拡大生産者責任(EPR)の考え方は、欧米や日本をはじめとする先進国で、廃棄物にかかる自治体や納税者の負担軽減、最終処分量の削減、リサイクル率の向上などへの貢献が期待されてきました。廃棄物問題において費用の支払いを含む一定の責任を生産者に果たしてもらうことで、EPRの効果が発揮されてきたといえます。
一方で、2016年にアップデートされたOECDのガイダンスでも、ただ乗り(英語ではフリーライダーとも言い、多くの生産者が責任を果たすにもかかわらず、一部の生産者が果たさずに得をしようとしている状態)や生産者不在製品(生産者が倒産などでいなくなってしまったり、個人が組み立てたパソコンのように生産者が特定しにくくなったりしている製品)の存在などは大きな課題として指摘されてきました。ただ乗りに対しては厳格な罰則、生産者不在製品に対しては負担方法の見直しなどの対策が推奨されていますが、これらの課題の克服は先進国においてさえ必ずしも容易なことではありません。
中国やタイでの家電リサイクル制度を含めて、新興国・途上国においてもEPR制度は創設または検討されてきました。しかし、生産者に負担増加を求めるのは容易なことではない上に、新興国・途上国では生産者が存在しない場合も多く、ただ乗りや生産者不在製品はより一層大きな課題と思われます。
また、2016年のガイダンスでは、インフォーマルワーカーの統合が新興国・途上国での課題と指摘されています。厳しく不安定な労働環境で有価物の回収やリサイクルによって収入を得ているインフォーマルワーカーは、生産者による回収・リサイクルが進めば仕事を失う恐れがありますが、新興国・途上国ではその多さや社会的な役割を考えても無視することはできません。彼らの経験と専門性を活かしながら、衛生的で効率の良い回収・リサイクルシステムを作る必要があります。
さらに、新興国・途上国ではリファービッシュやリマニュファクチャリングのように、先進国ではあまり多く見られない形態の資源再利用があります。これらの統一された定義はありませんが、使用済み製品や不良品などから大幅な修理・整備を行って再生品に仕上げたり(リファービッシュ)、部品レベルで同様に整備して製品に組み込んだり(リマニュファクチャリング)するもので、リユースとリサイクルの中間ということができます。これらによって使用済み製品や資源の有効利用が図れるともいえますが、誰を生産者と考えるか、責任の所在がわかりにくい問題もあります。
OECDのガイダンスでもEPRの方法は多様とされてきました。インフォーマルワーカーの統合やリファービッシュの責任分担のありかたを議論するなど、新興国・途上国での状況に適応するような、EPRの在り方を探る必要があると思われます。
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