循環・廃棄物の基礎講座
2013年4月号

"循環資材"が持つべき環境安全品質は?

肴倉 宏史

循環型社会はできあがっている!?

私たちは、建物に暮らし、道路を歩き、金属など様々な素材からなる製品を使い、電気を使い、廃棄物を出します。建物や道路を新しくする際は、廃コンクリートや廃アスファルトコンクリートが発生し、金属を作る際はスラグが発生し、電気を作る際は石炭灰が発生し、私たちが出した廃棄物を燃やしたり熱で溶かすと焼却灰や溶融スラグが発生します。

写真1 循環資材の例(溶融スラグ) 写真1 循環資材の例(溶融スラグ)

これらを"循環資材"として、土・砂・石などの代わりに利用すれば、土取り・石切りのために新たに切り崩す山の量を減らせますし、それによる環境破壊も減らすことができます。また、新たな確保が難しい最終処分場への廃棄物の埋立量も節約できます。

実際、上述の廃コンクリートから焼却灰までの発生量を足し算すると、年間約1億2千万トンにもなります。それに対して、最終処分されている廃棄物の総量(上述したもの以外も含んだ全ての、最終処分される量)は、約2千万トンに過ぎません。つまり、そのほとんどは循環資材として既に私たちの生活の中で利用されているのです。このことから、量的にみれば循環型社会は既に出来上がりつつあると私は捉えています。

循環資材の信頼を確保するために

循環資材を利用し続けて、本当に大丈夫なのでしょうか。廃棄せざるをえないものはもちろん廃棄するべきです。しかし、すべてを廃棄するには、最終処分場は明らかに足りないのです。したがって循環資材が信頼を失えば、その行き場が無くなるという、大変な事態が起こるのではないかと心配しています。そうならないために、「本当に大丈夫なのか」という疑問にしっかりと答え、循環資材を安心して使える仕組みを作らなければならないと考えています。

循環資材を安心して利用しつづけるために必要な項目の一つが、環境安全品質です。このことについて、私はこの環環で既に一度、記事を書きました(2007年4月16日号「ごみの建設材料へのリサイクルと環境安全性」)。今回は、それから6年間の成果をお伝えしたいと思います。

さて、循環資材に対して、どのような環境安全品質を、どのように要求すればよいでしょうか。先述のように、循環資材の種類は様々です。一方、循環資材の使われ方も、土地の造成のための材料やブロックの材料など様々ですが、その使われ方に対する物性や力学特性が合っていれば、様々な循環資材が同じ用途で使われる可能性があります。このことから、環境安全品質は循環資材全体に共通の考え方に基づいておくことがとても重要になるのです。

循環資材に必要な環境安全品質とは

では、満を持して、循環資材に共通の環境安全品質の考え方を紹介します。これは5つの項目からなります。少し長くなりますが、最後にまとめますので、まずは一読してみてください。

仮に、スラグのような循環資材がコンクリートの骨材として使われるとします。そしてこのとき、環境安全品質には合格したとします。でも、コンクリートはいつか壊されて、道路の下に敷く路盤材に使われるかも知れません。このように一つの循環資材の"ライフサイクル"の中でも、幾つかの使われ方が想定される場合があります。そこで、循環資材の環境安全品質の評価は、リサイクルも含めた基本的な使われ方の中で、最も危険そうな環境(「最も配慮すべき曝露環境」と言います)を想定して行えば良いと考えられます。

次に、どのような試験を行うかを考えます。それには、「最も配慮すべき曝露環境」において、循環資材に含まれている有害物質がどのように放出されて、人がどのように摂取する可能性があるかという"放出経路"を検討します。放出経路は、主に、水との接触により溶出し、地下水へ移行し、井戸から飲み水として飲む「溶出経路」と、粒子が飛散したり手に付着したりして口などから直接入る「直接摂取経路」の2つに整理されます。溶出経路はほとんど全ての使われ方で想定されるので、これに対応する「溶出試験」は基本的に実施することになるでしょう。一方、直接摂取経路については、コンクリートなどで固めたり他の材料で完全に覆ったりする使われ方ではあまり考えられないので、その必要に応じて、これに対応する「含有量試験」を実施すれば良いと思われます。

試験の項目が決まったら、具体的な試験の方法を考えます。それには、「最も配慮すべき曝露環境」での使われ方-他の材料と混ぜたり、コンクリートで固めたり、といったことを模擬して試料を調製することで、より合理的な評価が可能になると思われます。

そして、基準値を考えます。それには、とりもなおさず、環境基準などを守らなければならないでしょう。土壌や地下水、河川水、海水には、人の健康を保護し生活環境を保全するため環境基準という目標値が設定されています。また、土壌汚染対策法では汚染された地下水の飲用や、直接摂取のリスクを減らすため、対策基準が設定されています。循環資材は、土地の造成やコンクリートなどの構造物へ利用されるので、その周辺の土壌や地下水などを汚染させて、環境基準等を達成できない状態にしないように基準値を設定する必要があるでしょう。

しかしながら、手間のかかる試料調製を行い、環境基準値などが設定されている有害物質の全項目を毎回測定することは、多大な負担になるかも知れません。そこで、より迅速に合理的に検査が行えるように、上述の検査(これを、「環境安全形式検査」といいます)に合格したものと同じ方法で製造されたものは、もっと簡単で、項目も減らして検査できる仕組みを設ければ良いと思われます。

以上をまとめると、以下の5項目になり、それを流れ図で表すと図-1のようになります。

  • (1) 最も配慮すべき曝露環境に基づく評価
  • (2) 放出経路に対応した試験項目(溶出・含有)
  • (3) 利用形態を模擬した試験方法
  • (4) 環境基準等を遵守できる環境安全品質基準
  • (5) 環境安全品質を保証するための合理的な検査体系
図-1 循環資材に環境安全品質と検査方法を設定するための手順の概要 図-1 循環資材に環境安全品質と検査方法を設定するための手順の概要

上記5項目は資源循環・廃棄物研究センターが中心的に関わった検討会で2年以上の検討を経てとりまとめられ、「循環資材の環境安全品質及び検査方法に関する基本的考え方」として、日本工業標準調査会より2011年7月に公表されました。そして、この基本的考え方に基づき、コンクリートや道路の材料として用いられる鉄鋼スラグや溶融スラグの日本工業規格には、環境安全品質とその検査方法の規定が着実に進められています。また、スラグだけでなく、石炭灰など他の循環資材、さらには、東日本大震災で生じた廃棄物を処理して得られた再生資材の一部も、この考え方に基づいて有効利用を進めようとしています。

仕組みだけでなく不断の努力を

この取組は、循環資材の利用への信頼を得ることを大きな目標として進められています。しかし当然のことながら、有害物質をいくら含んでいても循環利用をすべきだということではありません。有害なものはきちんと排除できる仕組みとすること、そしてこの仕組みに則り、しっかりと品質管理、品質改善のための努力を継続して行っていくことが、循環資材のさらなる信頼確保につながると考えます。

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