循環・廃棄物のけんきゅう
2018年6月号

除染廃棄物の溶融処理による減容化への取り組みについて

野田 康一

はじめに

福島第一原発の事故によって大気中に放出された放射性物質が、東日本の広い範囲に拡散し、森林、農地、市街地などを汚染しました。人の健康や生態系へ及ぼす影響を低減するために除染が行われていますが、それに伴って放射性物質に汚染された除去土壌や除染廃棄物が大量に発生しています。これらは今後、適切に管理しながら長期間保管する予定になっていますが、総量は2000万m3にもなると試算されており、保管するための用地は限られているため、容積を減らす減容化を行わないといけません。国はこれらの除去土壌や除染廃棄物を減容化や再生利用を行い、最終的な保管量をに4万m3にまで削減するように進めています[1]

この中で私の所属する研究チームでは、焼却や溶融により除染廃棄物の可燃物を燃やして減容化を行い、さらに残った残さを放射性セシウムの濃度が高濃度のものと低濃度のものに分離する研究を行っています。低濃度の残さの放射性セシウム濃度を再生利用できる濃度にまで低減することができれば、保管するのは高濃度の残さのみとなり、大きな減容化の効果が期待できます。この記事では国立環境研究所で行っている、除染廃棄物の溶融処理による減容化への取り組みについて紹介したいと思います。

熱処理による減容化の方法について

廃棄物の熱処理には焼却や溶融など様々な方式があります[2]。この中で焼却に関しては除染廃棄物の仮説減容化施設を対象に、現地調査[3]と熱力学的な解析[4]が行われ、焼却における減容化の効果や、熱処理の過程における放射性セシウムの挙動について理論と実態の両面から検証が行われてきました。焼却処理では飛灰と主灰が残さとして発生しますが、これまで進めてきた現地調査や熱力学的な解析によって、高温で焼却するほど、また、酸素の少ない還元雰囲気で焼却するほど、放射性セシウムは揮発して飛灰へ濃縮するため、飛灰の放射性セシウム濃度は高く、主灰の放射性セシウム濃度は低くなります。さらに塩素が存在すると放射性セシウムの揮発がより促進され、飛灰へとより濃縮されることが分かってきました。

そこで焼却よりも処理温度が高く、さらに還元雰囲気で処理をするシャフト式ガス化溶融炉は放射性セシウムの分離能が高いのではないかということが推測され、シャフト式ガス化溶融炉の仮設減容化施設での調査を実施しました。

溶融処理時の放射性セシウムの分離能の調査

シャフト式ガス化溶融炉では通常の除染廃棄物処理時の放射性セシウムの分離能の調査と、塩素源として塩化カルシウムを添加した場合の調査を行いました。除染廃棄物を処理するシャフト式ガス化溶融炉の一般的なフローを図1に示します。

図1 シャフト式ガス化溶融炉の処理フロー 図1 シャフト式ガス化溶融炉の処理フロー

投入された除染廃棄物のうち、不燃物は炉内を降下していき溶融された後、水冷されてスラグ(図2)となります。未燃ガスとダストは炉上部から燃焼室へ流れ完全燃焼された後、冷却されて集じん装置で捕集されて飛灰となります。ガス中の放射性セシウムは冷却される過程で固体として飛灰に含まれるようになるため、集じん装置で飛灰と一緒に放射性セシウムも除去され、排ガス中の放射性セシウムは検出できないレベルにまで除去されます。放射性セシウムはスラグと飛灰に含まれる形となって排出されるため、スラグと飛灰の発生量と放射性セシウム濃度を調査することでスラグ及び飛灰への分配率を求めて分離能を評価することができます。スラグ及び飛灰への分配率とは、処理した除染廃棄物中の放射性セシウムの内、何%がスラグとして、何%が飛灰として排出されるかという割合になります。

図2 溶融スラグ 図2 溶融スラグ

スラグの放射性セシウム分配率と濃度の調査の結果を図3に示します。スラグの再生利用の基準値は100Bq/kg以下となっており、この濃度以下のスラグは再生利用ができることになっています。塩化カルシウムの添加しない条件でもスラグへの放射性セシウムの分配率は1.6%と低く、塩化カルシウムを添加するとスラグへの分配率はさらに低下し最小で0.2%、濃度にすると24Bq/kgとなりました。これは飛灰では逆に分配率と濃度が上昇していることを意味し、非常に効率よく放射性セシウムを分離できていると言えます。スラグ中の放射性セシウム濃度はセシウムの分配率によって決まるため、処理する除染廃棄物の放射性セシウム濃度が高くなると、スラグの濃度も高くなります。今回の結果から、20,000Bq/kg程度までの濃度の除染廃棄物なら処理後に発生するスラグ中の放射性セシウム濃度を、再生利用の基準値である100Bq/kg以下に抑え、スラグを再生利用できる可能性があることが分かりました。

図3 塩化カルシウム添加によるスラグへの分配率と濃度の低下 図3 塩化カルシウム添加によるスラグへの分配率と濃度の低下

この調査によって、シャフト式ガス化溶融炉では放射性セシウムの分離能が高く、塩素源として塩化カルシウムを添加するとさらに分離能が向上し、処理する除染廃棄物の濃度によっては再生利用できる可能性もある非常に放射性セシウム濃度の低いスラグを生成でき、長期保管しなければいけない量を1/10程度に減容化できることが分かりました。

シャフト式ガス化溶融炉は中間貯蔵施設での減容化施設においても採用されおり、今後、中間貯蔵施設においても減容化を行っていく計画になっています。今後はこれまでの仮設炉での知見や化学平衡計算の結果を活用して、溶融処理後のプロセスとの連携を含めた中間貯蔵施設全体としての減容化の効率化や安全運転を支援するように研究を進めていきたいと思っています。

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