自治体の不燃系廃棄物処理施設および小型家電リサイクル施設におけるリチウムイオン電池に起因した発火・火災対策に関する技術資料
―リチウムイオン電池起因の発火・火災対策ガイドライン―
概要
近年、家庭や事業所から不燃系廃棄物などに混入して排出されるリチウムイオン電池に起因する発火・火災(等)事故が頻発・増加しています。廃棄物処理における発火・火災事故の実態把握は容易ではありませんが、自治体の廃棄物処理施設におけるリチウムイオン電池起因の火災事故の被害額は年間100億円程度と推計しております。一度火災が発生すると施設の被害金額だけでなく、復旧までに数カ月以上の時間を要する場合があるなど、安全・安心な循環型社会づくりに対する信頼性を毀損するような甚大な社会的な影響や、人命にかかる影響も懸念されます。
市町村でのリチウムイオン電池に関連する発火・火災事故について、疑いを含めると3割以上の市町村が発生の経験があると考えられます。年間1万件程度以上の発火・火災等事故が報告されていますが、全体の中で規模の大きめの火災の割合はごく一部であるとともに、市町村によるバラつきが極めて大きいことがわかっています。市町村において火災等が発生している収集区分は「不燃ごみ」が67.1%と他の収集区分より突出して多いことと、処理施設での発生場所は搬送段階が最も多く、破砕段階を含めるとほぼ9割以上であることが考えられます。リチウムイオン電池使用製品(小型家電)の重量は不燃ごみ全体の0.3%程度と小さいにもかかわらず、発火等発生事故の80~90%程度の原因となっています。一方、リチウムイオン電池の破砕による発火には直後発火と遅延発火があり、頻度が高いのは前者ですが、頻度が低い後者でも可燃ごみピットでの火災は大事故につながることから非常に注意を要する現象といえます。リチウムイオン電池使用製品と発火・火災事故との関係について、データの制約はありますが、破砕処理されるリチウムイオン電池使用製品の量を減らすことは発火等発生件数を減らす効果があると考えられます。
発火・火災対策としては、充電状態(SOC)が低いほど発火リスクが小さいことや非純正電池の使用を控えるなどの周知啓発、市町村による「リチウムイオン電池」や「リチウムイオン電池を取り外せない小型家電(いわゆる一体型製品)」の分別収集、処理施設での破砕処理前の選別、火炎や熱・温度などの検知によるモニタリングと消火、遅延発火の抑制、選別除去したリチウムイオン電池の取扱いなども紹介しています。
本技術資料(ガイドライン)は環境省・(独)環境再生保全機構の環境研究総合推進費「リチウムイオン電池等の循環・廃棄過程における火災事故実態の解明と適正管理対策提案」(3-2101、 JPMEERF20213001;2021~2023年度)でとりまとめました。本技術資料が廃棄物処理施設および小型家電リサイクル施設におけるリチウムイオン電池に起因する発火・火災対策の一助となれば幸いです。
- (公開日 令和6年10月)