循環型社会・廃棄物研究センター オンラインマガジン『環環kannkann』 - その他
2008年8月11日号

イェール大学産業エコロジーセンター滞在記(5)

橋本征二

 前回ご紹介したように、イェール大学では、2005年に持続可能性オフィスを設置し、持続可能なキャンパスづくりに向かって全学的な取り組みを活発化させています。今回はこのうち、交通に関する取り組みをご紹介したいと思います。

 現在、イェール大学が進めているのは、キャンパスにおける車の一人乗りの削減と公共交通利用の増加、イェール住宅購入者プログラムの利用の増加、大学が所有する車両の燃費改善などの対策です。

Dr.グッチー

 まず、車の一人乗りの削減の背景としては、通勤通学の半分程度が車の一人乗りによるものであるということがあります。大学に支払う駐車料金を減らせる施策を導入していることに加え、昨今のガソリン価格の高騰も後押しして、最近では車の相乗りもしくは公共交通による通勤が増えているようです。また、大学内でのカーシェアリングも進めています。

 非常にアメリカ的だと思うのは、これらがビジネスモデルと結びついていることです。車の相乗りについては、共通の行き先を持つ人をつなぐサイトがあり、これがビジネスになっています(NuRideGoLoco)。大学もこれらのサイトを紹介して車の相乗りを奨励しています。カーシェアリングのシステムを提供しているのは、ZIPCARという会社です。この会社は、大学と連携しながらこのシステムの導入を拡大してきたようです。

 カーシェアリングについては、筆者も会員になり利用してみました。イェール大学では現在600人以上がメンバーで、キャンパスの5カ所に9台の車があります。いずれもハイブリッドや燃費のよい車で、日本車が8台を占めています。

ZIPCARDカード

 利用の仕方は簡単です。会員になるとZIPCARDというカードが送られてきます。カードを利用可能になると、自分が車を使いたい時間をweb上で予約できるようになります。予約は1時間単位ででき、1時間あたり8.5ドル+税金(計1000円程度)、1日あたり65ドル+税金(計8000円程度)です。この費用には、ガソリン代、保険代が含まれています。予約をした時間になったら車のある駐車場に行き、車のフロントガラスからカードをかざすと解錠されます(写真参照)。車のキーは車の中にあり、あとは普通に車の運転です。ガソリン給油用のカードもサンバイザーのところにあり、ほとんどのスタンドで自分で支払いすることなく給油可能です。施錠するときは車のキーは中に残したまま、解錠したときと同じようにカードを使います。

 車社会の米国ですが、特に街中においては、車を持たずに生活するよい手段だと思いました。イェール大学について言えば、スタートしたばかりで車両数が十分にないことから、600人以上が9台の車を共有していることになり、事前に予約しておかないと直前に車を調達するのは難しいという状況ではありますが、車を自分で所有して払う費用に比べると格段の差があるでしょう。また、メンバーになれば、アメリカのその他の都市やトロント(カナダ)、ロンドン(イギリス)などでも車を借りることができます。

 さて、もう一つ面白いのは、イェール住宅購入者プログラムです。これは、大学の近辺に住宅を購入する職員に一定の補助をするというプログラムです。米国では、郊外に大邸宅を持つのが一つのステータスという話も聞きますが、このプログラムのもともとの主旨は、ニューヘイブン市街地の活性化でした。現在では、職住近接が交通需要も減らすことになるという、一石二鳥の対策となっています。

 また、イェール大学では大学周辺を無料バスが行き来していますが、これをエネルギー効率のよいものに置き換えています。私がこちらに来てからしばらくして、バイオディーゼル燃料を使うバスも走るようになりました。

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