私たちの家庭から出るごみを中心とする一般廃棄物は、重量と体積を減らすため主に焼却処理によって処分されています。廃棄物を焼却すると、焼却炉の底から排出される燃えがら(焼却主灰)と、排ガス処理設備によって回収されるばいじん(焼却飛灰)が焼却残さとして発生します。これらの焼却残さには、廃棄物が焼却される過程で様々な金属が濃縮されます。そのため、焼却残さに含まれている有害金属の環境中への溶出を防ぐため、薬剤やセメントを用いて化学的あるいは物理的に処理した後、埋立地へ処分しています。しかし、薬剤やセメントの劣化、埋立地内部の雰囲気などにより有害金属が再び溶出してしまう可能性があるため、埋立地が安全な状態となるまで適切に管理する必要があります。
焼却残さは、結晶質である鉱物と非晶質の成分から作られています。最終処分場では、埋立処分された焼却残さが風雨や日光にさらされることで、長い年月をかけて安定な鉱物へと変化していきます。これを風化作用といいます。例えば、飛灰を水で湿らせて乾燥させることで、雨が降ったのちに日光にさらされる風化を再現するだけでも、その性状が大きく変化します。図1は飛灰を湿らせる前後の電子顕微鏡画像です。飛灰には様々な形の粒子がありますが(図1 左)、湿らせて乾燥することで立方状や針状の結晶が生成します(図1 中央、右)。焼却残さが何らかの反応によって変化し、新たに生成された鉱物は二次鉱物と呼ばれます。焼却残さの風化過程における初めの段階では、二次鉱物である炭酸カルシウム(CaCO3)が生成します。有害金属は炭酸カルシウムの内部へ取り込まれたり、表面へ吸着されたりすることで不溶化されます。
埋立地では風化作用以外によっても鉱物が生成する場合があります。埋立地には様々な微生物が生息していますが、それらの中には生体活動によって鉱物を作り出すものもあります。例えば、尿素加水分解細菌は、尿素を加水分解する過程で環境中に利用可能なカルシウムイオン(Ca2+)が存在した場合に炭酸カルシウムを作り出します(下式)[1]。細菌によって炭酸カルシウムが形成される場合でも、風化作用と同じように有害金属の不溶化が期待されます。
このように、風化作用や生物活動による鉱物化反応によって、結果的に埋立地から有害金属が環境中へ出て行きにくくなり、埋立地も早く安全な状態になります。