティブにむけた生物多様性評価の課題
  • 篠田悠心(国環研)日本の農産物輸入に関する生物影響評価
  • 石原広恵(東京大)持続可能な海洋ガバナンスのためのブルーファイナンス
  • 亀山康子(国環研・東京大)サステイナブル・ファイナンス・スクールの紹介

総合討論(招待コメンテーター:原口真)

【備考】
本セッションは東大院新領域創成科学研究科サステイナブル社会デザインセンターとの共催です。

14:20 - 14:40 休憩
14:40 - 16:00
セッション2経済活動が引き起こす自然関連財への影響とLCA
座長:中島謙一(国環研)

【概要】
サプライチェーンのグローバル化に伴い、人権、労働、環境、文化に関連する社会問題が顕在化してきており、直接的あるいは間接的に供給制約となり得るサプライチェーンリスク要因を踏まえた戦略的資源管理が重要な課題となっています。自然資源の適切な保全と活用に向け、資源利用が引き起こす多様なサプライチェーンリスク情報を整理・共有することはこれからの産業活動にとって不可欠です。さらにTCFDに続く、自然資本等に関する企業のリスク管理と開示枠組みを構築するために設立されたTNFDの動きが加速しています。 本セッションでは経済活動が引き起こす自然関連財への影響について、ライフサイクル視点で概観するとともに、TNFDにおける議論との接続について議論します。

【登壇者と演題】

  • 松八重一代(東北大)自然関連財に関する情報集積とLCA
  • 近藤倫生(東北大)環境DNA観測網ANEMONEとネイチャーポジティブにむけた生物多様性データ活用の展望
  • 佐久間東陽(木更津高専)衛星画像解析から見る資源利用と環境攪乱
  • 金本圭一朗(地球研/東北大) 農作物の生産及び消費はどの程度生物多様性の保全と競合しているのか
  • 伊坪徳宏(東京都市大)ライフサイクル影響評価からみる資源消費と生態系影響

総合討論

【備考】
本セッションは以下の支援を受けています。

  • JST未来社会創造事業、鉱物資源のサプライチェーンリスク最小化に向けたリソースロジスティクス解析システムの構築
  • JST COI-NEXT美食地政学に基づくグリーンジョブマーケットの醸成共創拠点
  • JST COI-NEXTネイチャーポジティブ成長社会実現拠点
  • 総合地球環境学研究所実践プロジェクト (14200135)
  • JSPS科研費「グローバル経済の成長に潜む資源利用の不平等・格差の計測と可視化」(22K18433)
16:00 - 16:20 休憩
16:20 - 17:40
セッション3カーボンニュートラル社会における物質消費と循環
座長:南齋規介(国環研)

【概要】
日本のCO2排出量の約25%は素材生産部門からの排出ですが、電化が困難な生産プロセスが多く、太陽光や風力発電等の普及促進では素材製造に関するCO2排出削減は進みません。そのため、カーボンニュートラル社会の実現に向けて、炭素貯留技術やグリーン水素等の普及による生産プロセスの革新的変化に期待する一方で、社会の物質利用構造自体の変革によってカーボンニュートラルに導く手段を持つことが肝要です。本セッションでは、循環型社会形成推進基本計画に基づく日本の物質フロー観測の焦点である,消費,循環,廃棄の三断面に着目し、カーボンニュートラル社会と整合する日本の物質フロー構造について議論を深めます。

【登壇者と演題】

  • 畑 奬 (国環研)日本の物質フロー指標の改善とGHG排出削減の両立への課題
  • 鬼頭みなみ(国環研)航空輸送の未来技術に依存しないカーボンニュートラル化経路の分析
  • 平井康宏(京都大)電力と素材産業の脱炭素化に対応する資源循環システムの設計
  • 永友 佑(パシフィックコンサルタンツ)資源循環CCUS技術の導入意義の検討と焼却処理を対象とした評価研究のレビュー
  • 長野尚也(パシフィックコンサルタンツ)資源循環CCUS技術の環境性能及び経済性の試行的評価:廃棄物処理施設を対象として

総合討論

【備考】
本セッションは環境研究総合推進費(JPMEERF20223001: カーボンニュートラル目標と調和する日本の物質フロー構造の解明)の支援を受けています。

参加申込

現地参加をご希望の方は、以下の参加登録フォームより必要事項を記載の上お申込みください。200名の定員に達した段階で締め切りますのでお早目の登録をお願いいたします

現地参加登録フォーム (登録締め切り:2023年2月28日(火)17時まで)

なお,オンライン参加をご希望の場合は、上記の現地参加登録フォームへの入力は不要です。ただし、第18回日本LCA学会研究発表会への参加登録(有料)が必要です。詳しくは日本LCA学会研究発表会のホームページをご覧ください。

第18回日本LCA学会研究発表会のオンラインセッションへの参加

3月8日13時から日本LCA学会研究発表会の4つのセッションがオンラインのみで並行して開催されます。各セッションの研究発表はつくば国際会議場エポカルの下記の4会議室に設置するスクリーンでもご覧になれます。会議室にはマイクとカメラが用意されているため質疑にも参加できます。

  • 会議室201A(オンラインA会場:太陽光,機器の廃棄,バイオマス)を配信)
  • 会議室201B(オンラインB会場:窒素,農業1, 2)を配信)
  • 会議室202A(オンラインC会場:プラスチック循環1, 2,資源1)を配信)
  • 会議室202B(オンラインD会場:スポーツ・イベント,建築,サーキュラーエコノミー)を配信)

上記の会議室に入室される場合は,第18回日本LCA学会研究発表会への参加登録(有料)が必要です。
オンラインセッションの詳細については、第18回日本LCA学会研究発表会のプログラムをご覧ください。

お問い合わせ先

〒231-0011 神奈川県横浜市中区太田町6-72-1-703
株式会社シーエーティ
Email: nenkai [at] ilcaj.org