循環・廃棄物の基礎講座
2017年11月号

1人1日当たりのごみ排出量

河井 紘輔

1人1日当たりのごみ排出量とは

廃棄物処理法によると、産業廃棄物以外の廃棄物を一般廃棄物と言います。くみ取りし尿や浄化槽汚泥といったものも一般廃棄物に含まれるのですが、そのような液状のものを除いた一般廃棄物、つまり固形状の一般廃棄物のことを行政用語で「ごみ」と呼ぶのが通例です(以下、固形状の一般廃棄物を「ごみ」と言います)。ごみは、私たちの日々の生活に伴って生じる家庭系ごみと、飲食店や事務所などでの事業活動に伴って生じる事業系ごみとに分けられます。環境省の定義によると、ごみ総排出量とは適正処理及び資源化のために自治体が収集するごみの量(計画収集量)、自治体の処理施設にごみ排出者が直接搬入するごみの量(直接搬入量)、地域のコミュニティが資源化目的で回収するごみの量(集団回収量)を合計したものを意味します。

ごみ総排出量は人口と強い正の相関があり、人口が増えたり減ったりすると、ごみ総排出量も増えたり減ったりします。今日、各自治体でごみ減量の取り組みが行われていますが、人口が変化するとごみ減量の取り組み効果が分かりにくくなります。そこで、「1人1日当たりのごみ排出量」という指標を用いれば、過去の値と比較することにより、ごみ減量の取り組み効果が分かるようになります。また、自治体間でごみ排出量を比較しようとしても、人口が違うために比較しにくいのですが、この指標を用いることによって自治体間で比較することも可能となります。環境省が定義する1人1日当たりのごみ排出量は式(1)で計算されます。

式(1)

ただし、maは1人1日当たりのごみ排出量(kg/人/日)、mはごみ総排出量(トン/年)、pは総人口(人)、dは年間日数(日、365あるいは366)を表します。1人1日当たりのごみ排出量を計算する際には分子のごみ総排出量に自家処理量(自治体の収集がなく、自らの家で処理するごみの量)は含みませんが、分母の人口には自家処理人口を含みます。なお、日本での自家処理人口は約15,000人で、全人口の約0.01%です。

平成27年度の日本全体での1人1日当たりのごみ排出量は0.94 kg/人/日でした。日本には1,700以上の自治体が存在しますが、環境省はそのすべての自治体からごみ処理に関するデータを毎年収集して一般廃棄物処理実態調査結果として公開しています。つまり、誰でもすべての自治体のごみ処理に関するデータを確認することが可能なのです。世界中見渡しても日本ほどごみ処理に関する統計を整備している国はないのではないでしょうか。なお、国立環境研究所がweb上で公開している環境GISでは、各自治体における1人1日当たりのごみ排出量を地図上で確認することが可能です。

東京とバンコクとの比較

もとこ日本の自治体におけるごみ総排出量は減少傾向ですが、アジアの主要都市ではごみ総排出量が増加し続けています。タイ国の首都、バンコクは東南アジアでも屈指の発展を遂げている都市です。図1に東京都23区とバンコク都における人口と1人1日当たりのごみ排出量の過去10年間の推移を示します(東京都23区のデータは年度、バンコク都のデータは年)。東京都23区では人口が増加しているにも関わらず、ごみ総排出量は減少しました。その結果、東京都23区における1人1日当たりのごみ排出量は2006年度には1.28 kg/人/日だったのが、2015年度には0.99 kg/人/日に減少しました。一方、バンコク都では人口はほぼ横ばいでしたが、ごみ総排出量は増加しました。その結果、バンコク都における1人1日当たりのごみ排出量は2006年には1.40 kg/人/日だったのが、2015年には1.68 kg/人/日に増加しました。しかし、この値には以下の点で注意する必要があります。

バンコク都に限らず、東南アジアの都市部には職を求めて農村部から多くの移住者が流入しています。農村部からの移住者は都市部に住民票を移さない場合もあり、そのような人々は移住先である都市部の住民台帳に登録されないため、移住先の統計人口に反映されません。発展途上国では自治体によるごみ収集サービスを受けている人口はまだ多くはないのですが、人口が密集する都市部では100%に近づきつつあります。衛生環境を保つため、都市部ではごみ収集は大変重要な公共サービスだからです。

東南アジアを想定して、家庭系ごみの発生・排出フローを図示したものが図2です。都市部では自治体によるごみ収集サービスが充実しているために自家処理量は多くはありません。また、日本とは違って、東南アジアでは自治体によるごみの資源化はほとんど行われていません。その代わりに有価で取り引きされるごみは民間が資源化を行っています。東南アジアを想定した1人1日当たりのごみ排出量の計算方法を式(2)に示します。

式(2)

ただし、mrmは住民台帳に登録されている人々(登録者)から排出された家庭系ごみの総量(トン/年)、mnmは住民台帳に登録されていない人々(未登録者)から排出された家庭系ごみの総量(トン/年)、moは家庭系ごみ以外のごみ総排出量(トン/年)、prは登録者人口、pnは未登録者人口を表します。通常、未登録者人口は正確に把握されていません。また、収集サービス対象地域であれば、未登録者から排出されるごみも自治体は収集することが一般的です。さきほど、バンコク都50区における1人1日当たりのごみ排出量は2015年には1.68 kg/人/日と計算しましたが、これは分子に未登録者から排出された家庭系ごみの総量を含め、分母に未登録者人口を含めずに計算したものです。バンコク都においても未登録者人口は無視できない数に及びます。仮に未登録者人口が登録者人口の5割、つまり実質的な人口は統計人口の1.5倍と想定すると、1人1日当たりのごみ排出量は1.12 kg/人/日となります。

図1 東京とバンコクにおける1人1日当たりのごみ排出量 図1 東京とバンコクにおける1人1日当たりのごみ排出量の推移
図2 東南アジアを想定した家庭ごみの発生・排出フロー 図2 東南アジアを想定した家庭系ごみの発生・排出フロー
注1) 登録者とは住民台帳に登録された人々、未登録者とは住民台帳に登録されていない人々を表します。
注2) pは人口、mはごみ量を表します。

自治体間比較の留意事項

国内外の自治体間で1人1日当たりのごみ排出量を比較する上では、人口の扱いだけでなく、ごみの定義やデータの信頼性に関しても留意する必要があります。ごみの定義は国によって異なります。特に事業活動に伴って生じる廃棄物が一般廃棄物なのか産業廃棄物なのかは国によって様々です。また、ごみに定義されるものでも、ごみ総排出量に反映されないものもあります。日本では、民間業者が独自に回収する古紙、スーパーなどの拠点で回収されるペットボトルや段ボールなど、家電リサイクル法で資源化することが義務付けられている廃家電製品(エアコン、テレビ、冷蔵庫・冷凍庫、洗濯機・衣類乾燥機)は通常、自治体は関与せず、ごみ総排出量には反映されません。発展途上国での民間業者によるごみの資源化量は自治体が把握していないので、ごみ総排出量には反映されないのが一般的です。発展途上国ではごみ総排出量データの信頼性の問題もあります。発展途上国ではごみの量を測る装置(ごみ運搬車両用の重量計)が設置されていない自治体もあります。そのような自治体では、どんな大きさのごみ運搬車両が何台、処理・処分場までごみを運んだかという情報からごみ総排出量を推計していて、必ずしもごみ総排出量データの信頼性は高くはありません。

自治体間で1人1日当たりのごみ排出量を比較する場合、単に多い少ないと結論付けるだけではなく、ごみの定義は同じか、ごみ総排出量に反映されていないごみ量はあるか、ごみ総排出量や人口のデータは信頼できるかなどを確認した上で、なぜ他の自治体と比べて多いのか(あるいは少ないのか)の原因を究明し、今後講じるべき対策を検討することが大切です。

<もっと専門的に知りたい人は>
参考文献
  1. Kawai K., Tasaki T. (2016) Revisiting estimates of municipal solid waste generation per capita and their reliability. Journal of Material Cycles and Waste Management. 18: 1-13
<関連する調査・研究>
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