大きな災害が起こると、それまで使っていた家具や電化製品、また冷蔵庫の中の食品までもが、一瞬でごみに変わってしまいます。被災地から災害廃棄物を無くすことは、復興の第一歩となりますので、できるだけ早く撤去してしまいたいところです。
一方で、ごみの量や種類は、日常よりも圧倒的に多いので、ごみを分別することや外に運び出すことに大きな労力が必要となります。また、水害の場合は、庭や家の中に入り込んだ泥のかき出し作業も多く、床下に泥や水が溜まっている場合には、さらに畳や床をはがして消毒して乾燥させることも必要です。
これらは特に高齢者にとっては大変つらい作業になります。そんな時に頼りになるのが、災害時のボランティアです。
被災者は家財のうち、災害によって使えなくなった物を災害廃棄物として、自治体の指定した分別項目に従って分け、指定された場所まで運搬します。泥のかき出しや、掃除、片付けなど、他にも仕事はたくさんありますが、災害廃棄物の撤去に関わるボランティアにとって大事なことは、それまで被災者が使っていた思い出のある物を、やむを得ず廃棄することになった状況を理解し、その気持ちに寄り添うことです。たとえば、片づけをしている被災者の前で、使えなくなった物を「ごみ」と呼ばない等の配慮も必要です。災害ボランティアにお願いすることで、家の片づけが早く終わることはもちろんですが、ボランティアから元気をもらい住宅の再建に前向きになる等、被災者の気持ちにプラスの変化をもたらすこともあります。
このように、災害廃棄物の撤去作業では、ボランティアに助けてもらう場面は多くありますが、分別の周知が適切に行えないといった課題も残されています。たとえば、ごみの分別は自治体によって異なるものがありますので、特に被災地域外からのボランティアへの案内が必要となります(くわしくは「震災廃棄物等の回収作業とボランティアとの関わり」をご覧ください)。平成31年4月には、「災害廃棄物の撤去等に係るボランティアとのより効果的な連携について」という事務連絡(行政の伝達文書)が出されています。この中では、平常時から自治体や社会福祉協議会、NPO・ボランティア団体が情報を共有し、災害直後に災害廃棄物の出し方や分け方についてボランティアに周知できるように協力することが求められています。
災害時でもごみは分けることが大事という意識を、特に災害廃棄物の撤去において大きな力となるボランティアに浸透するように、今後は行政とボランティア団体とが平常時から啓発活動等で連携できるような取組を進めていければよいと考えています。