循環・廃棄物の豆知識
2012年6月号

食品の隠れた環境負荷の指標化

小島 英子

あなたが今朝食べた一膳のご飯は、その生産、流通、消費、処分のライフサイクル全体(2007年7月2日号「ライフサイクルアセスメント」参照)で、どれだけ環境負荷を出しているのか、そんな疑問に答える指標をいくつか紹介します。

「カーボン・フットプリント(直訳:炭素の足跡)」は、ライフサイクルを通じて排出された温室効果ガス排出量をCO2排出量に換算したものです(2008年9月8日号「カーボンフットプリント」参照)。日本での表示の制度化は、3年間の試行事業を終えて、2012年4月から「カーボンフットプリントコミュニケーションプログラム」として運用されています。これによると、例えば、「宮城県産ひとめぼれ5kg」の原材料調達から廃棄・リサイクルに至るまでのライフサイクル全体を通したCO2排出量は13.1kg、一膳(80g)では0.21kgです。

次に、「ウォーター・フットプリント(直訳:水の足跡)」は、ライフサイクルを通じて直接・間接に消費・汚染された水の量を表すものです。国際NGO Water Footprint Networkが公開しているデータベースによると、白米1kgの ウォーター・フットプリントは世界平均で2,497リットル、一膳(80g)では200リットルです。同NGOのデータベースをもとに、様々な製品のウォーター・フットプリントを解説付きで表示するスマートフォン用アプリケーション(英語のみ)も公開されています。

また、流通段階のみに着目した指標に「フード・マイレージ(直訳:食料の輸送距離)」があります。地産地消を推奨する考え方で、外国産のお米よりも国産米の方が、フード・マイレージは小さくなります。

カーボン・フットプリントとウォーター・フットプリントはともに、ISOによる国際規格の策定が行われています。制度が拡大し、表示が普及すれば、私達がスーパーで買い物をする際に、価格や産地に加えて、これらの指標を参考に商品を選ぶのが、当たり前になるかもしれません。

しかし、これらの指標化の取組みも、万能ではありません。例えば、ともに主食である白米とパンを比べた場合、一般に、水田で栽培される稲は、畑で作られる小麦より、大量の水を必要とするため、ウォーター・フットプリントは大きくなります。けれども、水資源に比較的恵まれた日本で生産された白米と、水資源が乏しい地域で栽培された小麦でできたパンを比較して「白米はパンより環境負荷が大きい」と結論付けるのは拙速で、生産地の水資源の状況を加味した判断が必要です。また、フード・マイレージを小さくするために温室栽培を行うと、適地で露地栽培された野菜に比べて、生産段階の環境負荷が大きくなってしまう場合があります。さらに、当然のことながら、カーボン・フットプリントの小さい製品を選んで購入しても、食べきれずに捨ててしまっては、全く意味がありません。

イラスト:もとこ、たまき

これらの指標は、私達が食生活を通じて、気付かずに出している環境負荷の一部を、目に見える形にしてくれます。環境負荷の小さい食生活を送るには、これらの指標を理解の足掛かりとしつつ、自分が口にする食品が、どこで、どのように栽培されているのか、旬の食品・地場の食品にはどういうものがあるのかなど、食に対する関心や知識を高めることもとても大切です。

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