けんきゅうの現場から
2017年4月号

国際会議の開催準備あれこれ

南斉 規介

実行委員会の組織から広報活動

写真1:ポスターセッションの様子 写真1:ポスターセッションの様子

研究成果の発信の仕方は、「研究成果を発表する(2013年6月号)」、「研究成果のつたえかた(2016年4月号)」、「研究者たちの集会(2016年6月号)」の記事でも紹介しているように、学会(研究集会)での発表と学術雑誌での論文発表が二本柱です。学会には主に国内の参加者を募る「国内学会」と世界各国から参加者を募る「国際学会」があり、国際学会は全て英語で行われるのが通常です。国際会議を開催する準備について、「研究者たちの集会(2016年6月号)」でも触れていますが、今回は「エコバランス国際会議(2016年10月開催)」という京都で行った国際会議の実行委員長を務める機会がありましたので、その舞台裏についてご紹介します。エコバランス国際会議は、物のライフサイクル全体(生産⇒使用⇒廃棄段階まで)を考えて環境問題の解決策を考えることを目的とする国際会議で1994年に始まりました。開催地が日本であるため、国内の参加者が最も多いですが、今回はアジア、欧米、オセアニアなど世界28カ国から研究者、企業実務者、行政担当者らが総勢372名が参加しました(写真1)。

準備期間は約2年です。初めに、会議の全体像を考えていく実行委員会を作ります。どのような分野の発表を中心的に募集するかを見据えて、そのテーマを主導する研究者や実務者の方に委員になっていただき、会議の日程、会場、そしてメインテーマを決めていきます。会場選びでは、見込んだ参加人数に合わせた会議室の数があること、海外の参加者が空港から行きやすいこと、周辺に宿泊施設が十分にあることなどに配慮します。たまき&じゅん以前は国際会議は欧米で主に開催されていましたが、今では中国、インド、東南アジアで主催される国際会議も増えたことで、環境に関する国際会議の日程は世界的に過密になっています。そのため、日程選びは重要で、少なくともエコバランス国際会議に来る人が参加しそうな他の国際学会や国内学会と重ならないようにします。場所と日程が決まれば、直ぐに宣伝活動に入ります。ホームページを作ったり、チラシやポスターを作って色々な国際会議で配布したりして参加を呼びかけます。

助成金・スポンサー獲得、発表審査、プログラム、宴会準備

並行して進めなくてはならないのが、助成金やスポンサーの獲得です。数百人を収容できる会議場を借りたり、印刷物を作ったりするのは非常にお金がかかります。もちろん、参加者から参加費を集めるのですが、できるだけ安く抑える必要があります。特に、発展途上国からの参加者や学生の方々の参加費は安価に設定するのが通例です。日本では、文部科学省の科学研究費、研究財団、地方自治体などが学会開催に対して助成金を支出することがあります。国際会議を何のために開くのか、それが何の役に立つのか、なぜ助成金が必要なのかを指定された用紙に記載して応募します。そして無事採択されることを祈ります。

写真2:バンケットの様子 写真2:バンケットの様子
写真3:バンケットでのイベントの様子(舞子さんをお呼びしました) 写真3:バンケットでのイベントの様子(舞子さんをお呼びしました)

会議の参加申し込みは、全てインターネットで行います。いろんな国の人が間違いなく必要な情報を入力できるように試行錯誤をして英語の申し込み画面を作ります。発表申し込みの受付を開始した後は、締め切り日まではゆっくりという訳ではありません。申し込まれた発表を審査する準備を始めます。発表の審査とは、発表内容が会議が対象とする分野に合致するか、内容が発表を認めるに値する質(独自性があるか、論理的な方法か、明確な説明であるか、分野における重要性があるかなど)を有しているかを判断します。審査基準と審査フォーマットを作ったら、該当する分野の国内外の研究者を選定し、審査員となってもらうことをお願いしていきます。発表の受付締め切り後は、直ぐに審査を開始します。そして、審査で認められた発表をもとに会議のプログラムを作成します。エコバランス国際会議はセッションと呼ぶ80分または100分を一区切りにしてプログラムを構成し、参加者が議論をし易いように、各セッションには内容に接点がある発表を集めます。発表者に審査結果を伝えたら、発表者だけでなく広く一般に参加申し込みの受付を始めます。多くの人が申し込みをしてくれることを期待しながら、セッションを仕切る座長を引き受けていただく依頼や当日配布するプログラムや各発表の概要を掲載した資料の作成に取り掛かります。

国際会議では、参加者同士の交流を促進するように、ウェルカムレセプションやバンケット(写真2)という、会議前日や中日に宴会を催します。参加者全員が入れるホテルなどの宴会場を探し、食事の内容や宴会でのイベント(写真3)も計画をします。また、会議中にはランチや休憩時間での飲み物やお菓子の提供も行います。ベジタリアンや宗教上の理由で食べられない食材がある参加者への配慮も国際会議ではとても重要です。

会議当日と取りまとめの報告

写真4:クロージング後の集合記念写真 写真4:クロージング後の集合記念写真

いざ、会議が始まれば、予定していたことが無事進むことを見守るだけですが、開会や閉会の挨拶(写真4)、自身の研究発表には緊張感をもって臨みます。会議が終わると助成金をいただいた団体への報告書や学会誌に掲載する開催報告記事の執筆が待っています。そして、経費の支払いなど会議の全ての仕事が終われば、会議を運営した実行委員会と事務局のメンバーが集まり、次回への改善点を話し合います。あとは、「お疲れ様でした、乾杯」で締めくくりです。

今は、インターネットを利用してテレビ会議も安く簡単にできるようなりました。世界から人が集まり、実際に顔を合わせて研究者らと議論する国際会議は、お金も時間もエネルギーもたくさん消費します(私の試算では、今回の国際会議は一人1tの温室効果ガスを排出しました)。ですから、その代償に見合うよう、研究者間の国際的なネットワークを強固にし、世界の研究者が共同して研究をより一層発展させていくような場でなければいけません。どうすれば国際会議はその役割をもっと果たせるかを、今回の経験を踏まえて、今後も考えていきたいと思います。

*報告記事のリンク(The International Journal of Life Cycle Assessment)
 https://link.springer.com/article/10.1007/s11367-017-1310-2
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