けんきゅうの現場から
2017年6月号

会議のすすめ - インドネシアの「ないない」会議 -

蛯江 美孝

研究を社会と繋げる会議

イラスト研究者は論文を書いて発表することが主なミッションですが、研究成果を社会に繋げるためには、研究成果に基づく新たな仕組みの必要性、有用性、さらにはコスト面について行政や企業などと議論を深め、実現可能な形で行政の政策や企業の商品開発に反映して貰う必要があります。そのためには、関係者が一堂に集まり、会議をひらくことが有効です。これは海外での研究についても同様ですが、社会背景や文化が異なることから、日本での取り組みよりもハードルが上がります。ここでは、筆者らがインドネシアで排水処理技術の性能評価に関する会議(20~40人程度)をひらいた際のお話しをご紹介します。

出席依頼の返事がこない・・・

会議をひらくためには、まず、出席候補者のリストを作成します。行政や企業、大学などからその分野の重要人物をピックアップし、会議の趣旨を説明した上で、出席依頼状を送付します。しかし、それだけでは出欠の返事が貰えないことがほとんどで、追加で、メールや電話、最近ではスマートフォンのメッセージアプリなどでご都合をお伺いし、ようやく出席者リストを作成できます。しばしば、当日まで来てくれるかどうかわからないこともあります。それならば、出席依頼状はいらないのではないか、とも思ってしまいますが、正式に依頼するという行為が重要なようで、これは必須です。

資料が届かない・・・

発表をお願いした方には、事前に資料をメールで頂いて会議で配付したいのですが、〆切を設定しても、必ずしも事前にお送り頂けるとは限りません。催促のご連絡をすると、今日中とか今週中などと言ってくれますが、結局、前日や当日になることも。そのようなときは、出張にモバイルプリンターを持参し、夜な夜な印刷をします。

招待者が来ない・・・

出席の返事を貰えたとしても、会議当日、時間になっても現れないことがままあります。連絡をしてみると、渋滞がひどくて遅れるとか、前の仕事が延びているとか、洪水で行けない、という場合もあります。致し方ないことではありますが、遅れているのが重要な役職の方の場合、会議を始めることができません。会議が始まっていないのにコーヒーブレイクにして会議の開始を遅らせることもありますが、他の参加者たちは慣れているようで、あまり気にしません。インドネシアでは、ラバータイムという言葉があります。恋人たちの時間ではなく、ゴムのように伸び縮みする時間です。伸びる方には良く伸びますが、なかなか縮むことはありません(笑)。

話が終わらない・・・

ようやく会議が始まり、議題に沿って話題提供をお願いすると、持ち時間もラバータイムのようで、とめどなくお話しをされる方もおられます。ただ、これはインドネシアに限った話では無く、日本でも同じかも知れませんね。会議の開始が遅れ、話題提供の時間が延びると、必然的に時間が足りなくなってしまいます。長くお話し頂くことで、幅広い議論ができるのは有難いですが、会議の進行、ひいては、我々の研究活動の進行という意味では、なかなか厳しいものがあります。

意見が出ない・・・

出席者からの意見が欲しいのに、全く手が挙がらないこともあります。にもかかわらず、コーヒーブレイク中に個別にお話しすると、色々な意見が出てきます。インドネシアでは、公の場での面子を非常に大切にされるので、上司の方が一定の方向性を示さない限り、具体的なコメントは期待できません。もし上司の方の情報が正確ではない場合でも、部下の方がその場で訂正することはほとんどありません。従って、重要な会議では、事前に重要な役職の方にしっかりと説明し、相手の意向を理解しておく必要があります。なんだか仕込みのようにも思えますが、このような文化的違いを理解した上で会議を進めることが、海外で会議をスムーズに進めるコツの一つかなと思います。

それでも会議はおすすめ

ここまで、筆者らのインドネシアでの少し苦い会議開催の経験をご紹介しましたが、それでも会議をひらくことはおすすめです。特に、重要な役職の出席者が本気になると、一気に議論が深まって、社会実装に向けてステップを進めることができます。イラスト日本では、担当者が会議に出席し、組織に戻ってから上司に報告することで話を進められますが、インドネシアでは、良くも悪くも、重要な役職の方が実際に話を聞いて納得しないと話が進みません。そもそも、会議に出席して貰えるようになるまでの関係づくりも重要です。普段の研究者としての活動とは少し異なりますが、自分たちの研究の重要性や有用性を理解して貰い、実際に社会の役に立てるように、そしてラバータイムも楽しめるように、今後も努力していきたいと思います。

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