資源循環領域では、2020年度まで、世界中の研究者と協力して廃棄物や資源の管理に関する研究を行い、たくさんの成果を世界に発信してきました。とりわけアジアの国々の廃棄物管理について力を入れており、現地の研究者と協力してバンコク・ジャカルタ・ハノイなどといった都市における廃棄物・資源の管理に関する研究を実施してきました。また、多くの研究成果を政府関係者へ提供することにより、それらの都市の政策立案に貢献してきました。
さらに、これらの研究活動を通して得た知見を国際機関(IPCC、UNEPなど)にも提供し、政策提言やガイドラインの発行に携われたことは、世界の廃棄物管理・資源循環分野における大きな貢献でした(2)。
2021年4月からは、新しく設置された資源循環・廃棄物研究国際支援オフィス(以下国際支援オフィス)で、これまで行ってきた活動を継続し拡大していきます。国内外のさまざまな機関との関係をさらに強化し、研究成果を発展途上国地域で社会的に実施・普及させることにも尽力していきます。また、新たな取り組みとして、外国人研究者の研究支援、国際的なイベント運営、および研究成果の積極的な海外発信にも力を入れていきます(3)。
2021年11月に災害環境マネジメント戦略推進オフィスに2週間の間、東ティモール共和国出身で名古屋大学に留学中のルイさんがインターンシップ生としていらっしゃいました。コロナ禍では国際的な人の往来が制限されてしまったので、当領域に海外からの研究者がいらっしゃるのは実に約二年ぶりのことでした。国際支援オフィスでは、同領域内から5名の研究者に英語の講義を依頼し、日本の廃棄物管理について多くの情報を共有いただきました。講義には、ルイさんだけでなく、資源循環領域に所属している外国人研究者も多く参加しました。
講義のほかにも、つくば市のクリーンセンター/リサイクルセンターや、国立環境研究所の所外実験施設であるバイオ・エコエンジニアリング研究施設への見学も行いました。施設見学では同時通訳を行うことで、日本の自治体における廃棄物管理の現状についての廃棄物管理について詳しく知ってもらうことができたため、終始質問が飛び交い活発な議論が行われました。昨今、オンラインでの会議や情報共有が増える中、実際の施設や実験機器、実証フィールドを間近で見ることができ、充実した見学会とすることができました。
2021年12月上旬、国際支援オフィスは資源循環領域で実施された研究成果に基づく国際セミナーの事務運営を担い、研究成果の国際発信に貢献しました。
このセミナーは環境研究総合推進費の成果発信と情報共有を目的としてオンラインで開催され、アジアをはじめヨーロッパや南米から計15か国、40人以上の研究者や行政関係者が出席しました。各国からの最新研究の発表や、今後の課題や取り組むべき研究内容について、さかんに意見交換が行われました。
コロナ禍により対面での議論ができないことが増えましたが、移動がないという利点から参加者が増え、世界中の研究者や政府関係者との情報共有が以前よりも容易になりました。運営側としては、時差や接続不良、オンライン機材トラブルなどの懸念点を上手く調整し、今回のセミナーも有益な情報共有の場とすることができました。
国際支援オフィスは、今後も、学術論文や研究報告書に加え、イベント活動も意義深い実績として、日本のみならず世界にも発信していきます。その際、企画支援部門の広報室と連携して公式の報道発表を行ったり、ソーシャルメディアを積極的に活用していく予定です。
<参考>
- Podiwmプロジェクトについて
https://www.nies.go.jp/whatsnew/20180806/20180806.html- 途上国におけるごみ処理の改善に向けた「堆肥化ガイドライン」
https://www.nies.go.jp/whatsnew/20200831/20200831.html- 資源循環・廃棄物研究国際支援オフィスについて
https://www.nies.go.jp/subjects/2021/25873_fy2021.html