災害廃棄物処理には多額の費用がかかります。その中身は、災害廃棄物の運搬・処理・処分、仮置場の管理、環境モニタリング等を廃棄物事業者等に委託する費用、車両や機械の借料、労務費(現場での作業等に係る人工代)などです。近年の例でいうと、例えば34万tの災害廃棄物を処理した熊本地震の益城町では196億円、津波堆積物と合わせて272万トンを処理した東日本大震災の仙台市では799億円かかっています。このように、大規模な災害では数百億円規模の一大事業となっています。自治体によっては、普段であれば1年の一般会計歳出(廃棄物処理だけではなく、社会福祉、農林水産、教育などで広く住民に向けて行う事業にかかったお金)の総額を上回る金額です。
これだけの事業費を被災自治体が一般財源で全てまかなうことはできません。それでは、誰が負担しているのでしょう。
自治体だけでは災害廃棄物処理事業費を負担しきれないため、国が財政支援を行う仕組みがあります。その中心となるのが、環境省の「災害廃棄物処理事業費補助金」です。災害廃棄物処理事業費補助金は、市町村が災害やその他の出来事によって生活環境を守るために特に必要となった廃棄物の収集、運搬及び処分にかかる事業を主な補助の対象にしています。通常規模の災害であれば、総事業費の50%まで補助し、残りの分についても特別交付税が措置されること等により、自治体の負担は結果的に10%になります。激甚災害指定を受けるなど、特に規模の大きい災害では、さらに充実した財政支援が行われ、自治体の負担は総事業費の数パーセントになります。
この補助金を得るには、被災市町村は災害廃棄物処理事業報告書(以下、災害報告書)を作成・提出し、その中で事業費の内訳の根拠・妥当性を示さなければなりません。例えば、事業費を積算するときに使用した単価(例えば、収集運搬であれば1kmの運搬あたり○○円)の根拠、労務費の根拠となる作業日報、委託契約書等の「証拠書類」をまとめていく必要があります。妥当性が説明できない支出や、本来は補助対象ではない事業費については、財務省財務局の立会官(りっかいかん、と読みます)が実地査定で厳しくチェックし、場合によっては補助対象から外されます。外された事業費については、被災自治体が財源を別途確保して支出します。このように、被災市町村が確実に災害廃棄物の処理が実施できるよう財政支援を行いながらも、無駄な支出がなされないよう、補助金の適正な運用についてチェックされているのです。
なお、国の財布を使うのか、自治体の財布を使うのかの違いはありますが、突き詰めれば処理事業費の原資は我々が支払った税金です。本来は災害廃棄物ではないもの(例えば、災害によって壊れたわけではないブラウン管テレビなど)を仮置場に持ち込むなどして、私たち一人一人が適正な処理に協力しない場合、必要以上に国や自治体の財政状況を悪化させ、私たち自身にツケが回ってくるのです。