循環・廃棄物の基礎講座
2011年11月号

廃棄物系バイオマスのガス化技術に関する研究開発から

川本 克也

基本的な概念

わたしたちの生活から出るごみ、工場などでの生産活動にともなって発生する廃棄物のうちの可燃物は、従来から焼却処理され、近年では発電や熱回収が積極的に行われるようになってきました。今は、さらに各種のガスや液体状の有価物に変える「ガス化」という技術を廃棄物処理に適用することが研究開発の課題になっています。

いままでのところ、日本では生活や産業活動から排出される廃棄物の多くを焼却によって処理しています。中でも、家庭ごみを中心とした一般廃棄物の約8割の量(年間約4,000万トン)は焼却処理されています。この焼却は、完全な酸化をめざす「燃焼」によるごみの安定化と減量が主な目的です。最近では、発電や熱回収が重要視されることから、その効率の高いことが評価されます。

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これに対し、ガス化は、燃焼に必要となる酸素の供給を制限した条件のもとで廃棄物を熱分解して、さまざま形態の固形物をいったん比較的均一なガスにすることにより、化学的エネルギーを保持したまま物質として様々な利用可能性をもつ状態でとどめおく処理技術と言えます。うまく行えば、廃棄物の潜在エネルギーを焼却よりも幅広く利用可能になります。

しかし、ガス化は、ほとんどが二酸化炭素と水蒸気になる燃焼と異なり物質の変化を途中段階に留めるので、実際の設備などに障害を及ぼすタール(有機物の熱分解で生じる黒褐色の油状物で、高温ではガス状だが温度降下で粘りのある凝縮物になりやすい。)と呼ばれる成分なども相当に含まれ、また、還元性の雰囲気であるため硫黄分から生成する硫化水素も含まれます。それらがガスの利用価値を下げてしまうことがしばしばあるので、これを避けるために、ガス化の後とても高い温度域(通常1,200℃以上)を設けてガスを改質する方法や、触媒(特定の化学反応の反応速度を速める物質で、自身は反応の前後で変化しない。)の助けを借りてそれほど高くない温度で改質する方法があります。いずれの方法も、ガスの精製装置を設けることは必要です。私たちは、後者の、触媒の利用による改質を選択しています。それは、低温で運転する方が、廃棄物のもつ潜在エネルギーをより有効に使えることと、前者は現実に廃棄物処理設備となっているものの運転に非常に多くのコストがかかることなどのために、現実的な問題が指摘され、ごく少数の設置にとどまっている状況があるからです。

触媒を用いたガス改質の基礎的実験

図1 触媒(catal.と表記)と多孔質シリカ(silicaと表記[カッコ内は比表面積])の適用によるガス化で得られたガス中の主な多環芳香族成分の除去性能図1 触媒(catal.と表記)と多孔質シリカ(silicaと表記[カッコ内は比表面積])の適用によるガス化で得られたガス中の主な多環芳香族成分の除去性能

触媒とは、反応の速度を大きく向上させる効果のある物質で、ガス化の促進やタールの分解などのために使います。遷移金属元素に性能のよい触媒のあることがわかっていますが、これは高価であることが多いので、研究では、実用性を考えて比較的安価なニッケル(Ni)を主体とした触媒を種々試しました1, 2)。わかったことは、図1は、ガス化反応器と改質反応器を直列に組み合わせた小規模(処理量:0.1 kg/h程度)の実験装置を用いて、触媒と多孔質のシリカを改質反応器に充てんして、木質バイオマスや廃プラスチック類と紙から作られる固形燃料(RPF)をガス化したときに生成したタール成分(ここでは多環芳香族化合物のうちアントラセン、フェナントレン、ピレンの3化合物を例示します)に対する除去効果です。シリカ材料の比表面積が大きいほど除去効果は高くなっています。これは、比表面積が大きいと表面に物質が捕捉されやすくなるため反応がより進み、タール成分が除去されるのではないかと考えられます。

大型設備を用いた実用化実験

基礎的な研究開発の成果を少しでも実用化につなげるには、より大きな実験設備でうまくガス化が進行し、タールが取り除けることを示す必要があります。そこで、基礎実験で用いた装置構成、材料と同一ではありませんが、よく似た設備を使い、ガス化の対象物には基礎実験と同様の木質材料とRPFを用いた実験結果の例を示します。この設備は、ガス化反応器内で砂のような材料が流動してガス化の対象物と接触する方式で、およそ20 kg/hの供給処理能力で設計されています。また、この反応器の後ろに、Niを主成分とする触媒の充てん層が設けられています。図2は、装置の構成と、このタール分解用触媒反応器の前後およびその反応器のさらに後段側のガス洗浄設備出口におけるタールの測定結果の一例です。触媒反応器でのタール除去率は87.4 %となり、ガス洗浄後までで95.2 %となりました。ガス中のタール成分の濃度は0.1g/m3N(0℃、大気圧の条件でのガス体積中濃度)の水準にまで低減されているので、除去効果としては期待が持てる結果です。

図2  大型設備の構成(a)と、タール分解装置の前後および湿式ガス洗浄装置後測定点でのタール濃度と除去率の例(b) 図2 大型設備の構成(a)と、タール分解装置の前後および湿式ガス洗浄装置後測定点でのタール濃度と除去率の例(b)

ここまではタール成分の除去効果に注目してきましたが、私たちが考える改質触媒反応器には、ガスの保有熱量をより高くしたり、後段でのガス利用に適したガス組成(具体的には水素と一酸化炭素の組成比)を得たりといった様々な目的に応じた機能がほしいと考えます。そのためには、さらによりよい触媒の開発が必要と考えており、研究のポイントの一つにしているところです。

いかがでしたか。私たちが、そして社会が毎日出す廃棄物を、生活環境に影響のないように処理することはとても重要です。加えて、基本的な概念で述べたように、新たなエネルギー源などとして再生させる可能性があるならば、すばらしいことだと思いませんか。

<もっと専門的に知りたい人は>
  1. K. Kawamoto, W. Wu, H. Kuramochi : Development of gasification and reforming technology using catalyst at lower temperature for effective energy recovery: Hydrogen recovery using waste wood, Journal of Environment and Engineering, Vol.4, 1-13 (2009)
  2. 川本克也:バイオマスからなる廃棄物のガス化プロセスにおけるガス特性および成分挙動, 日本機械学会第21回環境工学総合シンポジウム2011講演論文集, 112-114 (2011)
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