ごみを焼却炉で燃やすと、燃えがら(焼却主灰)とばいじん(焼却飛灰)が生じます。循環・廃棄物の豆知識「ごみの元素組成」(2014年5月号)に書かれている通り、燃やすものの種類によって、構成元素の割合に多少の違いがありますが、存在する元素の種類は大体同じです。では、これらの灰の中の元素は、どのような形(化合物)で存在するのでしょうか。顕微鏡やX線を使って観察すると、様々なことがわかります。今回は、燃えがらの様子を紹介しましょう。
燃えがらは、焼却炉から排出されると水槽で急冷されますが、写真(1)は、空冷した燃えがらの顕微鏡写真です。偏光顕微鏡像(写真1左)では燃えがらの内部に細かい結晶が形成されていることがわかります。また、電子顕微鏡像(右)からは、燃えがらの表面が発泡の形状になることがわかります。これらの様子は、燃えがらの温度がおよそ800℃から200℃付近まで下がる過程を示していると考えられます。その過程の中で、一般的に、シリコン、アルミニウム、カルシウムおよび酸素を含むガラス物質、カルシウム鉱物(生石灰、無水石膏)、塩化物(岩塩、カリ岩塩など)が主に形成されます。さらに、電子顕微鏡観察(写真1右、写真2(a))とX線分析(写真2(b), (c))を同時に行うと、ガラス物質の内部にアルミニウム、鉄、鉛、亜鉛などの金属あるいはそれらの合金の細かい粒子を確認することもできます。写真2では、アルミニウムおよび鉄の濃集・局在化が見られます。
その後、燃えがらは水で急冷されると、水に溶けやすい岩塩、カリ岩塩は溶解しますが、難溶性塩化物の中の塩素は溶出せずにとどまります。また、燃えがらから溶出したカルシウムイオンが空気中の二酸化炭素と反応して、方解石(炭酸カルシウム鉱物、写真(3))のような二次鉱物も形成されます。このように、顕微鏡観察を行うことにより、様々なプロセスを経て燃えがらを構成する化合物は変化していることがわかります。