けんきゅうの現場から
2013年3月号

研究費獲得を目指す現場から

滝上 英孝

研究者にとって研究費とは?

私は代表者として数多くの研究費を獲得しているわけではありませんが、つい先日も競争的資金と呼ばれる研究費の獲得を目指してヒアリング(いわゆる面接です)を受けたばかりです。

いわゆる研究費には、まずは研究所の予算に組み込まれていて、研究の必要性を上司に理解していただいた上で5年間の中期計画にしたがって、経常的に配分されるものが挙げられます(国立環境研究所の場合です)。それとは別に単年度から複数年度にわたり研究所や外部の資金ソース(例えば、文部科学省、環境省や民間団体)から、要件に見合ったもの(自分の提案課題と研究費を出す側の提示する条件内容が合うもの)を選んで応募し、採択されれば研究費がもらえる競争的資金というものがあります。競争的資金は、要件の範囲内において研究者の自由な発想でテーマ設定や研究内容を提案できます。研究費ごとにその性格に特徴があり、科学研究費補助金と呼ばれる資金は文部科学省(及びその関連団体)から交付されるもので、学術的に重要な基礎研究に充てられるものです。環境省の環境研究総合推進費は、環境問題を解決に導くための政策への貢献可能性が採択にあたっては重視されます。選考の方法ですが、応募書類を出し、場合によってはヒアリングの場で選考委員の前でプレゼンテーションを行った上で評価を受け、採否を決定するというシステムになっています。研究費の金額や内訳の設定、研究の年限は競争的資金の種類によって違いがあります。また、競争率も様々だと思いますが、年々厳しくなっていることは間違いありません。

大学も研究所もそうですが、研究機関が研究費に応募する理由は当然ながら、研究費をもらって申請した研究を進め、研究活動を維持、発展することにあります。研究費の使い道として、具体的には提案した課題に必要な研究機器や器具、試薬などを購入する、博士研究員(博士を取得した人対象の任期のある研究職、国立環境研究所では「特別研究員」と呼んでいます)やアシスタントスタッフ(事務職、実験職、デスクワーク職などがあります)の雇用に充てる、また、得られた研究成果を発表するための学会参加に使うといったことが挙げられます。私が(私の属する研究グループが)、研究費を申請する理由も上述の通りになります。なかでも、他の大学や研究機関との共同研究を本格的に実施するためには競争的資金を用意する必要がどうしても出てきます。研究をするための資金獲得はお金の話にはなりますが、決して生々しいだけの話ではなく、研究者として活動を続けるために必要不可欠なものであり、いつも頭の片隅には「どういう研究テーマ、構成で研究費を申請しよう?」、「そのためにはどの研究者とチームをつくるのがいいのか?」、「成果がきちんと出るようにするにはどう準備すればいいのか?」などといった思いをもっています。こういったあたりは、研究者もビジネスマンも根幹の部分は同じような気がします。研究室を運営するためには一体、年間幾らお金がかかるのか、論文を一本出すのにどれだけ研究費がかかったのかなどの経済感覚を持っておくことも大切だと思います。

研究費の申請からその遂行まで

先に書いた通り、私も例に漏れず日々(特に申請の時期が近づいてくると)頭をひねっているわけですが、どのような申請内容(申請項目)を書かなければならないのか一例を挙げてみることにします。

  • 研究の背景・目的・概要:この部分で評価者にインパクトを与える必要があります。
  • 研究の達成目標と具体的計画:大きく無理がなく実行可能な計画であること、達成度が検証できることなどが求められます。
  • 学術や社会、行政への貢献:研究費の性格によりますが、アウトプット(研究成果)のみならずアウトリーチ(広義では、「研究成果を国民に説明し、役立てる活動」)も求められます。
  • 研究の独創性:多くの申請者の中から差別化できるかどうかの重要なポイントです。
  • 事前準備状況や関連する学術業績:研究者の実力を客観的に評価する部分であり、日頃の研究活動の状況が表れる項目です。

欧米では研究費の申請書類が報告書並みに100ページを超えるような様式のものがあるそうですが、日本では審査する側も大変なので、申請内容の中で具体的記載は当然必要ですが、全体としては簡潔、明瞭に書いて冗長にならないことが求められると思います。

最後に、研究費が採択されたとしてもその時点がスタートであり、研究期間中や研究期間終了後にもどれだけの質、量の研究成果が形となって得られたのか、成果報告書やヒアリングによって評価される場合があります。お金をもらうということはそれに見合う対価を出すことであると意識して、たゆみなく地道に研究を進めてゆく必要があると思っています。

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