インドネシアで近年広まっている取り組みに「ごみ銀行」というものがあります。ごみ銀行では家庭から資源ごみ(PETボトル、空き缶、古紙など)を買い取り、リサイクル業者に引き渡します。これだけ聞くとどこにでもありそうな廃品回収業者ですが、資源ごみを引き取る際にその場で換金するのではなく、預金通帳ならぬ「預ごみ通帳」に資源ごみの時価相当額を記録していくのが特徴です。顧客はごみ銀行に資源ごみを引き渡し、自分の口座に貯金をしていきます。そして、一定期間以上経つと現金を引き出すことができるようになります。
政府によると、現在、インドネシア全国で4,280行ものごみ銀行があるとのことです。一口に銀行と言っても、地域住民による廃品回収サークルといった小規模のものが多いようです。一方、営利目的の大規模なものもあり、多種多様な形態が見られるのも特徴的です。また、インドネシア環境林業省が省令を施行し、関連法の整備を進めるなど、普及を後押ししています。
私は2016年5月にマラン市にあるマランごみ銀行を訪れました(写真1)。この銀行は市内に多くの支店を持ち、全国有数の規模を誇っています。頭取に話を伺ったところ、当時の顧客は2万4千人でした。顧客から引き取った資源ごみを売ることによる一か月あたりの売り上げは、日本円にして250万円から500万円程度の間で変動するとのことです。資源ごみを72種類に分けて、種類ごとに異なる換金単価を設定しているといった工夫についても教えてくれました(写真2)。本店には立派な引き出しカウンターがあり(写真3)、コンピュータ・システムを使って預ごみデータの管理を行うなど、さながら本当の銀行のようでした。
このごみ銀行の主な顧客は主婦層のようです。廃棄物問題を意識して口座を開設する人もいるようですが、ごみで貯金して、それを資金に聖地メッカへの巡礼を目標とする人もいるようです。
次に、パレンバン市にあるサクラごみ銀行を紹介します(写真4)。ここが私のメインバンクです。サクラごみ銀行は地域住民のボランティアによって運営されています。パレンバン市や日本の国際協力機構(JICA)の支援を受けながら、住民みずからの手で資源ごみの収集・選別・引き渡しを行い、顧客管理などを行っています(写真5)。
恥ずかしながら、私の預ごみ通帳を公開します(写真6)。2016年5月から3回に渡って使用済みPETボトル105グラム分を預け入れた結果、預金総額は390ルピーになっています。これは日本円にして約3円なので、メッカはおろか、まだまだ成田にも行けませんね。なお、サクラごみ銀行ではSNSのインスタグラムをやっています(@banksampah_sakura_tk)。関心のある方はぜひ写真を見てみてください。