![]() 2010年11月22日号
ポリ塩化ナフタレンを含む廃棄物の熱的処理山本貴士
燃焼実験は3回行い、それぞれ@ごみ固形燃料(RDF)(2009年9月28日号「RDFとRPF」参照)のみ、ARDF 1 kgに対してベルト(PCN濃度2800 mg/kg)を5 mg添加したもの、BRDF 1 kgに対してベルトを150 mg添加したものを燃焼しました。これらの添加量は、市中に出回ったベルトが廃棄された場合に想定される濃度(A)、ベルトが集中的に廃棄された最悪のケースとしてAの50倍(B)としました。これを、循環型社会・廃棄物研究センターに設置されている熱処理プラントで燃焼しました。熱処理プラントは産業廃棄物焼却炉として使用されているロータリーキルン型焼却炉を小型にしたもので、また排ガス処理系もダイオキシン類排出源対策のなされた実際の焼却施設と同様の構成となっています。燃焼は約840℃で行い、燃焼中に排ガス、また燃焼終了後にバグフィルターに捕集された飛灰、燃焼残渣を採取し、これらに含まれるPCN、ダイオキシン類、PCBの濃度を測定しました。 その結果、PCNはダイオキシン類同様に廃棄物の燃焼過程で生成すること、その生成量は燃焼物中のベルトの濃度(すなわちPCNの濃度)によらずほぼ一定で、燃焼によって生成するPCNの方が多いこと、PCNは排ガス処理の過程(特に二次燃焼)で分解除去され、最終排ガス中の濃度は通常の都市ごみ焼却施設の濃度と同程度であることが分かりました。また、この燃焼実験での飛灰や燃焼残渣中のPCN濃度を考慮したPCNの実質的な分解率は99.53〜99.96%でした(図2)。また、ダイオキシン類の最終排ガス中の濃度は、日本の焼却炉の排出基準値である0.1 ngTEQ/m3Nを下回りました。この燃焼実験から、PCNを含む廃棄物が家庭ごみなどに混入した場合でも、ダイオキシン類排出源対策のなされたごみ焼却施設で焼却されたならば、適切に処理され、環境に影響を与えないことが明らかとなりました。 これまでの話は、市中に出回ったPCNを含む製品が廃棄物となって、一般の家庭ごみなどと一緒に廃棄された際の話でしたが、これとは別に、回収されたPCNを含む製品や合成ゴム、またPCN原体を人の健康や環境に影響を与えないように適切に処理することが重要な課題となっています。この内、ベルト等のPCNを含む製品の処理に関しては、上記の燃焼実験の結果に基づき、環境省や国立環境研究所の助言の元に2006〜2008年にメーカーにより焼却処理が行われました。焼却処理にあたっては、PCNの目標分解率の設定(全PCNで99.99%以上、PCN原体に含まれる特定の異性体で99.999%以上)、最終排ガス中のダイオキシン類濃度の努力目標値(0.1 ngTEQ/m3N)の設定を行い、排ガスや飛灰等の定期的モニタリングを行ってこの目標を達成できているかを検証しつつ、処理を進めました。また、合成ゴムやエアゾール接着剤もベルト類と同様のスキームで2008年から2009年にかけて処理が行われました。今後、メーカーで保管されている約5トンのPCN原体の処理を進めなくてはなりませんが、焼却処理が可能な濃度に調整するのが難しいこともあり、焼却以外の方法での処理を検討しているところです。 <もっと専門的に知りたい人は> |
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