この間、私はタイ(正式には、タイ王国)に行ってきました。残念ながら、私が訪れたのは、有名なパタヤやプーケットなどのリゾート地ではなく、首都バンコクから車で、高速道路を南東の方へ2時間ほど走ると現われる、ラムチャバンという小さな都市です。タイトルでお分かりだと思いますが、今回の渡航の目的は、ラムチャバンの埋立地に建設した準好気性埋立実験区画(テストセル)からの、埋立地ガス(温室ガス)放出量をモニタリングするためです。今回の活動レポートには、このモニタリングの方法を簡単にご紹介したいと思います。
私が所属する資源循環・廃棄物研究センター(循環センター)は、日本の技術である準好気性埋立技術の熱帯地域での効果を実証するため、2009年末にタイ・ラムチャバン市とカセサート大学と共同で、同市の都市ごみ埋立地に2基のテストセルを設置しました。1基は準好気性の構造、もう1基はタイでの標準的な嫌気性の構造に設定して、両者の浸出水の質やガスの発生量等を比較しています(写真1)。
モニタリングでは、主に埋立地の地表面から発生する温室効果ガス(メタンと二酸化炭素)の放出量を「静置(閉鎖)式チャンバー法」を用いて測定します。写真2のように底の抜けた容器(チャンバーと呼びます。)を埋立地の表面に置いて、周りからの空気が入らないように密閉します。その後、一定時間ごとにチャンバー内のガスをサンプリングし、実験室まで運んでガス分析を行い、経過時間とともに上昇していくガス濃度から、ガス放出速度を算出します。日本の埋立地では、焼却灰が埋め立てられていることがほとんどで、埋立地ガスの放出量は小さく、のんびりとガスをサンプリングすればよいのですが、タイでは生ごみを焼却せずに埋めるため、埋立地から発生するメタンガスの量が非常に多いので、急いでサンプリングしないとチャンバーの中にすぐにガスが充満してしまいます。そこで、現場でメタンガス濃度を測定できるレーザーメタン計と専用のチャンバー(高さ1m、直径20cm)を用いて、チャンバーの中のガス濃度を数秒ごとに直接計測します(写真3(左))。この方式は、循環センターが新しく開発したもので、埋立地ガス放出量が大きい場合に分析に要する時間やコストを削減できる実用的な方法です。また、準好気性埋立テストセルには、2本のガス抜き管が設置されていますが、穴がたくさん開いているガス抜き管自体を密閉するのが難しいため、写真3(右)のように、自作の巨大な固定式チャンバーをガス抜き管に被せて放出量を測定しています。この方法もこのテストセルで初めて試みた方法です。
平均30℃を上回る暑い環境で日陰もない砂漠のような埋立地での作業は大変な重労働です。でも、いつか日本の準好気性埋立技術が世界に多く使われる日を夢見ながら、頑張っています。