けんきゅうの現場から
2016年6月号

研究者たちの集会

多島 良

研究発表会の意義

以前、研究成果を発表する場として学会発表があることをご紹介しました。今回は、学会発表が行われる場である研究発表会(学術講演会、学会年次大会、シンポジウム、会議、あるいは単に「学会」等とも呼ばれます)について、私見を交えてご紹介します。

私は、研究発表会の意義は大きく4つあると考えています。1つ目は当然、自分の研究を広く知ってもらうことです。「こんなことが分かった」「こんな研究手法が役に立つ」といった新しい知見を共有することに加え、「私はこんな研究をしている(できる)」といった自己アピールを関係する分野の研究者・民間事業者・行政職員に向けて行う場でもあります。イラスト2つ目は、最新の研究動向を知ることです。社会的要請の高い研究や、他の研究者との棲み分け・連携など、研究室に閉じこもっていては見えないものを探しにいきます。3つ目は、自分の研究成果に対してコメントをもらうことです。専門的な観点からの見落としの指摘や、凝り固まった頭では思い浮かばない素朴な指摘(素朴な疑問ほど返答がむずかしいのですが)を受けることが、研究の質を高める機会になります。最後に、ネットワーク作りです。研究発表時の議論はもちろんのこと、懇親の場でのざっくばらんな意見交換も、次の研究資金の獲得に向けた共同研究の提案や、新しい研究テーマの着想に繋がっていくのです。

研究発表会のあれこれ

研究発表会の開催にあたっては、発表会の主題に沿った研究発表が募集され、応募された題目からプログラムが編成されます。多くの場合、限られた会期を有効活用するため、同じ時間帯に複数の部屋を使う分科会形式がとられます。プログラムの編成にあたっては、1つの分科会で行われる発表が何かしらの観点(テーマや研究手法)で共通性があるよう、工夫されることが多いです。発表は通常1件あたり10分前後の決められた時間で行われ、その後、質疑応答、討論の時間が数分間あります。分科会の合間にはコーヒーブレイクがあり、討論の延長戦を展開したり、名刺交換をしたりする姿が多くみられます。自分の発表もさることながら、他の研究者の発表を聞くことにも頭を使いますので、1日が終わったころには疲れきっているのですが、夜はまた違った形での意見交換のために体力を振り絞って懇親の場に出かけるのです。

ところで、こうした研究発表会を誰が運営しているのか、ご存知ですか?実は、研究者自身が、関係する事業者等と連携しながら開催、運営しているのです(無償です)。例えば、私が最近関わったIAIA16という影響評価を主題とした国際会議(写真)では、名古屋市で開催するにあたり、五輪の様に誘致活動を行うところから準備が始まりました。その後、2年以上をかけて30名弱の実行委員会(研究者、行政職員、会場担当者等)が中心となって体制作り、開催計画の策定、会場・機材・資金・人員・プログラム・関連イベント・懇親会等の準備を行いました。様々な意義のある研究発表会の裏には、こうした隠れた努力があるのです。

写真 写真 IAIA16の様子。開会式を大ホールで行ったのち(左)、分科会形式で研究発表と討論が行われた(中央)。
討論の合間には、コーヒーブレイクも欠かせない(右)。(いずれの写真も名古屋国際会議場の提供)

循環センターのメンバーが参加する研究発表会

最後に、当センターの研究者が多く参加している研究発表会を紹介します。平成27年度は、36の国内学会と23の国際学会に参加し、研究発表を行っています。表1には、その中で当センターからの参加が多かったトップ10を示しました。

国内学会でダントツのトップは、廃棄物分野の基幹学会である「廃棄物資源循環学会」の年次大会でした。続いて、環境に出た放射性物質の管理や除染について議論するため福島第一原子力発電所事故後に立ち上げられた「環境放射能除染学会」の研究発表会がランクインしました。他にも、「環境化学」、「LCA」、「Landfill(埋立)」、「経済・政策」、「水環境」、「Industrial Ecology(産業エコロジー)」等のキーワードが見られるように、資源循環・廃棄物処理に関連する基礎学問、応用技術に焦点を置いた研究発表会や、廃棄物処理の特定の側面に焦点を置いた研究発表会にも多く参加し、研究発表を行っています。こうした場を活用し、また、時には主催者側として関わりつつ、研究の質を高めたり、新しい人脈やアイディアを得たりしているのです。

国際会議は一般に参加費が高く、敷居が高いかもしれませんが、国内学会は数千円、もしくは一般の方向けに無料で参加できるものもあります。研究を職業としない方にとっても様々な発見があると思いますので、面白そうな研究発表会があれば、一度足を運ばれてはいかがでしょうか。

表1 循環センターの研究者が多く参加した研究発表会トップ10(平成27年度)
順位 学会名 当センターからの
参加者数
1 第26回廃棄物資源循環学会研究発表会 27
2 環境放射能除染学会 第4回研究発表会・国際シンポジウム 15
3 第24回環境化学討論会 7
4 第11回日本LCA学会研究発表会 7
5 the15th International waste management and Landfill symposium (Sardinia2015) 5
6 環境経済・政策学会2015年大会 5
7 第50回日本水環境学会年会 4
8 the 8th Biennial Conference of the International Society for Industrial Ecology (ISIE Surrey 2015) 4
9 the 2nd 3R International Scientific Conference on Material Cycles and Waste Management (3RINCs) 4
10 2015 Asia Biohydrogen and Biorefinery Symposium 4 4
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