けんきゅうの現場から
2017年3月号

国内外の製紙工場で利用される廃棄物由来燃料とその品質

河井 紘輔

製紙工場ではボイラーという設備で蒸気を発生させて、工場内の機械を動かすための電気や、紙を乾かすための熱を作り出しています。木材は紙の原料として欠かせないもののひとつですが、紙の原料には向かない木材をボイラーの燃料として利用することもあります。さらに木材だけではなく、皆さんの家で発生するプラスチックや紙といった廃棄物は非常に燃えやすく、ボイラーの燃料として利用することができます。ただし、有害な物質(塩素、水銀など)が多く含まれていると燃料として利用することができません。例えば、塩素が多く含まれていると設備が腐食してしまいますし、水銀が多く含まれていると廃棄物を燃やした際に排ガスとなって環境中に放出してしまい、人体や環境に悪い影響を及ぼします。EUではSRF(solid recovered fuel)と称する廃棄物由来燃料の流通を円滑に行うことを目的として、SRFがどれくらい燃えやすくて、どれくらい塩素と水銀が含まれているのかといった品質の欧州規格(EN: European Norm)を作っています。

日本では廃棄物由来燃料としてRPF(refuse derived paper and plastics densified fuel)と呼ばれる、プラスチックや紙といった産業廃棄物を主な原料として製造された燃料が国内の製紙工場で利用されていて、RPFに関する規格が日本工業規格(JIS: Japanese Industrial Standards)で定められています。RPFのJISとSRFのENは一概に比較できないのですが、RPFは比較的高品質な(燃えやすく、塩素濃度が低い)廃棄物由来燃料のみに該当するものですので、ENではRPFのJISでは規定されていない低品質なSRFの区分も存在します。では、ヨーロッパの製紙工場ではどのような廃棄物由来燃料が利用されているのでしょうか。

フィンランドは製紙産業が盛んな国で、首都ヘルシンキから約250km離れたラウマという小さな街にも製紙工場があります。この製紙工場内に、年間9万トンのSRFを燃料の一部として利用して電気と熱を作り出す熱電併給(CHP: Combined Heat and Power)プラントが2014年に稼働し始めました(図1)。フィンランド国内において最も多くSRFを燃料として用いているCHPプラントのひとつに数えられています。ここで作られた電気と熱は製紙工場へ供給されるだけでなく、余った熱も地域熱暖房へ供給されます。日本の製紙工場で利用されているRPFと異なるのは、まず形状です。日本では「ペレット」と呼ばれる、廃棄物を高温で固めたものが主に利用されているのですが、フィンランドでは廃棄物は固めず、ある程度の大きさに破砕したものをそのまま利用していて、これを「フラフ(fluff)」と呼んでいます(図2)。また、有害物質のひとつである塩素に関してですが、日本のとある製紙工場でRPFを受け入れる際に求められる塩素濃度は0.3%以下であり、これは高品質な廃棄物由来燃料のみを受け入れるとも言えます。一方でラウマの製紙工場ではSRFの塩素濃度が1%以下であれば受け入れることになっています。日本の製紙工場では、産業廃棄物由来の燃料に限って利用している一方、ラウマの製紙工場では産業廃棄物だけでなく、商業廃棄物や都市廃棄物由来の燃料を利用していて、多様かつ多量のSRFを受け入れています。つまり、製紙工場へ電気と熱を供給するというだけでなく、品質が多少劣っていても周辺地域で発生する様々な廃棄物を積極的に有効利用しているとも言えます。

  • 図1 フィンランド・ラウマにおけるCHPプラント図1 フィンランド・ラウマにおけるCHPプラント
  • 図2 ベルトコンベアで運ばれるSRF図2 ベルトコンベアで運ばれるSRF

前述の通り、燃料に含まれる塩素濃度が高いと設備が腐食しやすくなり、修繕費が増大してしまいます。ラウマの設備は日本に比べても耐用年数が短い可能性があります。どのような廃棄物由来燃料を利用するかはそれぞれの事業者(の事業戦略)によりますが、どのような品質のものを利用すべきなのか、その判断材料のひとつとして規格があると言えます。2015年にSRFに関する国際規格化のための技術委員会(ISO/TC 300)が設立され、国立環境研究所の研究者も日本の専門家として作業に加わっています。技術委員会は6つのワーキンググループ(WG)で構成され、SRFの国際規格化を進めています(表1)。RPFのJISや、一般廃棄物由来の燃料であるRDF(Refuse Derived Fuel)を製造・利用してきた経験などをSRFの国際規格に反映させるとともに、アジア地域における健全なSRFの製造・流通・利用に資する仕組みづくりを目指したいと考えています。

表1 ISO/TC 300において設置されているワーキンググループのテーマ
ワーキンググループ(WG) テーマ
WG1 用語と品質保証
WG2 仕様と分類
WG3 サンプリングとサンプル準備
WG4 物理的・機械的試験
WG5 化学的試験とバイオマス含有量の定量化
WG6 SRFの安全性
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