循環・廃棄物のけんきゅう
2017年4月号

地域循環の実現のために重要なことを実例から学ぶ

稲葉 陸太

地域循環の課題

廃棄物の循環利用(リユースやリサイクルなど)を市町村などの広さで行うことを「地域循環」といい、すでに数多くの事業(資源となる廃棄物の分別・回収やリサイクル施設の建設・運用など)が日本各地で実施されています。例えば、生ごみの循環利用は地域循環となることが多いです。これに対し、PETボトルは全国規模、廃家電は国際規模の循環利用となります。また、いくつかの地域循環がつながってより広い循環利用となる可能性もあります。地域循環については、事業を計画する段階までについては国によるガイドライン[1][2]も作られていますが、事業を実施する段階についてはあまり詳しく書かれたものがありません。もとこ&たまきそのため、事業を立ち上げようとする人にとってはある程度の参考情報があるのですが、事業を実施しながら行き詰まっている人、あるいはさらに上手に続けたい人にはそれが足りませんでした。よって、すでに実施されている事業からその計画だけでなく実施が上手くいった要因を学ぶ必要があります。そこで、私たちは、いくつかの地域循環の事業について、関係者への聞き取り調査を行い、手に入れた情報を分析することにしました

事業の流れを整理して考える

私たちは、事業がどのように立ち上がって、どのように続いたか、という経緯(ヒストリー)を明らかにし、その中で何が重要であったかを見つけ出せば、事業を始めたり続けたりしようとする人にとって、役に立つ情報となると考えました。

事業は、長いものでは数十年にわたって続いているものもあるため、まず、事業の流れをいくつかの段階に分けることにしました。私たちは、地域循環の調査・研究に携わってきた自分たちの経験や、今回の調査を通じて手に入れた知見をもとに、事業を「導入」、「実施」および「展開」という3つの段階に分けることにしました。「導入」は、資源となる廃棄物の分別・回収システムやリサイクル施設が出来るまでの段階です。「実施」は、それらのシステムや施設が動き出してからの段階です。そして「展開」は、地域循環が他の地域に広がったり、あるいはリサイクルが上手く行かなかったり、色んな展開をする段階です。また、事業では計画を立てたり、関係者に説明したり、作業を実行したりといったいろんな活動が行われるため、それらを分類することにしました。分類は、経営学や戦略についての研究を参考にして、「構想・計画」、「実践・認識」、「人材・組織」および「交渉・調整」の4つとしました(図1を参照してください)。

図1 地域循環事業における4つの活動分類 図1 地域循環事業における4つの活動分類

聞き取り調査のまとめ作業では、3つの段階ごとに、地域循環の事業におけるさまざまな活動がどの分類に入るかを考えて、時間の流れに沿って並べることにしました。例として、導入段階での作業を図2に示しました。図2のとおり、活動の名前と内容が1つのボックスにまとめられており、ボックスどうしの関係は矢印で示されています。また、それぞれの活動が事業全体に与えた効果を緑色の矢印で示しています。上向きならプラスの効果、下向きならマイナスです。この図は、まず研究者が原案を作り、関係者(自治体の職員や事業者など)に確認していただき、修正していきました。このような整理の方法で、7つの事業について聞き取り調査を行いました。

図2 経緯(ヒストリー)分析の作業のようす(導入段階の例) 図2 経緯(ヒストリー)分析の作業のようす(導入段階の例)

7つの事業のうち、3つについては特に詳しく分析し、学術的な論文としてまとめました[3]。その結果、事業を立ち上げて続けるための重要な活動をいくつか見つけ出しました。その例として、導入段階での構想・計画に分類される「事業を企画した人(自治体の担当者など)がビジョンを見せること」、実施段階での実践・認識に分類される「生ごみから作った肥料や、それを使って育てた農作物などの買い手を確保しておくこと(生ごみの地域循環の場合)」などがあります。そのためには、事業の計画段階から農家に説明し、施用試験なども実施して信頼を得ることなどの活動も必要です(「実践・認識」や「交渉・調整」に分類)。また、全ての段階で「事業に反対する人が市町村長になること」について、いかに対応するかが重要になります。例えば、予算や担当部署を縮小させられたりする可能性もありますので、事業内容を市町村長に直接説明して理解してもらうなどの活動が必要になります。なかなか難しいのですが、テレビの取材や政府の表彰など外から評価してもらうことも、市町村長の考えが協力的に変わる要因になるかも知れません。

これらの知見はあくまで3事例に関係した内容ですが、他の事例でも似た部分があれば参考になるかも知れません。また、他の事例についてももっと研究がなされて情報が増えれば、共通した重要事項が見えてくる可能性があります。

物語にして分かり易く伝える

私たちは、7つの事業の調査内容にもとづいて、もっと一般の人にも分かり易く伝えるガイドも作りました[4]。この中では、調査した7つの事例だけでなく、研究者の経験もふまえながら、仮想的な3つの事例を作りました。そして、それら事例における事業の流れを分かり易い文章で説明した物語を作り上げました。先に紹介した研究論文では3つの事例での重要な活動をとりあげましたが、こちらのガイドでも取り組みを有効に進める「キーアクション」を考えました。いずれも事業が上手くいくための活動ですが、「重要な活動」は3つの事例に限った内容であるのに対して、「キーアクション」はいろいろな事例に当てはまる内容となっています。キーアクションは、7つの事例の分析結果やガイド作成に関わった著者ら、そしてガイド作成で意見をいただいた実務者の方々との議論をふまえて、18個に絞りました。例えば、「計画策定」というキーアクションがあるのですが、その具体的な内容として、目的の見える化、提言書・計画書の作成、首長による宣言などが含まれます。これによって、事業の最初の方向性が決まり、関係者にも基本的な情報が共有されやすくなります。

また、ガイドにおける物語は表1に示すように書かれています。出来るだけ分かり易くなることを心がけており、また、どのような活動がキーアクションであるかが分かるようにも書かれています。

ここでご紹介したガイドはあくまで現時点でのものです。今後、我々や他の研究者などがさらに事例研究を進めて知見が増えれば、それを反映したものに更新していくことも考えています。

表1 ガイドに示された地域循環事業の物語(例) 表1 ガイドに示された地域循環事業の物語(例)
<もっと専門的に知りたい人は>
  1. [1] 環境省 廃棄物・リサイクル対策部 企画課 循環型社会推進室 (2012) 地域循環圏形成推進ガイドライン, http://www.env.go.jp/press/files/jp/20424.pdf
  2. [2] 環境省 廃棄物・リサイクル対策部 企画課 循環型社会推進室 (2016) 地域循環圏形成の手引き ~地域内にある循環資源の利用拡大に向けて~, http://www.env.go.jp/recycle/circul/area_cases/attach/tebiki_mat_01.pdf
  3. [3] 稲葉陸太, 田崎智宏, 小島英子, 河井紘輔, 高木重定, 櫛田和秀 (2017) バイオマス地域循環事業活動の戦略的視点からの経緯分析~実践知の蓄積と普及のために~, 廃棄物資源循環学会論文誌, 28(掲載予定)
  4. [4] 田崎智宏, 稲葉陸太, 河井紘輔, 小島英子, 小澤(遠藤)はる奈 (2016) 物語で理解するバイオマス利活用の進め方 ~分別・リサイクルから利用まで~ http://www-cycle.nies.go.jp/jp/report/201603NIES_biomass_guide.pdf
<関連する調査・研究>
  • 【第3期中期計画】 循環型社会研究プログラム研究プロジェクト
  • 【第4期中長期計画】 資源循環研究プログラム
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